日米関税交渉は4回目の閣僚協議が終了~今後の焦点を整理する
日米関税交渉は4回目の閣僚協議が終了~今後の焦点を整理する
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- 赤澤大臣は日米関税交渉4回目の閣僚協議で議論進展を確認、ただ具体的な言及は避けた。
- 日本は貿易拡大、経済安保協力、非関税障壁見直しという交渉カードで、関税見直しを要求か。
- 日本は関税撤廃の立場、6月中旬の合意は容易ではなく、もう少し協議の継続の想定も必要に。
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赤澤大臣は日米関税交渉4回目の閣僚協議で議論進展を確認、ただ具体的な言及は避けた
赤澤亮正経済財政・再生大臣は米首都ワシントンで5月30日(現地時間、以下同じ)、ベッセント米財務長官、ラトニック米商務長官と閣僚協議を行いました。閣僚協議は4月16日に1回目が開催された後、5月1日と23日にも開催されており、今回が4回目となります。赤澤氏は協議後の記者会見で、「日米が互いの立場を十分認識するとともに、合意に向けた議論が進展していることを確認した」と述べました。
赤澤氏はまた、自動車や鉄鋼などの分野別を含む一連の関税措置について、米国に即刻の見直しを強く求めているとし、「(即刻の見直しが)かなわない形であれば、合意は困難だというのが現時点でのポジションだ」と発言しました。ただ、赤澤氏からは、合意に向けた米国との議論が具体的にどう進展したかについての言及はなく、6月中旬の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の前に再び協議することで一致したとの説明がありました。
日本は貿易拡大、経済安保協力、非関税障壁見直しという交渉カードで、関税見直しを要求か
これまでの報道を踏まえると、日本側は関税措置の見直しを米国に求めるにあたり、主に3つの交渉カードを用意していると考えられます。具体的には、①米国との貿易拡大、②経済安全保障分野での協力、③日本の非関税障壁の見直し、の3つです(図表1)。①では、米国産のトウモロコシ(飼料用や燃料用に加工したバイオエタノール)や大豆のほか、防衛装備品(戦闘機に積む中距離空対空ミサイルなど)の購入拡大も検討されている模様です。
また、②については、日米造船業の再生に向けたファンドの設立や、航空機分野における生産や開発の協力、レアアース(希土類)や半導体のサプライチェーン(供給網)強化が想定されます。そして、③に関し、輸入自動車特別取扱制度(PHP)の対象台数の引き上げ、電気自動車(EV)の充電インフラの見直し、自動車の安全基準を相互に認証する仕組みの導入なども検討されている様子です。
日本は関税撤廃の立場、6月中旬の合意は容易ではなく、もう少し協議の継続の想定も必要に
現時点で、米国が日本に発動している関税措置は、鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税が25%、自動車・自動車部品への追加関税が25%、相互関税の基本税率10%です(図表2)。なお、相互関税の上乗せ税率14%は現在停止中で、7月9日から発動される見通しとなっています。今後の焦点は、米国が日本の交渉カードをどのように受け止め、一連の関税措置の見直しを、どの程度進めるかが焦点になると考えます。
日米とも、6月中旬のG7サミットに合わせて日米首脳会談を開催し、そこで一定の合意を目指すことを念頭に置いているとみられます。ただ、日本は、関税の引き下げではなく撤廃を要求しており、撤廃でなければ合意は困難との立場であるため、6月中旬までの限られた時間で米国と一致点をみいだすことは一般に考えれば容易ではなく、もう少し協議が続くことも想定しておく必要はあると思われます。
(2025年6月2日)
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