日米株価が堅調:ハードルを乗り越えたのか?

2023/06/12 <>

米国のリスクが和らぐ

金融市場は、いくつかのハードル(障害)を乗り越えたように見えます。実際、米国の大きなリスクはひとまず和らいでいます。そうしたことから、米国株や、それに影響されやすい日本株は、最近堅調です。

6月上旬には米国政府の債務上限が適用停止(事実上の上限引上げ)となり、債務不履行が回避されました。また、3月以降に広がった米銀の経営危機については、最近1か月ほどはあまり話題になっていません。いずれの問題も金融危機となり得るリスクと警戒されただけに、それらの緩和は大きな朗報です。

AIブームによる株高

さらに米国では、雇用の底堅さなどを受け、深いリセッション(景気後退)への懸念が和らいでいます。それに伴い、企業業績はさほど悪化しない、といった観測が、足元の米国株を支える一因となっています。

とりわけ期待が大きいのは、主要なテクノロジー企業に関してです。米国の株式市場では、時価総額ベースで、そうした企業の株式が大きな割合を占めています。そして今年は、AI(人工知能)ブームも寄与し、半導体などのテクノロジーに関連する株価が大幅高となり(図表1)、米国株の上昇を主導しています。

日本企業に対する期待

米国株以上に上昇が顕著なのは、日本株です。日経平均株価は先週、3万2千円台に乗せ、バブル後の高値を更新しました(図表2)。これについては米国のリスク緩和に加え、日本株に特有の理由もあります。

中でも、日本企業が株主重視姿勢を強める、との期待が、海外投資家の間で広がっています。東京証券取引所の要請などに応じ、株主資本を効率的に用いる経営に傾斜する、といった期待です。また、今年は中国経済の正常化が期待される中、それにより恩恵を受ける日本企業の株式を買う、という動きも広がりました。

米国株における留意点

以上のことを踏まえると、米国株、日本株とも、一層の上昇を期待できるかもしれません。ただ、それらの株高を支えるストーリーやテーマは盤石とは言い切れず、投資熱が冷めるリスクにも留意すべきでしょう。

米国株については、AI関連企業の業績が今後失望を呼ぶかもしれません。AIが世界の経済や社会に及ぼす影響は、まだ極めて不確実であり、今は期待が先行し過ぎています。さらに、米国景気が底堅いことは、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めを長引かせる可能性があり、それは米国株を圧迫しかねません。

日本株の高いハードル

日本株に関しては、主要企業の株主重視姿勢が本当に強まり続けるのか、定かでありません。また、中国景気は足元、失速気味であることなどから、日本企業の業績は今後、期待外れとなる可能性があるでしょう。

最大の問題は、国民が日本株投資を積極化するか、です。それが盛り上がれば、株高は持続的なものになり得ます。ただし、それらのためには我々国民が、日本経済の成長性に希望を持つことが必要です。つまり、日本経済は衰退するという見方こそが日本株の最も高いハードルであり、これを乗り越えねばなりません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会