日経平均株価の上昇寄与・下落寄与の大きい銘柄(その1)

市川レポート(No.554)日経平均株価の上昇寄与・下落寄与の大きい銘柄(その1)

  • 1月から3月は米長期金利上昇を警戒した下落局面、値がさ株のマイナス寄与の大きさが目立つ。
  • 3月から5月は円安などを好感した上昇局面、やはりここでも値がさ株のプラス寄与額は大きかった。
  • つまり、景気見通し変化→景気敏感な値がさ株変動→日経平均ボラ上昇という典型的な動きに。

1月から3月は米長期金利上昇を警戒した下落局面、値がさ株のマイナス寄与の大きさが目立つ

今回のレポートでは、年初からの日経平均株価の上昇および下落局面において、どのような銘柄の寄与が大きかったかを確認します。はじめに、1月から3月までの下落局面を検証します。日経平均株価は1月23日に年初来高値の24,124円15銭をつけた後、3月23日に年初来安値の20,617円86銭をつけました(終値ベース、以下全て同様)。背景にあったのは、1月の米雇用統計に起因する「物価上昇→利上げ加速→長期金利上昇→株価調整」の思惑でした。

この局面における日経平均株価の下落幅は3,506円29銭でした。マイナスの寄与額が大きい銘柄は、ファーストリテイリング(-415円21銭)、ファナック(-230円24銭)、ソフトバンクグループ(-151円50銭)などで、値がさ株が目立ちます(図表1)。一方、上昇したのは225銘柄中わずか12銘柄で、プラスの寄与額が大きい銘柄は、ユニー・ファミリーマートホールディングス(+30円43銭)、アステラス製薬(+28円66銭)などでした。

3月から5月は円安などを好感した上昇局面、やはりここでも値がさ株のプラス寄与額は大きかった

日経平均株価は、3月23日に年初来安値の20,617円86銭をつけた後、上昇に転じ、5月21日には23,002円37銭まで回復しました。この期間、米長期金利の上昇は続きましたが、緩やかな米利上げペースが市場に織り込まれたため、為替市場では年初と異なり、ドル高・円安が進行しました。また、米通商政策に対する過度な警戒感が徐々に和らぎ、シリアや北朝鮮に関する地政学リスクも後退していきました。

この局面における日経平均株価の上昇幅は2,384円51銭でした。プラスの寄与額が大きい銘柄は、ファーストリテイリング(+357円70銭)、ユニー・ファミリーマートホールディングス(+139円15銭)、テルモ(+92円76銭)などで、やはり値がさ株が目立ちます(図表2)。一方、上昇したのは225銘柄中27銘柄で、マイナスの寄与額が大きい銘柄は、ファナック(-48円79銭)、武田薬品工業(-31円80銭)などでした。

つまり、景気見通し変化→景気敏感な値がさ株変動→日経平均ボラ上昇という典型的な動きに

このように、2018年の1月から5月にかけて、日経平均株価は価格変動(ボラティリティ)の大きい相場展開となりました。これは、米長期金利の上昇や米通商政策を巡る思惑などで、世界景気の見通しが変化し、景気敏感な値がさ株の変動幅が拡大したことによって、日経平均株価全体のボラティリティが上昇したためであり、日経平均株価の典型的な動きといえます。

なお、この間、医薬品銘柄が総じて堅調でしたが、背景には個社別の好材料が複数ありました。また、ユニー・ファミリーマートホールディングスの株価も堅調でしたが、これは伊藤忠商事が春先に株式公開買い付け(TOB)で同社を子会社化すると発表したことが影響しています。次回のレポートでは、5月21日から足元までの上昇および下落局面において、今回同様、どのような銘柄の寄与が大きかったかを確認します。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

180906

 

(2018年9月6日)

 

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