ブリッジレポ―ト:(3559)ピ―バンドットコム 提携によるEMS事業進出の動向

2019/10/03

 

 

田坂 正樹 社長

株式会社ピーバンドットコム(3559)

 

企業情報

市場

東証マザーズ

業種

卸売業(商業)

代表取締役社長

田坂 正樹

所在地

東京都千代田区五番町14 五番町光ビル4F

決算月

3月末日

HP

https://www.p-ban.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,219円

2,238,107株

2,728百万円

25.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

未定

95.57円

12.8倍

458.96円

2.7倍

*株価は9/19終値。発行済株式数、DPS、EPSは2020年3月期第1四半期決算短信より。ROE、BPSは2019年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

1,717

59

67

61

30.18

2017年3月(実)

1,830

230

220

159

77.66

2018年3月(実)

1,995

286

290

221

101.10

10.00

2019年3月(実)

2,106

297

300

236

106.84

10.00

2020年3月(予)

2,200

269

297

213

95.57

未定

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

株式会社ピーバンドットコムの会社概要、業績動向、田坂社長へのインタビュー等をご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.業績動向
3.成長戦略
4.田坂社長に聞く
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • あらゆる電子機器に使用されているプリント基板のEコマースサイト「P板.com(ピーバンドットコム)」を運営。ユーザーは従来の購買方法に比べ、手軽かつ低コストでプリント基板を調達することができる。安定した顧客基盤、強力な競争優位性、収益性の高いビジネスモデルなどが強み。国内プリント基板市場における市場シェアは1%以下と成長余地は大。IoT、ロボット、宇宙、EV・自動運転など成長分野の需要を取り込み更なる成長を追求している。 
  • 2020年3月期の売上高は前期比4.4%増の22億円、営業利益は同9.3%減の2億69百万円の予想。プリント基板国内生産額は堅調な推移を見込む。中長期的な売上、利益の拡大を見据え、業務提携したSwissmic社との共同開発システムリリース、新オフィス移転、広告宣伝強化など先行投資を実施する。配当は現時点では未定だが、上場1年目より2期連続で 10円/株の配当を実施している。 
  • 今後の成長戦略は、「シェア拡大のための顧客満足ホイールの加速」、「AI技術導入によるワンストップソリューションの拡大」、「事業領域の更なる拡大」、「成長領域への参入」など。前期のSwissmic社とのシステム共同開発着手に続き、今期もジェネシスホールディングスとの業務提携によるEMS事業進出、5Gで需要拡大する超高多層基板の受付開始と、積極的に施策を打ち出している。 
  • 田坂社長に、自社の競争優位性、今後の成長戦略と課題、株主・投資家へのメッセージを伺った。「まだまだ事業規模は小さく、プリント基板におけるシェアも0.3%程度と低い当社ですが、逆に大きな成長余地を残していると考えています。安定した事業基盤の上で売上2桁成長、経常利益率15%の高収益企業を目指してまいりますので、是非株主や投資家の皆様には中長期の視点で当社を応援していただきたいと思います」とのことだ。 
  • 田坂社長が指摘しているように、株取引の世界でインターネット取引が圧倒的な主役となったように、現在はまだ小規模なプリント基板のEコマースではあるが、電気・情報関連機器製造業のEC化率は53.5%と既に5割を超えていることからも、今後のメインストリームとなる可能性は大きいと思われる。 
  • 一方、その実現には大企業にとってもインセンティブのある起爆剤、トリガーとなる革新的なサービスが必要だ。Swissmic社とのアライアンスに基づくAI技術導入はその第一歩となるのだろう。また試作から完成品まで電子機器開発行程のすべてをサポートするEMS事業への参入も、従来にはない同社ならではの付加価値を提供して大企業の利用に繋がる可能性もあろう。今期は投資フェーズのため減益予想であるが、中長期の視点で前期、今期に打ち出した施策の進捗およびこれからの新たな打ち手を注目していきたい。 

