降って湧いた「パナマ文書」の話題

2016/04/08

今週の国内株市場も日経平均がいわゆる「アベノミクス相場」が始まって以来、初めての7営業日続落を記録するなど、冴えない展開が続いています。先週の日銀短観以降、為替市場の動向と企業業績への警戒感が結びつきやすいムードになったことや、今週末にオプションSQを控えて、売買の多い権利行使価格250円刻みが意識されている印象です。

そんな中、降って湧いたように「パナマ文書(Panama Papers)」というキーワードを今週に入ってからニュース等で耳にすることが増えました。パナマ文書とは、パナマのとある法律事務所が作成した文書であることからそう呼ばれているのですが、問題はその中身で、世界各地のタックスヘブン(租税回避地)に絡んだ会社設立や金融取引についての情報が多く含まれているようです。つまり、この機密文書が外部に流出してしまったわけです。

元々、タックスヘブンについては、多国籍企業による租税回避が批判されることが多いほか、タックスヘブンに会社を設立することで匿名性が高まり、マネーロンダリングなどの違法行為の温床となるのではという指摘もあるなど、イメージとしてはあまり良くないです。実際に、こうしたタックスヘブンの企業が誰のものなのか、どういった活動をしているのかは開示されることはありません。

今回のパナマ文書が波紋を呼んだのは、 4月3日に流出・公表された文書の中に、いわゆる「大物関係者」が多く登場したことです。プーチン露大統領の友人をはじめ、習近平中国国家主席の親族、李小琳(李鵬中国元首相の娘)、俳優のジャッキー・チェン、キャメロン英首相の亡父、シリアのアサド大統領などです。そしてこれにより、文章に名前の挙がったアイスランドのグンロイグソン首相が辞任するなどの影響が出始めています。

中国ではこのパナマ文書について報道規制が行われているほか、ネットで検索しても結果が表示されないなど、早々に手を打っています。これまで習近平政権は腐敗撲滅キャンペーンを積極的に実施することで人民の指示を獲得しようとしていましたし、先日の全人代でも汚職根絶を目標に掲げていますが、先頭に立っていた習主席の近辺からオフショア企業を保有していたことが明るみに出るのは政権にとって大きな痛手となる可能性があります。

この話題が日本も含めてどこまで拡大するのかはわかりませんが、陰謀論など何かと思惑や推測を生みやすいテーマですし、注意が必要と言えそうです。ちなみに、今回公開された文書はまだ一部で、5月初めにはほぼ全貌が公表されると言われています。

 

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