株式会社メドレックス(4586 Growth)
ようやく長いトンネルを抜けつつある
ベーシック ・ レポート 改訂版
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
ニッチな市場で独自の技術
メドレックス社は、既存の経口薬・注射薬の有効成分を経皮吸収型製剤として開発し、製薬会社へ導出(ライセンス供与)、マイルストーン収入や上市後のロイヤリティ収入等を獲得するビジネスモデルの会社である。
通常の新薬創薬ビジネスと比較して、既存の薬剤の有効成分をベースにしているため成功確率は高く、ニッチな分野であるため競合も限定され、しかも独自のILTS®技術やNCTS®技術等で差別化されている。また、マイクロニードルという「貼るワクチン」の技術も保有し、フィジビリティ・スタディを継続中である。
ようやく長いトンネルを抜けつつある
メドレックスにとって、2021年に続き2022年も停滞の年であったが、2023年、ようやく長いトンネルを抜けつつある。まず、同社初の上市品になると期待されているリドカイン・テープ剤(Lydolyte)について追加試験を行い、2023年3月再申請を果たした。さらに、Cipla社に導出していたチザニジン・テープ剤(CPN-101(MRX-4TZT)のPh2の進め方についてCipla社との交渉が長引いていたが、2023年3月、ようやくCipla社からすべての権利を取り戻し、独力でPh2を遂行する体制が整備された。
メドレックスは、限られた資源の下で、「選択と集中」を強化している。具体的には、2023年の開発の主軸は、チザニジン・テープ剤(MRX-4TZT)とし、並行してフェンタニル・テープ剤(MRX-9FLT)のBE試験を行う予定である。メマンチン貼付剤(MRX-7MLL)の開発は製剤改良に留め、PK試験などは2024年以降に持ち越す予定である。またブロックバスター級の売上が見込まれるジクロフェナック・リドカイン・テープ剤(MRX-6LDT)の開発は一時ペンディングとした。今後も、開発品を絞りながら、順次、開発が推進されていくものと考える。
パイプライン価値は主要4品目で262億円(税前)
さまざまな前提を置いたうえでの試算であるが、メドレックスのパイプライン価値は、主要4品目(リドカイン・テープ剤、チザニジン・テープ剤、フェンタニル・テープ剤、メマンチン貼付剤)の合計で262億円(税前)である。現時点のメドレックス社に対する市場の評価は、時価総額で55億円前後であり、各種前提条件を保守的に設定しても4本の主要なパイプライン合計の現在価値(税前)とは乖離が大きい。パイプラインの開発も遅れ気味のなか、なかなか市場はリドカイン・テープ剤以外のパイプライン価値を評価しにくいのかもしれない。「選択と集中」によって、一歩一歩着実に開発が進展することで評価が向上するものと期待する。なお、米国でリドカイン・テープ剤を販売しているサイレックス社の時価総額は12億ドルもあるが、パイプラインポートフォリオが異なることに加え、同社がSPAC経由の上場でありOverValueになり易いこと、経営不安にある親会社の優良資産を引き継いで業容拡大するのではないかという思惑があることを考えると単純に比較することはできない。
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