1.会社概要

PC、スマートフォン、サーバ、医療機器、産業ロボット、自動車、航空機など、あらゆる電子機器に使用されているプリント基板のEコマースサイト「P板.com(ピーバンドットコム)」を運営。ユーザーは従来の購買方法に比べ、手軽かつ低コストでプリント基板を調達することができる。
登録ユーザー数約5.4万、アクティブユーザー数は約2.5万。安定した顧客基盤、強力な競争優位性、収益性の高いビジネスモデルなどが強み。
国内プリント基板市場における市場シェアは1%以下と成長余地は大。IoT、ロボット、宇宙、EV・自動運転など成長分野の需要を取り込み更なる成長を追求している。

 

【1-1 沿革】

同社社長 田坂 正樹氏は、FA・金型部品の専門商社ミスミ(現:(株)ミスミグループ本社、9962、東証1部)在籍時、リーダーとして半導体やプリント基板のeコマース事業立ち上げに取り組んだ後、同社を退社。2002年4月に株式会社インフローを設立し、インターネット関連ビジネスを手掛けていた。
そうした中、ミスミが新規事業から撤退し本業へ回帰することとなった。プリント基板のeコマース事業に大きな成長可能性を感じていた田坂氏は自ら取り組むこととし、2003年4月、プリント基板ネット通販サイト「P板.com」の運営を本格的に開始した。

 

2004年5月にはプリント基板のパターン設計CAD「CADLUS X」を無料で配布。これをきっかけに、同社サービスに対する認知度や関心が急速に高まり発注が急増。当初の製造サービスに加え、2004年11月に設計サービス、2005年12月には部品実装サービスを開始し、ユーザーのニーズを着実に取り込んで業容は着実に拡大していった。
リーマンショックの影響はあったものの、逆にそれを機にユーザーのプリント基板調達コストの削減ニーズが本格的に高まったため、同社サービスの利用は一段と増大していく。
2012年6月には、株式会社ピーバンドットコムに社名を変更。
筐体・パーツ製造サービスやハーネス加工サービスなどサービス内容の充実を進めるとともに、顧客業界も通信、半導体にとどまらず自動車、医療機器などへ広がり業容は拡大。
2017年3月、東証マザーズに上場した。

 

【1-2 経営理念・行動規範】

経営スローガンは「開発環境をイノベーションする」。
「テクノロジーを進歩させることで、社会問題解決を進める技術と製品を生み出し、人類の平和と繁栄を創り出す」ことを目指している。
このスローガンの下、電子機器産業エンジニアが抱える様々な課題を解決するために、電子機器の根幹を支えるプリント基板のEコマースを軸として、事業展開を行っている。

 

この経営スローガンを実践するために、3つの経営理念を掲げている。

新しいアイディアを行動力で形にし、ユーザーをわくわくさせ、自分たちもわくわくする。
世の中にないシンプルでわかりやすい仕組みを構築し、ユーザー(社会)のより良い開発環境提供に貢献する。
お互いを信頼し、同じ志の仲間と共に成長しながら、持てる能力を最大限に生かして活躍し、物心両面の幸せを追求する。

 

また以下の行動規範を定め、行動のベクトル統一とパフォーマンスの向上を図っている。

人生・仕事の結果=考え方(方向)×やる気(力)×能力(力)
常に熱く率直で前向きに、自ら考えを迅速に行動し責任をもって成果を出す
誠実で素直な気持ちと感謝の心とユーモア、思うやりと協調性を持つ
努力を惜しまず、成果はみんなで分かち合う

 

【1-3 事業環境】

①市場環境
◎プリント基板とは?
(概要)
プリント基板は、ICや抵抗、コンデンサなどと同様に、電子機器のための重要な電子部品の一つ。
PC、スマートフォン、サーバ、医療機器、産業ロボット、自動車、航空機に至るまで、あらゆる電子機器において使用されている。

 

(同社資料より)

 

