株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(4576 JASDAQ)
成長する安定収益源を複数保有する稀有なバイオベンチャー
ベーシックレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
キナーゼ阻害剤の眼科薬を重点領域とする創薬ベンチャー
株式会社デ・ウ エ スタン・セラピテクス研究所(以下、DWTI)は、ニッチで比較的参入障壁の高い眼科 疾患を重点領域とし、自社独自のキナーゼ阻害作用を有する豊富な化合物ライブラリーを活用して、有望な新薬候補を継続して創出している。既に、自社開発プログラムから生まれたグラナテック®をライセンスアウトし上市した実績がある。ただし、グラナテック®の導出は、前臨床前の段階での導出で、基礎研究に特化していた基盤創生期の事象であったため、導出条件は必ずしも高いものではなかった。しかし、現在では、 適応疾患や適応地域も順調に拡大中であり、収益を安定的に得るために他社から導入した製品も適応地域や対象手術の領域が 順調に拡大中であり業容が拡大し始めている。 DWTIは、成長中の安定収益源を複数持ちながら、自社で新薬開発を臨床前期まで遂行し、ライセンスアウトを狙う段階までステージアップしている。
成長する安定収益源=既に上市品2品
緑内障治療薬であるグラナテック®(導出先:興和)は、2014年、緑内障治療薬の世界初のROCK阻害剤として承認された薬剤で、日本市場での売上は既に50億円以上になっている。2019年2月、韓国にて輸入薬の許可を取得、8月以降アジア4か国で新薬申請が行われ、2020年3月には、その第一号としてシンガポールで承認を取得した。また、2019年8月から、米国にて、フックス角膜内皮変性症を適応症としたPh2が開始されている。さらに、2020年2月、異なる作用機序の緑内障治療薬とグラナテック®の配合剤の開発 (K-232;日本)も開始され、ライフサイクルマネジメントも進行している。これらの施策により、グラナテック®の売上は、当面安定的に拡大することが期待できる。
また、自社の目利き力を生かして導入した眼科手術補助剤DW-1002は、グラナテック®後の自社開発品による収益確保までの時間と収益拡大の役割を果たし、 既存の欧州での販売に加え、10月にカナダに新薬承認申請を提出し、2019年12月には米国で承認を取得し、2020年4月に米国での販売を開始した。また適応症拡大については、日本での白内障手術に関する医師主導Ph3が2018年8月に終了し、2019年2月に、白内障手術に関する権利(日本)をわかもと製薬へ導出している。
H-1337とGlaukos製品も含めたパイプライン価値は170億円程度と試算
現在、自社創製品で、導出活動を行っているのは、H-1337である。H-1337も、グラナテック®同様にイソキノリン誘導体の一種で、LRRK2などを対象としたマルチキナーゼ阻害剤である。緑内障・高眼圧症を対象とした開発が2016年から米国で始まり、2018年3月にPh1/2aを開始、同年9月に良好な結果で終了している。DWTIでは、向こう1~2年のうちにライセンスアウトすべく活動中である。また、近年緑内障の分野では、患者のQOL向上を目的としたデバイス市場が注目されている。このような背景をもとにDWTIは、世界的な眼科デバイスメーカーであるGlaukos社と、2018年から、新規のROCK阻害剤を用いた緑内障治療製品の共同研究も開始している。既上市品の販売拡大と新規2製品の上市成功を前提として、様々な仮定を設定したうえでの試算ではあるが、DWTIのパイプライン価値は200億円程度が期待できる。新規2品の成功確率を60%としても、170億円程度の価値が期待できよう。
- 「ANALYST NET」のブランド名で発行されるレポートにおいては、対象となる企業について従来とは違ったアプローチによる紹介や解説を目的としております。株式会社ティー・アイ・ダヴリュは原則、レポートに記載された内容に関してレビューならびに承認を行っておりません。
- 株式会社ティー・アイ・ダヴリュは、本レポートを発行するための企画提案およびインフラストラクチャーの提供に関して、対象企業より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。
- 執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、本レポートを作成する以外にも、対象会社より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。また、執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、対象会社の有価証券に対して何らかの取引を行っている可能性あるいは将来行う可能性があります。
- 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券取引及びその他の取引の勧誘を目的とするものではありません。有価証券およびその他の取引に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任で行ってください。
- 本レポートの作成に当たり、執筆者は対象企業への取材等を通じて情報提供を受けておりますが、当レポートに記載された仮説や見解は当該企業によるものではなく、執筆者による分析・評価によるものです。
- 本レポートは、執筆者が信頼できると判断した情報に基づき記載されたものですが、その正確性、完全性または適時性を保証するものではありません。本レポートに記載された見解や予測は、本レポート発行時における執筆者の判断であり、予告無しに変更されることがあります。
- 本レポートに記載された情報もしくは分析に、投資家が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害に対して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュならびに執筆者が何ら責任を負うものではありません。
- 本レポートの著作権は、原則として株式会社ティー・アイ・ダヴリュに帰属します。本レポートにおいて提供される情報に関して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュの承諾を得ずに、当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行うことは法律で禁じられております。
- 「ANALYST NET」は株式会社ティー・アイ・ダヴリュの登録商標です。