オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
がんを溶かす腫瘍溶解薬の価値は数百億円規模か

2018/08/27

ベーシックレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

がんを溶かす腫瘍溶解薬テロメライシン
オンコリスバイオファーマ社の主力開発品は、テロメライシンという遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。テロメライシン(OBP-301)は、がん細胞にも正常細胞にも感染するが、がん細胞で活性が高いテロメラーゼ酵素によりウイルスの増殖スイッチが入りがん細胞を溶解し、がん細胞の細胞死を発生させる。感染したがん細胞は溶融した後、増殖した腫瘍溶解性ウイルスを放出して他のがん細胞に感染していくだけでなく、がんの抗原も放出することで抗腫瘍免疫活性も上昇させる。従って、現在流行しているオプジーボやキイトルーダ等の免疫チェックポイント阻害剤との併用で抗がん効果がさらに増大する可能性も高い。

食道がん対象とした開発が進行
食道がんは心臓や肺が近いため、手術も比較的難易度が高いがん種であり、十分な標準治療法がない。切除不能の場合は、放射線化学療法が用いられるが、化学療法の副作用も軽視できない。テロメライシンは、食道がんを対象に放射線との併用で国内第Ⅰ相臨床試験(Ph1)が進行中であるが、2018年7月、重篤な副作用がないうえ、奏効率も高いという結果が発表された。会社は、年内にPh1を完了し、来年から第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(Ph2/3)に進行すべく当局との協議を開始した。将来、初期治療の標準治療法として期待される。また、進行度の高い食道がんで、免疫チェックポイント阻害剤と併用試験も本格化させる予定である。腫瘍溶解剤の治験は世界で100例以上あるが、食道がんを対象としているのは当社のみで、開発の成功は、患者に大きな光明をもたらすだろう。

テロメライシンのパイプライン価値は、食道がん対象だけでも大きい
オンコリスバイオファーマ社は6月に総額14.47億円規模となるファイナンスを発表したが、これで向こう2年間の開発費は、ほぼカバーされよう。テロメライシンのパイプライン価値は、食道がん(ステージⅠ・Ⅱ・Ⅲでの放射線併用療法及びステージⅣで免疫チェックポイント阻害剤併用療法)のみを対象としても、167~245億円程度(対象地域:日本・北米)と試算される。対象地域の拡大、胃がんなど患者数の多い他の消化器系がんへの適応拡大、またアジアでの肝細胞がんでの承認も視野に入れると、その価値は、さらにその数倍に膨らむ可能性がある。これらの開発を着実に進めるため、メガファーマなど有力なパートナーとの共同開発やライセンスアウトが早期に実現されることを期待する。

 

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