プリント基板は、絶縁体の基板上や内部に導体の配線のみが施され、電子部品が取り付けられていない状態のプリント配線板と、電子部品がはんだ付けされて、電子回路として動作するようになった状態のプリント回路板の双方を指す総称。
プリント基板が実用化され始めたのは1950年頃で、それ以前は部品をシャーシやラグ端子板に固定、または空中に浮かせるなどして、部品を絶縁された線ではんだ付けして、接続していた。
プリント基板の実用化により電子機器製造は飛躍的に合理化され、大量生産が可能となり、製品の品質も安定するようになった。

 

(同社ウェブサイトより)

 

(機能と役割)
回路を構成する電子部品同士の電気的な接続と、絶縁、部品の機械的な配置、固定を行う。
電気的な接続の役割としては、信号を伝える「信号伝送」と電力を送る「電力伝送」がある。
コピー性の高さから量産時には生産性の向上を実現するため、電子機器の高速化・高密度化が進む中、その心臓部となるプリント基板の重要性は一段と増している。
ウェアラブルデバイスなどの小型IoT機器の普及により、さらなる高密度化が求められるようになるとともに、プリント基板の多様化も求められている。
また、プリント基板はオーダメイドで、一点一点の仕様や意匠が異なる精密部品である。、後述するが、この点が従来の調達方法よりもEコマースサイト「P板.com」がユーザーの支持を受ける大きな要因となっている。

 

(種類)
プリント基板は、配線板に用いられる素材・材質によって硬度の高いリジッド基板と柔らかく折り曲げることができるフレキシブル基板がある。
基板の材質により、加工度、耐久性、絶縁性、耐熱性、価格などが異なり、用途によって最適な材質が用いられる。
また、配線の実装方法等によって下記のように様々な種類のプリント基板があり、こちらでも用途に応じたプリント基板が使用される。

 

種類

特徴

片面基板 片側に配線の印刷や電子部品の実装が施されている。配線が1平面にあるため、配線が交差するような複雑な回路を構成することはできないが、コストを低く抑えることができる。
両面基板 両面に配線の印刷や電子部品の実装が施されている。両面の配線で立体交差が可能なため、片面板に比べより密度の高い配線をすることができる。
多層基板 内部にも配線する層を形成し、プリプレグという接着シートで必要数を積層接着し、1枚の板にしたもの。
フレキシブル基板 ポリイミドなどのフレキシブル性のある材料を用いることで、柔軟性を持たせている。折り曲げる必要がある箇所や、可動部との接続に使われる。
ビルドアップ基板 コアとなる多層プリント配線板の上に絶縁層をつくり、その表面に導体パターンをつくる。このパターンと、絶縁層にビアと呼ぶ微細な穴をあけ、めっきで接続。これを繰り返して、幾層もの導体層と絶縁層を積み上げる。
厚銅基板(大電流基板) 大電流を扱う機器である工場の配電盤、工作機械、産業機械、自動車、電車、ロボットなどに用いられる。

 

◎プリント基板市場
プリント基板はあらゆる電子機器において使用されており、既存のエレクトロニクス産業の需要に加え、近年はIoTや宇宙関連開発、EV、ロボット産業等の広がりに伴い、需要は増加傾向にある。
2021年までの生産予測では、IoT・ウェアラブル機器等に必要な軽薄短小を可能とする多層基板(ビルドアップ基板)や、LED照明など高放熱性が必要なメタル基板の需要が拡大すると見込まれている。

 

 

2018

2019(計画)

2020(計画)

2021(計画)

CAGR

片面

146.4

146.1

148.1

147.3

+0.2%

両面

927.6

942.2

931.3

958.3

+1.1%

多層

2,063.6

2,186.9

2,285.5

2,383.2

+4.9%

フレキシブル

656.1

598.4

590.0

588.0

-3.6%

メタルコア

126.4

176.0

190.6

202.9

+17.1%

モジュール基板

2,289.5

2,350.7

2,499.2

2,629.7

+4.7%

合計

6,209.6

6,400.3

6,644.7

6,909.4

+3.6%

*単位:億円。出展:日本電子回路工業会。ピーバンドットコム社資料を基にインベストメントブリッジ作成。

 

 

