シンバイオ製薬株式会社(4582 JASDAQ)
飛躍のためのラスト・ワンマイル

2020/04/07

ベーシックレポート改訂版
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

製薬ベンチャーからグローバルなスペシャリティ・ファーマへ
シンバイオは、自社で創薬研究を行うのではなく、世界中の創薬企業とのネットワークと目利き力を活かして有望な新薬を導入し開発してきた。開発のターゲットは、医療ニーズが高いにも拘わらず、大手があまり参入して来ない希少疾患(血液がんを中心とする希少疾患)に絞るニッチ戦略で、高シェア・高収益を狙える。また、導入する薬剤は、原則として既に有効性・安全性が確立されたものであるため、開発リスクは低く抑制されている。第一号品はトレアキシン®で、導入後5年で承認・上市され、2018年には標準療法の一つに採用された。シンバイオでは、剤型変更や適応拡大を追究する一方で、自販体制への切り替えを準備中であり、血液分野に特化したスペシャリティ・ファーマとなる日は近い。さらに2019年9月、ブリンシドフォビルを導入し、独占的なグローバルライセンス(開発製造販売)を取得しことで、アジアを手始めに欧米まで含むグローバル展開できるライセンサーへ変身する土台ができた。

黒字化までラスト・ワンマイル
トレアキシン®の販売は、従来エーザイが行っていたが、2021年から自社販売へ切り替わる予定である。このため、足元では、営業人員の拡充・流通網の整備、基幹システムの構築など体制整備のための費用が先行している。また 、研究開発費も拡大傾向にある。2020年は、トレアキシン®の剤型変更と適応拡大のための開発が最終段階に入り、第二の品目であるリゴセルチブの開発も、進行中の注射剤に加え、経口剤の開発開始が見込まれ、ブリンシドフォビルの開発もスタートする見込みである。一方、自販体制への切り替えのため、エーザイの在庫を売り切らなければならず、売上はあまり伸長しない見込みである。このため2020年の営業利益は、赤字幅が拡大し50億円の赤字となることが見込まれている。しかし、そこを乗り越えれば、2021年には、10億円の営業黒字に大転換する。トレアキシン®の自販への切り替え、そして適応拡大との投入により、売上は90億円まで拡大するとともに、収益性も上昇するからだ。2020年2月27日に発表された新株予約権発行による資金調達計画で、このラスト・ワンマイルを乗り越える方途も見えてきた。

パイプライン価値は、890億円程度(税前)と試算
トレアキシン®のパイプライン価値は、r/rDLBCLへの適応拡大により潜在市場規模が約2倍になると見込まれること、及び、液剤への切替えで原価率が大幅に改善すると推測されることから、自販のための営業コストを考えても、570億円程度(税前)と試算される。リゴセルチブは、RAS模倣分子として、種々のがん種への適応が期待できるが、低メチル化剤不応の高リスク骨髄異形成症候群のみを対象にした場合でも、249億円程度(税前)のパイプライン価値が期待できる。ブリンシドフォビルに関して、適応対象は、臓器移植を除外し、造血幹細 胞移植後のウイルス感染症(ウイルス性膀胱炎及びHHV-6脳炎)とし、日米欧の市場を考えた場合、そのパイプライン価値は291億円(税前)と試算される。管理費や基礎研究費等の全社コストの存在を考慮しても、パイプライン価値合計は890億円程度(税前)と 考えられる。あくまで、さまざまな前提を置いたうえでの試算であるが、潜在的な価値は大きいと考えられる。トレアキシン® の 適応拡大や剤型変更の申請・承認、資金調達の進捗が 、価値発現のカタリストとなる可能性があろう。

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