来週の金融市場見通し(2023年8月28日~2023年9月1日)
■来週の見通し
前週発表の7月の米小売売上高などが市場予想を上回ったことなどから、米連邦準備理事会(FRB)が年内に追加利上げに踏み切る可能性や、政策金利を長期にわたって高く維持するとの見方がくすぶるものの、弱い米経済指標もみられ、米金融政策をめぐる見方は分かれています。他方、中国人民銀行は8月の最優遇貸出金利(LPR)の1年物を引き下げました。来週はジャクソンホール会議での25日のパウエルFRB議長の発言を受けた米金融市場の反応に加え、週末の米雇用統計なども確認したいところです。
◆株価 :底堅い展開か
日本株は、底堅い展開が見込まれます。今週末はジャクソンホール会議を警戒した売りが優勢となっていましたが、イベント通過後の安心感による買い戻しが株価を押し上げそうです。また、日本企業の資本効率改善や株主還元の強化への期待も、株価を下支えしそうです。ただ、中国経済の減速懸念が株価の重しとなりそうです。そうした中、来週に発表される米国の雇用や物価に関する経済指標が注目されます。
◆長期金利 :米長期金利にらみ
日銀が実施した国債買入オペ(長期国債を買い入れ市場に資金を供給)が、投資家の売り意欲の強さを示す結果となり、長期金利は一時0.675%まで上昇しました。日銀が長期金利の事実上の許容上限を1%に引き上げて以来、超長期債利回りを中心に上昇しやすくなっています。もっとも、日銀は急激な金利上昇は容認しない姿勢です。来週は、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言を受けた米長期金利の動きに振らされそうです。
◆為替 :パウエルFRB議長発言に注目
ドル円は、日本時間25日夜に予定されているパウエルFRB議長の講演の結果次第では、変動性の高い展開となりそうです。足元、同議長のタカ派発言などを警戒し、米長期金利は上昇基調で推移しており、ドル円も堅調な動きとなっています。市場の想定内のタカ派発言であれば、ドル円の上昇余地は限定的とみられます。また、市場の想定ほどタカ派でなかった場合、ドル円は、これまでの上昇基調の調整局面に入る可能性があります。
◆Jリート :底堅い動きが継続
東証REIT指数は、週初は米長期金利の上昇を嫌気して売りが優勢だったものの、以降は株式相場が堅調に推移したことや長期金利の上昇が一服したことなどから投資家心理が上向き、買いが優勢になりました。東証REIT指数が1,850ポイント前後では押し目買いも強まりました。引き続き資産価格からみた割安感や利回りに着目した買いなどが下支えするとみられますが、米金融政策をめぐる思わくに振らされることには注意が必要です。
■来週の注目点
鉱工業生産指数(7月、速報値) 8月31日(木)午前8時50分発表
鉱工業生産指数は6月に前月比2.4%上昇し、105.7(2020年=100)となりました。業種別では、自動車工業や電子部品の生産が特に増加した一方、石油・石炭製品などが低下しました。
7月の鉱工業生産指数は、前月比で低下が見込まれます。電気・情報通信機械工業の生産などが低下しそうです。今後については、海外景気の下振れ懸念が続いていることから、当面は緩慢な回復傾向になりそうです。
米雇用統計(8月) 9月1日(金)午後9時30分発表
7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比18万7,000人増となりました。平均時給は前月比0.4%増(前年比4.4%増)と、前月比、前年比とも前月と同じ伸びとなりました。また、失業率は3.5%と前月から低下するなど、総合的には堅調な結果となりました。
米労働者に関する需給バランスは徐々に改善しているとみられるものの、当面、賃金動向は底堅い動きが続きそうです。8月の非農業部門雇用者数は前月比16万8,000人増程度、平均時給は同0.3%増程度(前年比4.3%程度)、失業率は3.6%程度を想定しています。
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