シンバイオ製薬株式会社(4582 Growth)
BCV: 2025年のグローバルパートナリングに向けて
フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
BCVの適応範囲拡大のための臨床試験が2本スタート
シンバイオは、現在、大きな転換期の最中にある。長年にわたってドル箱に育ててきたトレアキシン®市場が、ジェネリックによる浸食が本格化してきた。一方、シンバイオが今後のグローバル展開の柱と位置づけているブリシンドフォビル(BCV)は、2023年5月、最初の適応症(造血幹細胞移植後の播種性アデノウイルス(AdV)感染症)にて、ヒトPOCが確立され、2023年12月には米国血液学会(ASH)にて、Ph2の有望なデータが公表された。そして現在はPh3のデザインを検討中である。それに続いて、2024年2月に造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染症を対象とした臨床試験(Ph2)も開始され、6月には最初の患者組み入れに至っている。腎移植後のBKウイルス感染症でも、Ph2の再開に向けて検討が重ねられている。このように自社で、造血幹細胞移植(HSCT)後、あるいは臓器移植後の感染症を対象としたBCVの開発が先行していたが、次の段階として、2024年8月、血液腫瘍である悪性リンパ腫(NK/T細胞リンパ腫やPTCLなど)を対象とした臨床開発(Ph1b/2)に着手した。
造血幹細胞移植後・臓器移植後感染症のBCV市場規模は2,520億円
2028年頃に上市が予想される造血幹細胞移植後の播種性アデノウイルス感染症を対象としたBCVの市場は168億円と試算されるが、それに続いて開発が進行している腎移植後のBKウイルス感染症対象の市場は672億円、そして造血幹細胞移植あるいは臓器移植後のCMV感染症のうち抵抗性・難治性CMV感染症を対象としたBCV市場が420億円程度と推定される。また、造血幹細胞移植後のファーストラインCMV感染症の市場1,260億円への浸透も期待できる。合計すると2,520億円の市場が視野に入る。さらに、次のターゲットとしている、ウイルス感染を要因とするがん領域(NK/T細胞リンパ腫や膠芽腫GBM等)やウイルス感染暴露による脳神経変性疾患領域(多発性硬化症やアルツハイマー型認知症)の市場も大きな規模となる可能性が高い。
BCVの早期事業化とグローバルパートナリングに全力投球
2024年中には、BCVと免疫チェックポイント阻害剤の併用の効果の検討結果が浮上してくる予定である。2025年は、アデノウイルス(AdV)、サイトメガロウイルス(CMV)の2つのプログラムが、開発の後期に移行していく予定である。血液腫瘍での臨床開発(P1b)の進捗も期待される。また、2025年には、固形がんの領域での臨床試験(Ph1)が浮上する可能性がある。
現在、シンバイオでは、グローバルパートナリングに関して複数の企業と交渉中であることを明らかにしており、2025年には、その中の1社とパートナリング締結という朗報が浮上することを期待したい
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