足元の資源国・新興国通貨の動向
市川レポート(No.216)足元の資源国・新興国通貨の動向
- 原油や人民元に下げ一服感が出始め、資源国通貨や新興国通貨を買い戻す動きもみられる。
- 原油増産凍結の実現は不透明だが、価格安定に向けた具体的な動きは産油国通貨の好材料。
- 資源国・新興国通貨の動向はまだ楽観できないが、パニック的な売り局面はすでに終了と考える。
原油や人民元に下げ一服感が出始め、資源国通貨や新興国通貨を買い戻す動きもみられる
中国の景気減速や原油安の進行など複数のリスク要因が重なり、年初から世界の金融市場は大きく混乱しました。為替市場でもリスクオフ(回避)の動きが鮮明となり、円が主要通貨でほぼ全面高の展開となりました。商品相場は全般に軟調地合いとなり、新興国経済の先行きにも不透明感が強まったことから、資源国通貨や新興国通貨は対米ドルで売り優勢の展開となりました。
ただ足元では、資源国通貨や新興国通貨を徐々に買い戻す動きもみられるようになっています。この理由として、原油などの商品相場に下げ一服感が出始めていることや、中国人民元の為替レートが比較的安定推移していることなどが挙げられます。そこで今回のレポートでは、資源国通貨と新興国通貨を取り巻く環境を整理し、今後の展望について考えてみます。
原油増産凍結の実現は不透明だが、価格安定に向けた具体的な動きは産油国通貨の好材料
WTI原油先物価格はチャート上、1月20日と2月11日の安値(それぞれ1バレル=26.19米ドル、26.05米ドル)でダブルボトムを形成しつつあり、ネックラインの1月28日高値(34.82米ドル)の上抜けで完成し、一段の上昇が示唆されます。一方需給面では、サウジアラビアなど4カ国は2月16日、他の主な産油国の同調を条件に、原油生産を1月の水準で凍結することで合意しました。ただイランは同調を明言しておらず、増産凍結が実現するか否かは不透明です。
産油国通貨にとって、原油価格の安定に向けての動きが具体化したことは、とりあえず好材料です。また鉄鉱石(中国天津港渡しの鉄含有量62%)の価格や、ロンドン金属取引所(LME)で取引されている6種類の工業用金属で構成されるLMEX指数も、1月中旬頃から緩やかに上昇しています。このような商品相場の流れを受け、資源国通貨は対米ドルで買い戻されています。
資源国・新興国通貨の動向はまだ楽観できないが、パニック的な売り局面はすでに終了と考える
一方、新興国に目を向けると、タイやインドネシアでは公共投資の実行などで内需が拡大する見通しで、アセアン諸国は今年から来年にかけて成長ペースが緩やかに加速すると思われます。また中国では3月5日から全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開催されますが、財政拡大などで景気を下支える姿勢を明確に示すことができれば、中国景気に対する市場の過度な懸念は和らぐ可能性があります。
このような状況下、すでにアジア通貨など新興国通貨は対米ドルで反発しつつあります。ただ中国の景気減速や原油安などのリスクは完全に払拭されておらず、世界の株式市場も依然として不安定であるため、資源国通貨や新興国通貨の動向もまだ楽観できない状況です。しかしこれら通貨のパニック的な売り局面はすでに終了していると思われ、今後は個々のリスク要因をにらみつつ、大底を形成する動きに向かう可能性はあるとみています。
(2016年2月26日)
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