株式会社メドレックス(4586 Mothers)
逆風下での進捗

2021/03/08

ベーシック ・ レポート 改訂版
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

ニッチな市場で独自の技術
メドレックス社は、既存の経口薬・注射薬の有効成分を経皮吸収型製剤として開発し、製薬会社へ導出(ライセンス供与)、マイルストーン収入や上市後のロイヤリティ収入等を獲得するビジネスモデルの会社である。
通常の新薬創薬ビジネスと比較して、既存の薬剤の有効成分をベースにしているため成功確率は高く、ニッチな分野であるため競合も限定され、しかも独自のILTS®技術やNCTS®技術等で差別化されている。また、マイクロニードルという「貼るワクチン」の技術も保有し、Feasibility Studyを継続中である。

逆風下での進歩と遅延
2020年は、新型コロナ感染症によって新薬開発が遅延し、創薬企業にとって逆風が吹き荒れた年であった。このような環境下でも、メドレックスは、リドカイン・テープ剤の開発を着実に推進し、既に新薬申請はFDAに受理済 (2020年10月)である。フェンタニル・テープ剤の開発は、2020年7月から臨床試験を開始、9月には、血中濃度・動態を予備的に確認するpilotPK試験で、参照製品であるDuragesic®と同等の血中濃度推移を確認するとともに、誤用事故防止機能についてもヒトでの有用性を予備的に確認している。ワクチン剤として開発を目指すマイクロニードルも治験工場のアップグレードを敢行し完了している。一方、メマンチン貼付剤の開発は、新型コロナ感染症による渡航禁止で製剤化の技術移転に時間を要していることなどを主因に遅延が発生しているが、年央以降臨床試験入りする見込みである。チザニジン・テープ剤も新型コロナ感染症による影響で Ph2入りが遅れている。今後の開発戦略について導出先と協議中であるが、今年中にはPh2入りを目指す予定である。

黒字化が視野に入ると評価が変化する可能性も
リドカイン・テープ剤Lydoltyeの先行品ZTlido®の苦戦など市場環境の変化や新型コロナ感染症の影響による開発の遅延等を踏まえ、パイプライン価値を再試算した。4本の主要なパイプライン合計の現在価値(税前)は237億円と試算され、現時点のメドレックス社に対する市場の評価(時価総額53億円前後)とは乖離が大きい。赤字が継続する下では、パイプライン価値を評価しにくいのかもしれない。リドカイン・テープ剤Lydolyteの導出と上市が成功すると、メドレックスは安定した収入源を確保することができる。Lydolyteの売上がピークに到達する頃には、他の開発品も承認・上市に向かい、黒字化も視野に入ってくる。また、マイクロニードル・ワクチンも大手と提携し、量産化の資金を手にすることになれば、さらに一段異なるステージになろう。

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