株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(4576 JASDAQ)
Glaukos社との共同研究契約のインパクト
フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
拡大するGlaukos社の戦略
Glaukos社は、世界的な眼科のデバイスメーカーである。現在の主力製品は、緑内障の治療を目的とした低侵襲デバイスiStent®およびiStent inject®である。わずか6年で売上10倍以上に成長した。眼科では、定期的・継続的に点眼することは難しいため、薬剤の徐放デバイスや房水を流出させるデバイスが成長市場となっている。
同社は、2018年までは緑内障を対象としたデバイスや薬剤投与器具の開発に注力してきたが、2019年、大きな市場が期待できる角膜障害や網膜疾患も対象に製品ポートフォリオの拡大を目指し、Avedro社やDose社を買収、またIntratus社の技術を導入するライセンス契約を結んだ。これらの施策により、Glaukos社は、眼科の分野で総合的なデバイスと薬剤を持つリーディング・メーカーとして、540億ドル規模の市場に挑戦中である。
Glaukos社はなぜDWTIを選んだのか?
2020年9月、Glaukos社は、2018年に結んだ共同研究契約とライセンス契約を改訂し、対象疾患領域の拡大とともに新たなライセンス契約を締結した。なぜ2度にわたって、Glaukos社はDWTIを共同研究の相手として選択したのであろうか。2018年の共同研究の対象は、緑内障を適応症として、DWTIの薬剤候補品(ROCK阻害剤)を長期にわたって徐放するiDoseというデバイスであった。2020年の9月の契約は、対象疾患を角膜障害や網膜疾患まで拡大し、開発に応じたマイルストーンの支払いと上市後のロイヤリティ支払いを盛り込んだ契約である。これは、DWTIの保有するROCK阻害剤などキナーゼ阻害剤の可能性とデバイスに適合する薬剤を創出できる創薬技術(長期にわたる化学構造の安定性や水溶性の低さ、ジェルなどの新規DDS技術との親和性など、様々な条件をクリアーできる化合物を創製できる力)を高く評価したためである。
今回の契約がDWTIにもたらすものは?
2 度にわたる共同研究契約とライセンス契約は、DWTIがGlaukos社へ強力に売り込みに行った結果ではなく、Glaukos社がその戦略を拡大する際に、DWTIを選んだ結果である。このため、これらの契約から発生するマイルストーンの規模やロイヤリティ率の高さは、従来のDWTIのイメージを覆すものである可能性が高い。
現在のDWTIは、既存上市品の適応疾患や適応地域も順調に拡大中であり、同時に次の自社品が上市されるまでの間、収益を安定的に得るための他社品の導入した製品も適応地域や対象手術の領域も拡大してきている。つまり安定収益源を複数確保しながら、自社で新薬開発を臨床前期まで遂行し、ライセンスアウトを狙えるステージにある。そこへGlaukos社との共同研究品が 加わるインパクトは大きいものと推察される。
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