オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Growth)
欧米メガファーマとの交渉:具体的な進展へ
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フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
テロメライシンの開発は順調
中外製薬からオンコリスバイオファーマ社へ、テロメライシンと放射線を併用した食道がんPhase2臨床試験(先駆け指定)の引継ぎおよびデータベース等の移管が順調に進捗している。継承は従来の予定通り2022年10月15日までに完了する見込みである。このPhase2は既に9割以上の患者組み入れが完了しており、年内には組み入れ完了に到達できる見通しである。Henogen社(ベルギー)での商用製造スケールでのテスト製造および品質試験のバリデーション作業も順調に進行している。バリデーション作業の過半はクリアした模様で、商用製造に関する承認申請用データは早ければ2023年春にも揃う見通しである。現時点で、オンコリスバイオファーマ社が自社で2024年承認申請を行う計画に変更はない。上市後の販売体制について、上市直後は、オンコリスバイオファーマ社自らが、これまでの治験施設を中心に50施設未満を対象として独自の販売体制を構築する。ただし、数年後100~150程度の中核病院への拡大も視野に入れ、販売パートナーとなる複数の候補企業とアライアンス締結に向けて折衝中である。
欧米メガファーマとの交渉が具体化
進行性・転移性の食道がんを対象としたセカンドライン、サードラインでは、テロメライシンと免疫チェックポイント阻害剤の併用療法が主流になると考えられる。米国で、2019年5月から進行性・転移性の胃がん・胃食道接合部がんを対象としたコーネル大学の医師主導治験Phase2の投与を開始しているが、2022年8月末時点で、目標18例に対し、15例まで組み入れ完了しており、年内に結果を集計する予定である。18例のうち3例以上の奏効例が出現した場合、次の段階にステップアップの計画だが、既に現時点で、その可能性が高まっているようで、オンコリスバイオファーマ社は、PD-1抗体を保有する欧米のメガファーマ複数と次の段階の試験計画について協議を始めている。食道がんや胃食道接合部がんでは、「食道のつまり」による嚥下障害が発生しがちだが、免疫チェックポイント阻害剤や化学療法のみでは解決できず、テロメライシンを併用することで解決することが出来る。PD-1抗体を保有する欧米メガファーマとの提携が実現すれば、頭頸部がんなど他のがん種への適応拡大も期待できる。また、提携実現は、2024年の国内申請(放射線併用療法)に向けて独力で開発を推進しているオンコリスバイオファーマ社にとって、資金的にもプラスとなる。
選択と集中が継続
オンコリスバイオファーマ社は、独力でテロメライシンの開発(国内での放射線併用療法)を推進し、2024年の国内申請を目指しているが、テロメライシンの製法開発をベルギーのHenogen社に委託しており、昨今の円安ユーロ高の影響で、円ベースでの支払額が増加している。一方、2022年7月、緊急承認制度を活用した承認を目指していた塩野義製薬のゾコーバが承認されず、2度目の継続審議入りとなるなど、コロナ治療薬承認のハードルが上昇している。このような情勢下、オンコリスバイオファーマ社は、当面、経口コロナ治療薬OBP-2011の開発の優先度を下げ、臨床試験入りの時期は遅らせることとした。また、次世代テロメライシンとして期待されているOBP-702についても、臨床試験開始の時期を延期し、岡山大学によるAMEDの資金を活用して、臨床試験の前段階まで開発を継続することとした。このような選択と集中を継続し、テロメライシンの承認申請を第一優先としている。
一方、神経難病を対象としたOBP-601の開発は、導出先の米国トランスポゾン社の全額負担で順調に開発(Phase2a)が進展している。2024年にはトップラインデータが出てくる予定で、後期臨床入りする2025年前後には、提携など次の展開が期待できよう。
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