シンバイオ製薬株式会社(4582 Growth)
BCVのプラットフォーム化が進展
フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
2023年12月米国血液学会(ASH)にて有望な成果公表
シンバイオの次期主力品候補、抗ウイルス剤ブリンシドフォビル(以下BCV)は、さまざまな疾患領域を対象とするプラットフォームとして、現在、開発が進展中である。このうち一番開発が先行しているのは、免疫不全状態のアデノウイルス(AdV)感染症等を適応症とするもので、2023年12月、米国血液学会(ASH)にて、Ph2に関する有望なトップラインデータが公表された。コホート3において、全例、比較的早期に血中ウイルス量が検出限界値以下に減少しており、また、用量依存的に抗ウイルス活性があることが確認された。また、安全性に関して、治療に関連した重篤な有害事象の発生例は無く、治療に関連した有害事象は全27例中7例あったがいずれも、一過性で、投与終了後は軽快している。現在、投与回数を半減させたコホート4の治験が進行中であるが、これまでの結果で、推奨用量もコホート3の用量で確定されたと考えられる。実際、2024年1月、コホート3までのデータを基に、日本でAdV感染症を対象としたBCV注射剤の用途特許(2043年8月まで有効)が迅速承認された。今後、欧米等でも同一内容の特許を出願していく予定である。
BCVのプラットフォーム化が進展中
BCVが対象とする疾患領域は、免疫不全状態のAdV感染症に限定されるものではない。次に有望視されるのは、免疫不全状態のサイトメガロウイルス(CMV)感染症である。現在、既にこの分野ではマリバビルが承認されているが、耐性の出現が報告されており、耐性出現の可能性が低いBCVの開発が急務である。2024年には、造血幹細胞移植後の感染症等を対象とした次の治験申請へ進むと見込まれる。また、EBウイルス陽性を含むリンパ腫を対象としたBCVの有効性の解明も進展してきており、ここでは免疫チェックポイント阻害剤との併用が検討されている。加えて EBウイルスが原因の一つと考えられる多発性硬化症を対象とした開発も2024年初頭には動物実験段階に入る予定である。このほか、CMVとの関連が考えられる脳腫瘍でも動物モデルの種類を増やして非臨床試験を継続する予定であり、BCVはさまざまな疾患を対象としたプラットフォームとして注目を集めていく可能性が高い。
海外大手製薬会社とのパートナリングの可能性も
トレアキシンの売上げがジェネリック浸透によって浸食されているシンバイオにとって、BCVの開発をすべて独力で行うことは至難である。腎移植後のBKウイルス感染症の開発(Ph2)は症例集積の遅延から一旦プロトコルの見直しになっているが、臓器移植の件数が多い欧米では注目されている分野であり、シンバイオでは2024年中にプロトコルを修正の予定で、欧米の製薬会社と共同開発として開発を再スタートさせる可能性を模索している。また、 BCVはがん微小環境に作用し免疫環境を変える可能性があるため免疫チェックポイント阻害剤との併用が有効であると想定されるなか、免疫チェックポイント阻害剤を有する大手製薬会社とのパートナリングの交渉が浮上する可能性も考えられる。多くの免疫チェックポイント阻害剤の特許切れが2027~2028年に迫るなか、免疫チェックポイント阻害剤を有すると大手製薬会社でも新しい用途を模索し、パートナリングには積極的になってきていると考えられる。
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