◎成長続けるEC市場
経済産業省「電子商取引実態調査」(平成30年度版公表2019年5月16日)によれば、2018年の国内BtoB-EC市場規模は約344兆円でEC化率は30.2%。
このうち、電子部品・デバイス製造業を含む電気・情報関連機器製造業の市場規模は36兆円でEC化率は53.5%である。
2006年以降、リーマンショック、東日本大震災の影響で市場は2度シュリンクしたが、その後回復に向かい2018年は直近のピークである2007年の35兆円を超えた。また市場規模の拡大と共にEC化率も着実に上昇している。
同社Eコマースサイト「P板.com」もこうしたトレンドの中で引き続き成長が見込まれる。

 

 

②同業他社
同社はプリント基板メーカーではないが、「ユーザーがプリント基板を調達」するにあたっての競合は国内外のプリント基板メーカーとなる。(一方でプリント基板メーカーが同社の仕入先となっているケースもある)
同社は、Eコマースによってユーザーに手ごろな価格で顧客のニーズに合わせて上質なサービスを提供し、既存プリント基板メーカーでは困難な顧客満足度を実現している。

 

(同社資料より)

 

【1-4 事業内容】

Eコマースを利用して、プリント基板を、国内の産業用機器および民生機器開発メーカー等の顧客に販売している。
その他、エンジニア向け技術情報サイト「@ele」の運営、エンジニアの登竜門「GUGENコンテスト」の運営等も行っている。

 

(1)プリント基板のEコマース「P板.com」
中心事業が、プリント基板のEコマース「P板.com」の運営である。

 

①発注から納品の流れ
「P板.com」では、顧客がWebサイト上で選択した基板の仕様に合わせ、国内又は海外の提携仕入先の中から最適な価格・納期・品質で製造できる工場を自動選定し、納期の長短による4つのコースに合わせた見積金額を提示する。

 

顧客は提示された見積・納期の中から選択し、設計図をアップロードするだけでプリント基板を注文することができる。
同社では、顧客から提示された基板の設計図をカスタマーサポート部で確認した後、ただちに、提携仕入先へ自社システム上より発注を行う。
工場では、通常2、3日以内に製造が完了し、顧客の手元に届けられる。

 

(同社資料より)

 

<従来サービスとの違い>
一般に、プリント基板はオーダメイドで、一点一点の仕様や意匠が異なる精密部品であるため、ユーザーがプリント基板を調達しようとすれば、「プリント基板メーカーに問合せ、メーカーの営業マンと対面で交渉し見積の提示を受けた後、発注・納品」というプロセスが必要とされてきた。
ただ、この場合、ユーザーは「定価がなく、メーカーの言い値で発注せざるを得ない」、「試作を何度も繰り返す必要があり高額なイニシャル費用が掛かる」、「納期が不安定」といった課題が避けられない。

 

これに対してEコマース「P板.com」を利用すれば、同社が最適な価格・納期・品質で製造できる工場を自動選定してくれるため、「仕様で価格・納期が決まる」、「イニシャル費用が無料」、「1枚から注文可能」など、上記の課題を解決し、ユーザーは極めて高い満足度を得ることができる。

 

(同社資料より)

 

②サービス内容
具体的には以下のように、「設計」、「製造」、「部品実装」などのサービスで構成されている。

サービス

概要

設計 顧客から支給される「電気信号の流れを表した回路図」に基づき、基板を製造するためのデータを、CADソフトによって設計する。
製造 顧客から支給される基板製造用データ又は同社の設計サービスにより設計した基板製造用データに基づき、基板を製造する。事業の主力部分である。
部品実装 製造した基板に、電子部品を配置し、はんだで接続する。電子部品を同社が調達するオプションの利用が増加している。
その他 基板へ電子部品を実装する際に必要となる専用治具「メタルマスク」の製造、筐体の製造、部品実装済み基板や外部装置などを接続する電線(ハーネス)の加工等も行っている。

 

