日本企業にまだ足らないもの

2025/03/03

・昨年の世界経営者会議で、何人かの経営者の話を聞いた。KKRのクラビス会長は、日本の変化を有望とみている。日本はこれまで効率がよくなかった。かつて米国も同じだったので、日本がやるべきことは分かっていた。ただ、それを誰がやるか。

・ひと時代前、アクティビストの提案と行動は受け入れられなかった。今はどうか。アベノミクスはゲームチャンジーになったと、クラビス会長は評価する。

・今の日本の企業は、数が多すぎる。企業数が米国の3倍もある。コア事業をきちんと確立していないという意味で、ノンコアの企業が多い。それを経営する経営者の資質が十分でない。M&Aによって、経営を改善し、その企業をコアの会社にするという改革が必要である。実際、KKRは日立から5つの会社を買い取って成功させた。

・日本はもっと広くて深い資本市場を作っていくべし、と提言する。株主価値だけではなく、ステークホルダー価値を上げよ、もっと地域社会に貢献せよ、地産地消せよ、と強調した。

・自分たちの資本を回して、利用して、リターンを上げていく。社員も株をもって株主となっていく。ROICをもっと高め、PBRを1倍以上にもっていくことはいくらでもできる、と語ったのが印象的であった。

・パナソニックコネクトの樋口プレジデントCEOは、2017年に25年ぶりにパナソニックに戻った。カンパニーのトップになって7年、パナソニックは変わったか。粘土のような体質があって、変革はまだ7合目という。カルチャーを変える必要があるが、ずっとそこにいると、やばいと感じない。ここをどう変えていくか。そこに戦略が必要である。

・まず昔在籍した時に嫌だと思ったことをやめて、人が生き生きと働けるようにしたい。しかし、社員は変化に対してどうしても受け身になる。では、どうするか。

・第1に、to be を示す。あるべき姿をリーダーが率先体現する。忖度文化がなくなるように、本気のアクションを見せる。リーダーがリードし、先頭に立つ。第2に、なりたい文化を言語化する。それをこれでもか、と語る。その一環として、本社を東京に移した。

・第3に、オールハンズMTG(全社員が参加するミーティング)を重ねた。そこで寝ているような社員がいたら、寝るような話をする側に問題があると自らを戒めた。いかに行動を変えるか。

・組織には慣性がある。組織は形状記憶合金で、うっかりすると戻ってしまう、と樋口氏は話す。一方で、腹落ちすると回り出す。現在は、ES(従業員満足度)は大きく高まり、ハラスメントはほぼなくなっているという。懲罰は厳しくしたことも効いている。

・付加価値を認識して、それを高く売っていく。頑張っても利益が出ないとすれば、早めに手を打つ必要がある。戦い方を変えなければ勝算はない。技術者も、フレキシブルな技術者に育て直していく必要がある。

・ビジネスモデルをいかにプラットフォーム化していくか。それをエコシステムとしてバリューチェーンに結びつけていくか。ここが潮目の変極点となろう。

・JTBはどうか。JTBは人流依存ビジネスである。コロナで顧客は激減したが、2023年にはコロナ前まで回復した。当社は、1912年創業、ジャパンツーリストピューローとして旅行の手配から始まった。その事業ドメインを、2018年から「交流創造事業」と再定義した。

・旅行ではなく、交流創造である。ツーリズム以外にも、エリア(地域)ソリューション、ビジネス(企業)ソリューションが入ってくる。JTBのネットワークを活用して、ソリューションの提供領域を広げている。2023年には旅行以外が3割を占めるようになった。

・実際、アサヒビールと弘前市が組んで、りんごの収穫&農園ボランティアを企画した。りんご農園は収穫期に人手が足らない。そこにボランティアを送り込んで、新たな交流ビジネスを始めた。

・関係人口を増やして、地域貢献を果たしていく。ストーリーを作って、長期の仕組みとして運営する。顧客とのエンゲージメントを広げて、ミーティングやイベントと関りながら、サステナビリティに貢献する。

・日本へのインバウンドだけでなく、グローバルな観光にも事業を広げていく。国際観光客数は2019年の15億人が2030年には18億人に増えそうである。日本人以外の人を欧州の観光地に呼ぶにはどうしたらよいか。

・現地で成功するには、日本モデルではなく、日本のホスピタリティをキープしつつ、各国に合わせてローカライズしていく。ここにも大いに挑戦していくと、JTBの藤井取締役は語った。

・大谷フィーバーを受けて、MLBパッケージツアーを、ホスピタリティをベースにしたプログラムとして作った。特別な体験を入れて、体験価値を高めていく。そうすると価格が高くても受け入れてもらえるという。

・規格外野菜の事業化にも取り組んでいる。非常食、アウトドア食、ギフト食など多様な利用ができそうである。規格外野菜を缶詰にした「ロス旅缶」の発想は面白い。

・新しい経営革新が始まっている。これが広がって行けば、活気が出てくる。日本企業には、もっと挑戦してほしい。アクティブ投資家は、本来、全員アクティビストである。企業がアクティビストを恐れ、嫌っているようではまだ内向きである。本物の価値創造に向けて戦ってほしい。そういう企業にぜひ投資したい。

株式会社日本ベル投資研究所
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