株式会社メドレックス(4586 Mothers)
次期大型候補品浮上
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フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
次期大型候補品浮上
メドレックスは、同社にとって最大の開発品であったオキシコドン・テープ剤(MRX-1OXT)の開発を2019年11月に中断して以来、フェンタニル・テープ剤(MRX-9FLT)に開発に着手し、またリドカイン・テープ剤(Lydolyte)の申請も達成した。しかし、両者とも、ジェネリックとの競合が激しく、またフェンタニル・テープ剤はがん性疼痛市場が主要対象となり、慢性疼痛に広く用いられる可能性は低い。しかし、2021年5月、ようやく慢性疼痛市場に広く用いられる可能性があり、しかも同様の先行品がない開発品が浮上した。これはジクロフェナック・リドカイン・テープ剤(MRX-6LDT)で、中断しているオキシコドン・テープ剤に次ぐ大型開発品となる。また、感染症に対するワクチンをマイクロニードル製剤の開発も着実に展開しているところである。この2つの薬剤は開発に時間はかかるが、超大型薬剤になる可能性を秘めている。
変形性膝関節症の市場は大きい
ジクロフェナック・リドカイン・テープ剤(MRX-6LDT)の特徴は、異なる疼痛作用を持つジクロフェナックとリドカインの相加的あるいは相乗的な治療効果が期待できることである。現時点では、同様の先行品や開発中の候補品もない。最終的には幅広い慢性疼痛に対し、消炎・鎮痛剤として使用されること目指しているが、最初の開発対象となる適応症は、変形性膝関節症(OA)となる公算が高い。鎮痛剤の開発の難しさは、治験の効果を測定するエンドポイントが、個人の痛みの感じ方に依存することに起因する。その点でOAは患者のレベルを揃え易いと言われている。OAの患者は米国だけで6300万人と推計される大きな市場である。久光製薬のジクロフェナック貼付剤HP-5000もOAの市場を狙って開発中である。HP-5000が上市され、OAを適応症とする市場でジクロフェナック貼付剤が評価され始めた絶好のタイミングで、メドレックスのジクロフェナック・リドカイン・テープ剤はちょうどPh2を完了し、ライセンスアウトの時機を迎える可能性が高い。
マイクロニードル開発の進捗も期待
マイクロニードルの社会的意義は大きい。マイクロニードル技術を応用した「貼るワクチン」では、注射のような痛みがない(低侵襲性)だけでなく、接種に必ずしも医療従事者を必要としない(自己投与可能)。また、微小針に固体のワクチン抗原を塗布している場合、常温保存の可能性が高く、輸送・保存が簡便で、医療環境の乏しい発展途上国でのパンデミックに対抗する方法として有望な技術と考えられるため、大きな市場が見込める。メドレックスでは、ワクチン向けのマイクロニードルの潜在市場規模を470~9,400億円と捉えている。既に、治験工場は完成し、治験工場をワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にする施設にUpgradeも完了している。今後は、感染症に対するワクチン・マイクロニードル製剤の有効性、安全性等を確認し、実現可能性を検討する動物試験を行う予定で、製薬会社・ワクチンベンチャーなどとの事業提携の加速を期待したい。
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