主力サービス「製造」からスタートした「P板.com」だが、製造サービスの品質に満足したユーザーがプリント基板の作成プロセスである基板設計・基板製造・部品実装をワンストップで利用するケースが増加している。加えて、周辺部材であるメタルマスクやハーネスの売上も着実に拡大している。
ワンストップ利用率は、2018年3月期の21.8%から2019年3月期には22.5%に上昇した。システムの更なる効率化により中期的には50%を目指していく。

 

③ユーザー数
「P板.com」の2019年6月末のユーザー数は53,884ユーザー。
Eコマースを利用した販売形態を採用することにより、従来の対面販売型と比べ基板発注の敷居が下がり、顧客層を広げることができた。大学・高専/研究機関などの公的機関、国内大手セットメーカーやそれを支える電子部品の中堅・中小企業などの法人、さらに個人事業主に至るまで試作開発案件を取り込んでいる。
加えて、「納期遵守の徹底」により5年連続で納期遵守率99%超えを達成したことや、品質の持続的な向上等により信頼度が向上し、大手企業・中堅企業との取引も拡大している。
一方更なるユーザー数拡大のために、「地方展示会出展の強化」、「各種セミナーの積極的な開催」、「専門誌への広告出稿強化」等にも取り組んでいる。
年間に1回以上発注するアクティブユーザーは約2.5万ユーザー。
持続的な成長のために後述する戦略により、登録ユーザー数及びアクティブユーザー数の持続的な拡大を図っている。

 

 

④仕入先
仕入先については、1社に依存すること無く、国内外の約30社の仕入先と提携することで、安定した製品の供給と、顧客の要求に沿ったより競争力のある商品を提供している。
仕入先とは、信頼と実績に基づき、低価格で高品質の商品を納期通りに提供してもらえるように長期にわたり安定した取引関係を築くことを基本としている。
ただ、プリント基板の市場価格の変動を念頭に入れたうえで、求められる品質基準の向上、納期の短縮化を常に心掛けている。
加えて、これまでに培ったノウハウを仕入先に横展開し、より競争力ある商品の供給を受けることもユーザーに対する自社の重要な役割であると考えている。
新規仕入先開拓については、同社の認知度向上や取扱いボリュームの拡大に伴い、先方からの引き合いも増加しているということだ。

 

⑤「P板.com」の特徴
◎試作開発に特化した新しい料金体系の提示
新製品の開発には試作(プロトタイプの作成)が必要不可欠だが、一般的にそのためのプリント基板の作製には高額な初期費用が発生する。また、試作は1回だけでなく、2回3回と繰り返しながら製品に磨きを掛けるのが通常であり、その都度初期費用が発生することは、限られた開発コストを圧迫することになり、開発における大きな課題の一つであった。

 

そこで同社では、「異種面付工法」(※)という手法を開発。初期費用を大幅に低減した上で、基板製造費用に全てを含めた料金体系を提示し、それまでの一般的なプリント基板製造の相場から大幅に安く提供を行うことで実績を積み上げてきた。

 

※ 異種面付工法:定格サイズ(4~5m四方)の材料で一種類の基板のみを製造する従来の方法に対し、複数種類の基板を共に製造する工法。材料を余すこと無く使用でき、試作等で少量の基板が必要な場合に有用である。

 

◎効率的な受発注管理の仕組み化
「P板.com」では、受発注管理を効率化し、顧客から注文を受け製造・仕入・出荷まで、すべて自社システム内で完結させることで効率化を実現している。
前述のように、電子機器の根幹を支える「プリント基板」は一点ごとに意匠の異なるオーダーメイド製品だが、基板を構成する部品は規格化されたものであることから、同社では基板仕様を汎用標準化して顧客が希望するプリント基板をインターネット上で直販する仕組みを構築。仕入・発送まで大幅にスピードアップして、商品を迅速にエンドユーザーに届けている。
商品の仕入・販売に関しては、店舗・営業所を保有せず、顧客からの受注機能、仕入商品の発注機能、商品の入出荷管理機能及び電話による顧客サポート機能を本社に集約している。

 

