タウンズ(197A)慢性疾患や罹患前後の検査へと事業領域拡大を目指す

2024/06/25

新型コロナウイルス抗原検査キット等の体外診断用医薬品を製造・販売
慢性疾患や罹患前後の検査へと事業領域拡大を目指す

業種:医薬品
アナリスト:髙木伸行

◆ 体外診断用医薬品事業を行う
タウンズ(以下、同社)は、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスなどによる感染症の迅速診断キット注1を開発、製造、販売している体外診断用医薬品注2メーカーで、国内POCT注3市場を牽引している1社である。

売上内訳は開示されていないが、取扱い製品群は検査対象によって、①新型コロナウイルス(単品検査キット)、②新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス(コンボキット)、③インフルエンザウイルス(単品検査キット)、④その他感染症に分類される。主に内科、小児科、耳鼻咽喉科向けの製品が多い。

20年10月に新型コロナウイルス抗原注4検査キット「イムノエース®SARS-CoV-2」を発売するまでは、インフルエンザの抗原検査キットが売上高の中心であった。新型コロナウイルス抗原検査キットの発売以降は新型コロナウイルス感染症関連製品への売上高が5割以上を占めている。新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス以外では、アデノウイルス抗原検査キット、マイコプラズマ抗原検査キットなど多くの抗原検査キットを製造・販売している。

◆ 販売体制及び販売先
同社は医薬品卸売販売業者を通じて病院、開業医、研究機関やバイオベンチャーなどのエンドユーザーに製品を提供している。4月末時点で営業員(臨床検査薬情報担当者)は35名と従業員の約13%に過ぎないが、その6割以上が10年以上の業界経験を持つという少数精鋭の営業体制を敷いている。

主な販売先としては、22/6期は厚生労働省向けが売上高の48.2%を占めた。また、スズケン(9987東証プライム、名証プレミア、札証)及びそのグループ会社向けは、22/6期は売上高の20.3%、23/6期は同73.0%を占めている(図表1)。この他には、正晃(福岡市東区)、メディパルホールディングス(7459東証プライム)傘下のメディセオ、東邦ホールディングス(8129東証プライム)傘下の東邦薬品といった医薬品卸が販売先となっている。

厚生労働省向けが22/6期に大きな割合を占めたのは、新型コロナウイルス感染症拡大により抗原検査需要が急拡大したなか、厚生労働省による抗原検査キットの買取が行われたためである。スズケングループ向けの構成比が23/6期に大きく上昇したのは、厚生労働省による買取はなくなったが、患者の検査を直接担う医療機関向けが増加傾向にあったためである。

また、21年末には塩野義製薬(4507東証プライム)と新型コロナウイルス抗原検査キットに関する共同販売契約を締結し、塩野義製薬のMR注5などによる販売が開始された。同社は塩野義製薬に対して販売促進活動の対価を支払っている。

また、今後拡大を考えている海外売上比率は22/6期は9.3%、23/6期は1.8%となっている。22/6期は英国での販売が大きかった。

◆ 製造
同社の生産設備は静岡県伊豆の国市の本社にある神島工場の1拠点のみであるが、今後の事業拡大並びに安定的な事業継続を見据えて、静岡県三島市に用地を取得し工場を建設中である。100億円を超える投資額となり、稼働開始は25年12月を計画している。

新三島工場の月間生産能力は平日昼間のみの稼働且つ外部委託を最小化するという前提で260万テストとなり、神島工場の130万テストと合わせて、月間生産能力は390万テストとなる。新三島工場には、原材料在庫の保管スペースも確保されている。現在、外部の倉庫を賃借していたりしていることから、倉庫費に加えて横持配送費用などが発生しているが、完成後は倉庫費や物流費の削減も可能となる。

◆ 研究開発
同社の売上高研究開発費比率は4%台で推移している(図表2)。同社の研究開発は開発本部が担当しており、本部内にある研究開発部には43名(臨時社員を含む、24年3月末)が研究員として所属している。正社員の約7割が博士・修士の学位を持ち、6割以上が同社において5年以上の研究開発実務経験を有している。同本部にある臨床検査部には7名(臨時社員を含む)が所属しており、成長に向けての柱のひとつである臨床検査受託サービスの開始に向けた準備も行っている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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