オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Growth)
ハイブリッド型ビジネスモデルへの飛躍

2024/02/26

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

順調に申請準備が進行中
オンコリスバイオファーマの主力開発品(OBP-301)は、テロメライシンという遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。オンコリスバイオファーマ独力での製品化に向けて、国内においては食道がんに絞って、臨床開発を推進しており、2024年内の承認申請まであと一歩のところまで来ている。国内ピボタル試験のトップラインデータでは、安全性に問題のある事例はなく、テロメライシンと放射線の併用療法の局所完全奏効率41.7%と、ヒストリカルなレジストリーデータを10ポイント以上上回るなど極めて臨床的に意義のある結果を示している。製造面では、工程の検査と改良は完了しており、現在は、各工程に関する文書化が進行中である。2024年半ばから、申請に向けた1回目の製剤の商用製造を行う予定である。また薬事三役の採用と信頼性保証本部の立ち上げは完了するなど、社内体制も着々と準備が進んでいる。流通体制も、国内製造所として三井倉庫、国内販売会社として富士フイルム富山化学との契約を締結済みで、始動を待つだけである。このように、準備は順調に進んでおり、2024年内には先駆け審査制度指定の下での新薬申請に向けて準備が着々と進行している。

メルク及びコーネル大学との共同開発も正式発足
2023年12月、オンコリスバイオファーマは、胃/胃食道接合部がんの二次治療を対象とした免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブ(キイトルーダ)とテロメライシン®(OBP-301)の併用療法の開発について、コーネル大学及びメルク社と新たな医師主導治験 (Phase2)に関する共同開発契約を締結したことを公表した。胃/胃食道接合部がんの約8割が一次治療の効果がなく二次治療の対象となるといわれているが、現在、二次治療の分野で、免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療法は確立されていない。現在ではまだ化学療法による治療が中心だが、免疫チェックポイント阻害剤と腫瘍溶解ウイルスの併用療法が顕著な治療効果改善をもたらすことが期待される。なお、今回の契約では、免疫チェックポイント阻害剤は、メルクからの無償提供で、それ以外の開発費用もオンコリスバイオファーマと折半することとなっている。医師主導治験で良好な結果が確認されれば、その後は企業試験(Phase2)へスイッチされていくと考えられる。

脳神経変性疾患薬OBP-601 アルツハイマー病へ対象拡大
OBP-601は、PSP(進行性核上性麻痺)、ALS(筋委縮性側索硬化症)/FTD(前頭側頭型認知症)及びAGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)といった脳神経変性疾患対象に導出先のトランスポゾン社でPh2aが遂行されている。既にPSPに関する48週の最終解析データとALS/FTDに関する24週中間解析データのサマリーが公表されており、いずれも、脳脊髄液中のNfL(ニューロフィラメント軽鎖)の上昇を抑制することに加え、アルツハイマー病など各種神経変性疾患に関する様々なバイオマーカーの改善を示唆する結果が得られている。また、臨床症状の改善も示唆する結果も確認されている。トランスポゾン社では、これまで得られた結果から、PSP対象の開発をPhase3へステップアップすること、開発の対象をアルツハイマー病へ拡大することを表明している。PSPのみならず、ALS/FTDやAGS、さらには対象がアルツハイマー病へも拡大したことで、トランスポゾン社への注目が高まることは避けられず、CNS領域を物色している大手製薬会社のM&Aの対象となることも考えられる。また、トランスポゾン社がIPOによる資金調達で自社開発の途を探る可能性もある。いずれにせよ、オンコリスバイオファーマへマイルストーン収入が発生する可能性が高い。

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