シンバイオ製薬株式会社(4582 GROWTH)
事業展開の加速の予感

2022/06/08

フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

血液専門のスペシャリティ・ファーマの地位を確立
 シンバイオ製薬は、自販体制の構築とブリンシドフォビル(BCV)の取得により、グローバルなライセンスを持つ血液専門のスペシャリティ・ファーマとしての土台が整い、第2の創業期に入った。主力のトレアキシン®の販売は、自社販売体制への切り替えに伴う在庫調整やコロナウイルス感染症の影響で売上げの伸びはやや勢いを欠くが、適応拡大や剤型変更は順調に進捗し、自社販売体制も順調に立ち上がっている。シンバイオの営業利益は、2008年12月期に、エーザイへトレアキシン®の国内独占販売権を導出した契約一時金を計上し黒字になった以外は、毎期損失となっていたが、2021年には遂に黒字化を達成した。2022年も、トレアキシン®の売上成長と高い収益性から、BCVの研究開発費を拡大させても、74.2%もの営業増益を達成できる見込みである。

新しい領域(腫瘍・脳神経)への挑戦
 2022年、シンバイオは、血液専門のグローバル・スペシャリティ・ファーマから、腫瘍領域や脳神経疾患領域にも橋頭堡を伸ばし始めている。現在、BCVに関して、造血幹細胞移植後の播種性アデノウイルス感染症を対象としたPh2が進行中で、腎移植後のBKウイルス感染症を対象としたPh2もまもなく開始予定である。さらに、BCVが悪性脳腫瘍に応用できる可能性が浮上し、現在開発計画を策定中である。また、多発性硬化症など脳神経領域でも応用できる可能性も考えられ、事業化を検討中である。トレアキシン®による利益成長は当面継続する見込みであるが、シンバイオでは、血液領域での導入品を拡充し、血液専門のスペシャリティ・ファーマの地位をさらに確固とするのみならず、新しい領域(感染症、腫瘍や脳神経)へ、その翼を広げることで、利益成長が踊り場になっても新領域での事業価値が評価される構造に進化していくことを企図している。

ジェネリック問題の考え方
2022年2月15日、4社がトレアキシン®点滴静注液(RTD製剤)のジェネリックの製造販売承認を取得した。これに対し、シンバイオは4社に対して、特許権の侵害の懸念を通告している。当該特許は、RTD製剤のライセンス元である、米国のイーグル社が保有している特許と考えられる。トレアキシン®(RTD製剤)の特許侵害は、すでに米国で先行して発生しており、イーグル社(ライセンス供与先のテバ社)の勝訴等により、後発品各社が一定期間、同製品を発売することが出来ない結果となっている。なお、4社のジェネリックの適応症は、2月の承認時点では低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫であったが、再発・難治性びまん性/大細胞型B細胞リンパ腫(r/rDLBCL)への適応追加の動きもある。ただし、うち1社は、5月になって販売延期の判断をした。また慢性リンパ性白血病(CLL)について、再審査期間中(2026年まで)は、排他的な保護があり、後発品の適応症には含まれない。さらに、シンバイオは、RTD製剤による、利便性の高いRI投与(10分投与)の承認を獲得しており、RI投与(10分投与)への切り替えを進めている。ジェネリックの影響がどの程度発生するか、不透明であるが、大きな影響が出現する可能性は低いものと考えられる。

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