◎利便性の高い見積・注文システムの構築
製品の開発・研究を行う企業においては、購買に時間をかけることなく商品を仕入れることが重要視される傾向にある。
オーダーメイド品であるプリント基板は、製造を依頼するプロセスに基板製造業者との対面でのやりとりが不可欠であったため、見積取得にも時間が掛かり、また人を介すことで費用も高く提示されていた。

 

そうした状況に対し同社は、インターネット環境があれば、いつでもどこでも瞬時に見積が取得出来る「1-Click見積」システムをWEBサイト上に設置し、エンジニアが製品開発時に感じる見積取得の煩わしさを解消した。
また、2018年12月に業務提携したAIによる製造プロセスの効率化を得意とするSwissmic SA(本社:スイス)との共同開発により、更なるシステム効率化・利便性の飛躍的向上を目指している。

 

◎取扱い商材の拡大
プリント基板の中でも、取扱いやすさから様々な製品に採用されているリジッド基板を主軸として、フレキシブル基板、アルミ基板、リジット・フレキシブル基板などの商材を取り扱っている。
近年では、LED照明等に使われるアルミ基板、EV・ロボットなど大電流制御の用途で使われる厚銅基板の需要拡大に合わせ、ラインアップの充実を図っている。また前述のように、プリント基板の周辺商材であるメタルマスク、筐体、ハーネス等も取扱っており、売上拡大に結び付けている。

 

(2)エンジニア向け技術情報サイト「@ele」の運営
IoTの広がりに伴い、IT・エレクトロニクス業界のみならず、異業種による電子機器の開発需要が増えているため、エンジニアに向けた技術情報サイト「@ele(アットマーク・エレ)」を運営し、主に若手エンジニア育成を支援している。
プリント基板を扱う技術者のすそ野を広げるためのインフラ整備との位置づけであり、専門的な情報を配信することで、同社への信頼度を向上させるともに、同社サービスの広報活動も平行して行い、サービス利用拡大に繋げている。

 

(3)エンジニアの登竜門「GUGENコンテスト」の運営
同社では電子機器産業の持続的な発展のためには、電気・電子エンジニアの人口拡大が不可欠と考えている。
そのために2009年よりエンジニアにスポット当てた「電子工作コンテスト」を開催し、エンジニア自身が作成した電子工作の作品を一般客やメディアに披露できる場を提供している。
2013年に「GUGEN(ぐげん)」に名称を変更し、「社会における課題を解決するデバイス」と審査基準を改め、世の中に必要とされる作品の開発を業界のエンジニアに促した結果、累計で1,000作品を超える作品が誕生している。
審査員やスポンサーには業界の著名人やスタートアップへの支援企業等を中心に招聘し、いまではエンジニアの登竜門の場として定着している。同社及びサービスの認知度向上のための広報活動ともなっている。

 

【1-5 特長・強み】

(1)安定した顧客基盤と成長産業の需要取り込み
下記のように顧客業種は幅広く分散され、安定した顧客ポートフォリオを構成している。
また、IoT、宇宙開発、EV・自動運転、農業、ロボットなど、新たな成長産業からの受注も拡大している。

 

(同社資料より)

 

(2)強力な競争優位性
同社が2003年に「P板.com」の本格運営を開始し、ビジネスを順調に拡大させていく過程では、当然プリント基板メーカーもEコマースビジネスへの参入を図ってきたが、ほとんどのケースで営業マンによる社内商流とのバッティングにより失敗・撤退したという。企業規模の大きさが足かせになったわけだ。
また、現在でも同業他社が無いわけではないが、登録ユーザー数5万超、アクティブユーザー数約2.5万という規模まで成長した同社にキャッチアップすることは現実的には不可能である。また設計・製造・部品実装という全ての行程をインターネットで完結させていることで顧客に大きな利便性を提供できているのも同社のみである。
こうした参入障壁の高さ、強力な競争優位性も同社の大きな強みである。

 

(3)収益性の高いビジネスモデル
同社の社員数は2019年7月末で31名(うち正社員25名)。
少人数による収益性の高い経営を目指して、2020年3月期は業務効率化や新規顧客獲得のための先行投資を実施している。
経営指標として1人当たり営業利益を重視しており、前期の13百万円/人から、今期はこれら投資のため11百万円/人に低下するが、来期以降は増加を見込んでいる。

