インフキュリオン(438A)事業者間のクレジットカード決済拡大とSMBCグループとの協業で成長目指す

2025/10/29

金融機関や事業者に決済・金融機能を実装するプラットフォームをクラウド上で展開
事業者間のクレジットカード決済拡大とSMBCグループとの協業で成長目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ BtoC 取引からBtoB 取引まで、様々な事業者に決済・金融機能を実装
インフキュリオン(以下、同社)グループは、同社と子会社3社からなり、消費者向け(以下、BtoC)取引から事業者間(以下、BtoB)取引まで、様々な産業の事業者や金融機関に決済・金融機能を実装するプラットフォームをクラウド上で展開しているフィンテック企業注1である。

24年8月には、BtoB決済領域でのプラットフォーム構築を目指し、三井住友銀行及び三井住友カード(以下、SMBCグループ)と資本業務提携を行い、三井住友フィナンシャルグループ(8316東証プライム)の持分法適用会社(被所有割合29.3%)となった。25年4月には、SMBCグループが提供する法人向けデジタル総合金融サービス「Trunk(トランク)」の開発への参画を発表した。

同社の事業セグメントは、クレジットカード発行やアプリへのキャッシュレス決済機能の搭載等、事業者に支払手段に関するサービスを提供するペイメントプラットフォーム事業、クレジットカードの加盟店等、物やサービスを提供して資金を受け取る事業者向けにサービスを提供するマーチャントプラットフォーム事業、同社サービスの導入コンサルティングを含む、決済・金融領域のコンサルティングサービスを提供するコンサルティング事業からなる。

25/3期の売上高構成比は、ペイメントプラットフォーム事業が51.0%、マーチャントプラットフォーム事業が28.0%、コンサルティング事業が21.0%であった(図表1)。

売上形態別には、初期導入時の開発や追加開発、決済端末の販売等に伴うフロー収入、サービスの基本料や、決済処理金額・処理件数に連動する従量型課金収入等のストック収入、及びコンサルティング収入に分類される。25/3期の売上高構成比は、フロー収入が48.2%、ストック収入が30.8%、コンサルティング収入が21.0%であった。

◆ ペイメントプラットフォーム事業
ペイメントプラットフォーム事業では、金融機関や事業者のサービスに、クラウド上の同社の決済・金融ソリューションをAPI注2で接続し、組み込み型の金融機能を提供している。同社と子会社のネストエッグが担当している。

主要サービスとしては、スマートフォン上で決済ができるオリジナルPayの構築をサポートするWallet Station(ウォレットステーション)、VisaやJCB等の国際ブランドのクレジットカード発行プラットフォームのXard(エクサード)、企業間の請求書のカード支払いプラットフォームのWinvoice(ウィンボイス)がある。

1)Wallet Station
Wallet Stationは、バーコード・QRコード決済、ユーザー管理、バリュー・ポイント発行、資金のチャージ手段等、金融機関や事業者がオリジナルPayを構築するための機能をワンストップで提供するスマートフォン決済プラットフォームである。顧客企業は必要な機能を選択して利用でき、既存のスマートフォンアプリへの組み込みができる。

導入事例としては、日本コカ・コーラ(東京都渋谷区)が提供する「Coke ON Wallet(コークオン ウォレット)」、西日本旅客鉄道(9021東証プライム)が提供する「Wesmo!(ウェスモ)」等がある。

2)Xard
Xardは、金融機関や事業者が自社オリジナルの国際ブランドカードの発行ができるプラットフォームである。国際ブランドのライセンス取得やカード発行・決済等のプロセシングシステム、オペレーション業務までをワンストップで提供し、カード利用時のリアルタイム通知やリアルタイムでの利用可否判定等も行える。

導入事例としては、企業のバックオフィス業務の効率化ソリューションを提供するマネーフォワード(3994東証プライム)の「マネーフォワード ビジネスカード」、インボイス管理サービス「Bill One」を提供するSansan(4443東証プライム)の「Bill Oneビジネスカード」等がある。

3)Winvoice
Winvoiceは、法人間の請求書払いにクレジットカード決済のサービスを提供したい事業者(以下、請求書カード払いサービス提供者)に向け、必要な業務プロセスとシステムを提供する請求書支払いプラットフォームである。

請求書カード払いサービス提供者は、請求者(請求書発行者)と支払者の間に立ち、請求者に対しては資金の立て替え払いを行う一方、支払者からは手数料を取ってクレジットカード払いを受け付ける。支払者はクレジットカードによる後払いで資金繰りが改善し、銀行振込による都度支払いの手間も軽減される。

導入事例としては、会計ソフト、給与計算ソフト等を手掛ける弥生(東京都千代田区)の「弥生 請求書カード払い」等がある。

◆ マーチャントプラットフォーム事業
マーチャントプラットフォーム事業では、店舗のキャッシュレス化、デジタル化を推進するプラットフォームを提供している、同社と子会社のリンク・プロセシングが担当している。

主要サービスとしては、クレジットカード等の加盟店向けに決済端末の提供等を行うキャッシュレスソリューションの「Anywhere」がある。開発中のサービスとしては、CCIグループ(7381東証プライム、旧北國フィナンシャルホールディングス)と共同で開発を行っている、クレジットカードの加盟店開拓や管理を行うアクワイアラ向けの、フルクラウド型アクワイアリングシステムがある。

1)Anywhere
Anywhereは、加盟店とカード会社等を接続する決済端末、決済アプリの提供から、決済情報を各カード会社等に振り分けるゲートウェイ機能までをワンストップで提供している。25年8月時点でクレジットカード、電子マネー、QRコード決済等39種類のキャッシュレス決済手段に対応している。Anywhereは顧客のサービスに柔軟に組み込める点と、都度決済のみでなく、継続課金にも対応している点が強みとなっている。

導入事例としては、保険外交員の決済端末や、タクシーアプリ「GO」を提供するGO(東京都港区)が展開するタクシーの後部座席タブレットへのAnywhereの組み込み等がある。

2)フルクラウド型アクワイアリングシステム
フルクラウド型アクワイアリングシステムは、加盟店でのカード利用時の信用照会、売上処理、加盟店への売上金支払い、国際ブランドへの接続等のクレジットカードのアクワイアリング業務に必要な機能をクラウド上で提供するシステムである。アクワイアラである北國銀行での利用に留まらず、他のアクワイアラでの利用も想定している。

◆ コンサルティング事業
コンサルティング事業は、子会社のインフキュリオン・コンサルティングが担当している。同社は06年の創業以来、決済・金融領域におけるコンサルティングサービスを提供しており、業界課題の把握や今後の動向について精通している。コンサルティング業務は、ペイメントプラットフォーム事業やマーチャントプラットフォーム事業のサービス導入支援の役割も果たしている。

◆ 主要販売先
主要販売先として開示されている北國銀行向け売上高は、CCIグループとの共同開発に伴うシステム開発のフロー収入やコンサルティング収入が中心である。BIPROGY(8056東証プライム)向け売上高は、西日本旅客鉄道の「Wesmo!」の開発に関する収益であり、三井住友カード向け売上高は、SMBCグループ向けのシステム開発に関する収益である(図表2)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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