Laboro.AI(5586) AI活用の先進事例への取組と蓄積したノウハウ活用により収益拡大を目指す

2023/08/14

顧客企業の成長戦略や事業課題に対応するカスタムAIを開発
AI活用の先進事例への取組と蓄積したノウハウ活用により収益拡大を目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ 顧客企業の成長戦略や事業課題に対応するカスタムAIを開発
Laboro.AI(以下、同社)は、「すべての産業の新たな姿をつくる。」、「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに、顧客企業の成長戦略や事業課題に対応するAI導入・事業変革のコンサルティングと、オーダーメイドのAI開発を行うカスタムAIサービスを提供している。

同社ではカスタムAIサービスを、主に顧客企業の成長や構造転換に直結する新規製品・サービスの創出やビジネスモデルの変革等に関連するAIテーマ(同社では「バリューアップ型AIテーマ」と定義)を対象に提供している。

◆ 事業モデル
カスタムAIサービスでは、最先端の機械学習技術を応用してAIソリューション設計とコンサルティングを行う同社の「ソリューションデザイナ」と機械学習エンジニアが協働し、顧客企業のメンバーとプロジェクトチームを組み、事業変革の企画構想、AIソリューションの要件定義から開発・PoC注1、導入・実装、継続的な再学習・チューニングまでを一気通貫で提供している。

ソリューションデザイナと機械学習エンジニアは合わせて約40名の体制となっている。ソリューションデザイナは、コンサルティングファームでのコンサルタント経験者、システムインテグレータでのITシステムの開発経験者、データサイエンティスト等の専門経験を積んだ人材が多く、理数系のバックグラウンドを持つ人材も多い。

AIシステムの開発やPoCは同社のサーバ等の設備で行うことが多く、AIシステムの実装は、顧客のサーバ等の設備に行われる。一部のプロジェクトではAIシステムの運用をストック型の課金で行っているが、収益の太宗は、カスタムAIプロジェクトからのフロー型収益となっている。

顧客企業との契約は、成果物の納入を伴う成果完成型準委任契約となることが多く、プロジェクトに従事するソリューションデザイナ、機械学習エンジニアの体制に応じた報酬を収益として進行基準に基づき計上している。費用としてはソリューションデザイナと機械学習エンジニアの人件費が大きいが、プロジェクトに従事している部分は売上原価に、それ以外の部分は販売費及び一般管理費(以下、販管費)に計上される。

新製品・新サービスの開発等では、プロジェクトは数年の長期に亘るものがあるが、33~6カ月程度の期間でフェーズを区切って契約を行い、売上代金の回収を行っている。

◆ バリュー・マイニング事業とバリュー・ディストリビューション事業
同社の事業は、カスタムAIソリューション事業の単一セグメントであるが、カスタムAI提供の形態として「バリュー・マイニング事業(以下、VM事業)」と「バリュー・ディストリビューション事業(以下、VD事業)の2つを展開している。売上構成比ではVM事業が約8割、VD事業が約2割となっている。

VM事業では、先例のないAIテーマに関して一からソリューションを構築する形でAI開発・コンサルティングを行う。VD事業では、先行事例で蓄積されたノウハウや技術プラットフォーム等の資産を利用し、効率的・スピーディな形でAI開発・コンサルティングを行う。VD事業においても顧客ごとのカスタムAIの開発・提供となる。

蓄積されたノウハウとしては、特定用途向けの各種ソリューションがある(図表11)。ソリューションは、主要なAIアルゴリズムやシステムアーキテクチャの設計、技術検証や事業検証を行うために参照可能なプログラムソースコードや開発及びコンサルティングの方法論をまとめたものである。

技術プラットフォームとしては、ハードウェア一体型基盤とAI開発フレームワークがある。ハードウェア一体型基盤としては、カスタムAI搭載カメラソリューションの「L Vision」がある。これはカメラに顧客毎のAI開発・導入内容に応じたソフトウェアを開発し搭載するものである。AI開発フレームワークは、繰り返し使う基礎機能やプログラムソースコードの基本テンプレートを一つにまとめ、開発者を支援するツール・開発環境として整備したもので、現時点では、オープンソースの深層強化学習フレームワークとして「Border」を提供している。

VM事業からVD事業への展開事例としては、大林組(1802東証プライム)と開発した強化学習AIによる建物の揺れ制御技術を、半導体製造装置の揺れ制御に応用したケース等が挙げられる。

◆ 主要販売先
主要販売先は、業種、AI適用事例とも多岐に亘っている(図表2)。味の素(2802東証プライム)向け売上は、「勝ち飯®AI」アプリの開発に関するものである。味の素がトップアスリートの支援で得たノウハウを活かし、食事によるパフォーマンス向上を目指す一般のアスリート向けに、入力したデータからパーソナライズされた献立提案を行うアプリである。ソニーセミコンダクタソリューションズ(神奈川県厚木市)とSCREENアドバンストシステムソリューションズ(京都市上京区)向け売上は、半導体製造に関連するプロジェクトである。エン・ジャパン(4849東証プライム)向け売上は、人材のマッチングに関するプロジェクトである。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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