ドリーム・アーツ(4811)SmartDB®の拡販と戦略パートナーの拡大で成長目指す

2023/10/31

大企業向けにノーコード開発ツールSmartDB®等のSaaSプロダクトを提供
SmartDB®の拡販と戦略パートナーの拡大で成長目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ 大企業向けにノーコード開発ツール等のSaaSプロダクトを提供
ドリーム・アーツ(以下、同社)グループは、同社と中国の子会社である夢創信息(大連)有限公司からなり、ノーコード開発注1ツールを始めとする大企業向けSaaS2プロダクトの提供を主要業務としている。中国子会社は、同社製品の開発・テスト・サポート業務を行っている。

同社グループの事業は、SaaSプロダクトの月額利用料からなるクラウド事業、オンプレミス型パッケージソフトウェアのライセンス料とメンテナンス料からなるオンプレミス事業、及びこれらの2事業に関するシステム開発・改修、導入支援等のサービス提供を行うプロフェッショナルサービス事業の3つのセグメントからなる(図表1)。

収益形態は、クラウド事業とオンプレミス事業のパッケージソフトウェアのメンテナンス料がストック売上高、オンプレミス事業のパッケージソフトウェアのライセンス料とプロフェッショナルサービス事業がスポット売上高となっている。近年は、SaaSプロダクトの売上増加に伴い、ストック売上高比率が上昇している(図表2)。

◆ クラウド事業
クラウド事業の売上高は、幅広い業界で利用されるホリゾンタルSaaSと、特定の業界で利用されるバーティカルSaaS、及び特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービスのDCR(DX Custom Resolution)の月額利用料からなる。

ホリゾンタルSaaSプロダクトとしては、ノーコード開発ツールのSmartDB®(スマート・デービー)、社内ポータル構築ツールのInsuiteX®(インスイート・エックス)がある。バーティカルSaaSプロダクトとしては、チェーンストア向け情報共有ツールのShop(ショップ)らん®がある。

(1)ホリゾンタルSaaS
① SmartDB®
同社の主力SaaSプロダクトであるSmartDB®は、プログラミングが不要で、事業部門の非IT人材がドラッグ&ドロップ等の直感的な操作と簡易な設定により、様々な業務アプリケーションの開発を行えるノーコード開発ツールである。ホリゾンタルSaaS売上高の約8割を占めている。

データを入力するインターフェイスの「入力フォーム」、入力データの承認・意思決定プロセスの「ワークフロー」、データの蓄積と活用を行う「データベース」の3つの機能を組み合わせて業務アプリケーションをプログラミングすることなく開発することができる。加えて、複数のプロセスにまたがる業務やデータを結合して一元的に管理するためのダイナミックブランチ機能や、詳細な閲覧権限の設定等によるセキュリティ管理機能、他社のSaaSプロダクトや外部システムとのAPI3連携等の他のシステムとの連携機能も提供している。

これらの機能により、データベースやワークフロー等の標準的なアプリケーションから、従来はシステムインテグレーターによるカスタム開発が中心だったERP4とのデータ連携が必要な周辺システムや生産管理・在庫管理等の基幹業務を支えるサブシステムまで、幅広い領域で利用できる開発ツールになっている。

料金体系は、利用ユーザー数に応じたユーザーライセンス、データベース数に応じたバインダーライセンス。他社SaaSとの連携やAPI利用等の追加機能を利用するためのオプションライセンスからなる。月額利用料金はユーザー数200人、データベース数50個までの40万円からとなっている。

② InsuiteX®
InsuiteX®は、社内ポータルを構築するためのツールであり、用意されたテンプレートに必要な部品をドラッグ&ドロップ操作で配置し、ポータルを作成することができる。

機能としては、通知や通達をポータルに掲載する通知通達機能、アンケートや投票を作成し、結果を集計する集計機能、他システムに蓄積されたデータも含め、グラフ表示を行うダッシュボード機能等がある。SmartDB®に蓄積されたデータをダッシュボード機能で表示できることもあり、InsuiteX®のユーザーは全てSmartDB®を利用している。

(2)バーティカルSaaS~Shopらん®
Shopらん®は、チェーンストアの店舗運営を支援するための情報共有ツールである。本部と店舗で異なるインターフェイスを持ち、本部側では店舗への業務指示等が一覧でき、店舗側では当日に処理すべき業務がリストとして表示される。本部から店舗への指示通達機能に加え、店舗の業務実施状況の回答等、情報収集機能を持っている。

(3)DCR
DCRは、個別企業の戦略要件に基づいてシステム開発を行い、クラウド基盤上で運用しつつ、継続的な機能拡張開発を行う開発運用一体型クラウドサービスである。システムの開発に関する売上高はプロフェッショナルサービス事業に計上され、クラウド事業には運用開始後の月額利用料が計上される。

◆ オンプレミス事業
オンプレミス型のパッケージソフトウェアとしては、SmartDB®とInsuite®の2製品を販売している。SaaSプロダクト提供へのビジネスモデル転換に伴い、18年12月に新規顧客へのライセンス販売を停止しており、現在は従来からパッケージソフトを利用している顧客への追加販売のみになっている。ソフトウェアメンテナンスは、技術的な問い合わせ対応に加え、バージョーンアップ版の提供を行っている。

◆ プロフェッショナルサービス事業
プロフェッショナルサービス事業では、SaaSの導入支援サービス、SaaSの利活用コンサルティングサービス、DCRの初期開発及び拡張開発、オンプレミス環境からSaaSへの移行サービス等を提供しており、投入工数に応じた収益を得ている。

◆ 販売チャネル
オンプレミス型パッケージソフトの販売及びメンテナンスでは、代理店であるシステムインテグレーター経由の販売があるが、SaaSプロダクトの販売ではパッケージソフトからの移行や、オンラインイベントを通じた新規顧客獲得等による自社販売を行っている。大企業向け販売では成功事例の提示が重要との考えから、同社のホームページでの導入事例の掲載等も積極的に行っている。また、特定の部門で先行的に導入してもらい、使い勝手や効果を確認した上で、全社ベースで導入してもらうという販売手法も、新規顧客開拓とアップセルの両面で売上拡大につながっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。