オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Growth)
OBP-601 LINE-1阻害薬としてALS治療に新たな希望

2024/07/31

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

臨床効果を示唆
OBP-601は、PSP(進行性核上性麻痺)、C9orf72変異型ALS(筋萎縮性側索硬化症)/FTD(前頭側頭型認知症)及びAGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)といった神経変性疾患を対象に導出先のトランスポゾン社でPh2aが遂行されてきた。既に2024年2月PSPに関する有望な最終結果は公表済であるが、7月25日、ALSの最終結果のサマリーが公表された。高い安全性と忍容性が確認されたうえ、死亡率と相関がある肺活量の低下がプラセボ対比約50%抑制された。競合薬の承認申請に用いられた臨床試験を見ると肺活量の低下は20%程度である。また、ALSの機能評価スケールでのスコアの低下が自然経過の予想値よりも40%程度抑制されていることが観察され、臨床効果が示唆された。

承認とカギとなるバイオマーカーの低下効果も確認
承認申請で一つのカギとなる脳脊髄液(CSF)中のNfL(神経フィラメント軽鎖)の値など、神経変性疾患で用いられる各種バイオマーカーの値の低下効果も確認されている。脳脊髄液(CSF)中のNfL値は、OBP-601投与群では前半24週時点で、プラセボ群と比較して、より低い値であった。さらに試験後半(24~48週)のNfL値においてもPSP試験と同様に期待のできる効果が示唆された。さらに、OBP-601はNfH(神経フィラメント重鎖)、IL-6(炎症性サイトカインの一種)、ネオプテリン、オステオポンチンを含む他の神経変性及び神経炎症バイオマーカーにも効果を示した。今般の結果を踏まえ、トランスポゾン社はPSPに加え、 C9orf72変異型ALSを対象とした開発もPhase3へステップアップさせる予定である。

トランスポゾン社のコーポレートアクションに引き続き注目
加えて、OBP-601はC9-ALS/FTDだけでなく、PSPのデータも加えたメタアナリシスでも、有意なNfL低下効果があることが確認され、LINE-1関連の病理生理がある神経変性疾患に効果があるということが示された。これはアルツハイマー病などへの展開の可能性を示唆している。トランスポゾン社は、現在の資金調達計画などから判断すると、PSPやC9-ALSのPhase3や他の神経変性疾患を対象とした開発をすべて独力で推進する可能性は高くない。大手製薬会社へのサブライセンスあるいは、M&Aの対象となって子会社として開発を推進していく可能性が高いと推察される。実際に、3月のオンコリスバイオファーマの事業説明会では、複数の大手製薬会社によるデューデリジェンスが行われていることが明らかにされた。今般のC9-ALSのPhase2a成功や年内にも期待されるPhase3許可が、 M&A等コーポレートアクションの後押しになることを期待したい。なおディールの規模としては、神経難病領域で、過去にライセンス取引が成立した例を参考にすると、かなり大きな金額が期待できる可能性がある。

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