中国株の強さは「ホンモノ」か

2020/07/10

今週の国内株市場ですが、週初7月6日(月)の日経平均は大きく上昇しました。先週末終値比で400円を超える上昇幅となり、先週に下回ってしまった25日移動平均線上を回復したほか、直近高値も超えてきたため、市場のムードが強気に傾いたかと思われましたが、その後は上値を伸ばせず、引き続き方向感に欠ける展開のままとなっています。

 

こうした週初の株価上昇は、中国株市場の上昇基調がきっかけです。上海総合指数は7月に入ってから上昇が一気に加速、6月末の2,984pから7月8日(水)の高値3,421pまで駆け上がっていきました。わずか6営業日で14.6%の上昇率ですのでかなりの急上昇ですし、株価水準についても、コロナ前の高値(2020年1月14日の3,127p)をあっさり超え、2018年2月以来の3,400p台となっています。

 

では、中国株の上昇要因はどこにあるかと問われると、いまいちハッキリしません。確かに、6月末から7月あたまにかけて発表された製造業PMI(購買担当者景気指数)が改善を示したことが株価上昇の口火を切ったわけですが、その後の上値トライについては、「金融面での規制緩和や改革が進む」とか、「感染再拡大が懸念される海外に比べて中国は抑制のコントロールが効いており、今後も順調に経済が回復する」、「香港に上場している中国大手企業の一部が上海への重複上場を計画しており、資金流入が期待できる」、「米大統領選を前に米中対立が激化しない」など、その見方は様々です。

 

その中でも可能性が高いとされるのは、中国の機関紙(中国証券報)が株式相場の上昇を歓迎する旨を報じたことです。中国証券報とは、国営通信社である新華通信が発行している証券専門紙で、中国当局の意向が記事に反映されやすい媒体です。つまり、「中国当局が株高を容認、もしくは株高にしようとしている」という意図を読み取った投資家の買いによる面が大きいと思われます。

 

いわば、演出された株高と考えることもできるため、足元の中国株の急上昇に対しては、注意する必要がありそうです。中国当局の意向がある以上、簡単に株価が下がるとは思えませんが、中国国内におけるコロナ感染の本当の状況や、大雨被害の拡大懸念、先日成立・施行された「香港国家安全維持法」の影響とそれに伴う米中関係の悪化など、中国を取り巻く環境は良好ではないのも確かです。

 

そもそも、上海総合指数が乗せてきた3,400pの株価水準は、制裁関税など米中関係が本格的に悪化する前の水準です。当時と足元の状況を冷静に比べても、足元の株価上昇はかなり違和感があると言えそうです。

 

 

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