株式会社メドレックス(4586 Growth)
Lydolyte上市と大型開発品のPh2入り

2024/03/05

ベーシック ・ レポート改訂版
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯


ニッチな市場で独自の技術
メドレックス社は、既存の経口薬・注射薬の有効成分を経皮吸収型製剤として開発し、製薬会社へ導出(ライセンス供与)、マイルストーン収入や上市後のロイヤリティ収入等を獲得するビジネスモデルの会社である。
通常の新薬創薬ビジネスと比較して、既存の薬剤の有効成分をベースにしているため成功確率は高く、ニッチな分野であるため競合も限定され、しかも独自のILTS®技術やNCTS®技術等で差別化されている。また、マイクロニードルという「貼るワクチン」の技術も保有し、フィジビリティ・スタディを継続中である。


ようやく転機を迎える年へ
これまで、メドレックスの歩みは必ずしも順調ではなかった。Lydolyteを巡って、FDAより2度、審査完了報告通知(Complete Response Letter)受領し、承認が当初の目論見よりも3年程度遅れている。また、チザニジン・テープ剤(MRX-4TZT)の開発を巡って、導出先のCipla社の方針変更があり、開発が大幅に遅延し、自社開発へ方針変更が発生した。資金面でも新株予約権発行が発生する状況が続いてきた。しかし、2024年は、メドレックスにとって、ようやく転機を迎える年と期待される。メドレックスは、ここ数年、限られた資源の下で、「選択と集中」を強化してきたが、ようやくその成果が出てきたところである。同社初の上市品になると期待されているリドカイン・テープ剤(Lydolyte)について、追加のデータ解析を行い、2024年1月再々申請を果たした。販売提携交渉も進捗しているものとみられ、年央に期待される承認の前後には、契約締結、そして年内に上市する予定である。また、大型商品として期待されるチザニジン・テープ剤(MRX-4TZT)に関し、2024年は、商品価値を証明するためのPh2を独力で開始する予定である。Ph3のための非臨床試験(要2年)も並走して行っていけば、Ph2後の導出がスムーズに行われる基盤が整うことになる。また、中枢神経治療薬として期待されるAlto社のAlto-101も、2024年に統合失調症による認知障害を対象としたPh2入りが見込まれる。


パイプライン価値は主要4品目で277億円(税前)
メドレックスのパイプライン価値は、さまざまな前提を置いたうえでの試算であるが、主要4品目(リドカイン・テープ剤、チザニジン・テープ剤、フェンタニル・テープ剤、メマンチン貼付剤)の合計で277億円(税前)である。現時点のメドレックス社に対する市場の評価は、時価総額で52億円前後であり、各種前提条件を保守的に設定しても4本の主要なパイプライン合計の現在価値(税前)とは乖離が大きい。パイプラインの開発も遅れ気味のなか、なかなか市場はリドカイン・テープ剤以外のパイプライン価値を評価しにくいのかもしれない。メドレックスの競争力の源泉は創薬力である。表面に出ているパイプライン以外に、地道に新規パイプライン創出に向けた製剤開発を継続しているからこそ、2023年9月にAlto社との提携契約に結実できた。「選択と集中」によって、一歩一歩着実に開発が進展することで評価が向上するものと期待する。

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