 

【1-6 ROE分析】

 

17/3期

18/3期

19/3期

ROE(%)

41.7

32.3

25.9

 売上高当期純利益率(%)

8.69%

11.10%

11.21%

 総資産回転率(回)

2.64

1.94

1.67

 レバレッジ(倍)

1.82

1.50

1.38

 

収益性の高いビジネスモデルを構築しており、高水準のマージンをベースに高ROEを継続している。
今期の予想売上高当期純利益率は9.7%と前期を下回る見込みだが、引続き高いROEを実現することとなろう。

 

 

2.業績動向

(1)2020年3月期第1四半期決算概要

①業績動向

 

19/3月期1Q

構成比

20/3月期1Q

構成比

前年同期比

売上高

482

100.0%

478

100.0%

-0.9%

売上総利益

170

35.3%

165

34.7%

-2.8%

販管費

101

21.1%

110

23.1%

+8.3%

営業利益

68

14.2%

55

11.6%

-19.4%

経常利益

68

14.1%

55

11.7%

-18.1%

四半期純利益

47

9.8%

38

8.0%

-18.5%

*単位:百万円。

 

売上は前期並み、投資先行で減益
売上高は前年同期比0.9%減の4億78百万円。米中間の貿易摩擦問題の影響により2019年1-5月累計の国内電子工業生産額は前年同期間比10.5%減少。同社の取扱う電子回路基板の国内生産額も同7.2%減と弱含みで推移した。
減収とはなったが、同社顧客は特定業界に偏りがないことに加え、新規成長産業の需要を取り込んでいるため米中間の通商問題による売上への影響は軽微と会社側は考えている。
営業利益は同19.4%減の55百万円。収益力強化のための投資が先行し減益となった。

 

第1四半期の業績は軟調だったが、第1四半期の新規登録ユーザー数は1,165名で前年同期の934名を大きく上回った。
第1四半期末の登録ユーザー数は前年同期比9.4%増の53,884名と順調に拡大している。
地方展示会出展の強化、各種セミナーの積極的な展開、専門誌への広告強化などにより多様な業界のユーザーが着実に増加している。

 

 

②財務状態
◎主要BS

 

19年3月末

19年6月末

 

19年3月末

19年6月末

流動資産

1,195

1,129

流動負債

339

263

 現預金

816

890

 仕入債務

197

181

 売上債権

339

217

固定負債

10

11

 商品

33

12

負債合計

350

274

固定資産

183

188

純資産

1,027

1,043

 有形固定資産

3

12

負債純資産合計

1,378

1,318

 無形固定資産

27

31

     

 投資その他の資産

152

144

     

資産合計

1,378

1,318

     

*単位:百万円。売上債権は電子記録債権を含む。

 

配当金の支払いや法人税等の支払いで流動資産、資産合計は減少。有形固定資産の増加は本社移転による。
法人税等の支払いで負債は減少。
利益剰余金の増加で純資産は増加。
自己資本比率は前期末から4.6ポイント上昇し79.1%となった。

 

(2)2020年3月期業績見通し

①業績予想

 

19/3月期

構成比

20/3月期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

2,106

100.0%

2,200

100.0%

+4.4%

21.7%

売上総利益

735

34.9%

766

34.8%

+4.1%

21.5%

販管費

438

20.8%

496

22.5%

+13.1%

22.2%

営業利益

297

14.1%

269

12.2%

-9.3%

20.4%

経常利益

300

14.2%

272

12.4%

-9.1%

20.2%

当期純利益

236

11.2%

213

9.7%

-9.4%

17.8%

*単位:百万円。

 

中長期的な売上および利益の拡大を見据えた先行投資を実施
売上高は前期比4.4%増の22億円、営業利益は同9.3%減の2億69百万円の予想。
プリント基板国内生産額は堅調な推移を見込む。中長期的な売上、利益拡大を見据え、業務提携したSwissmic社との共同開発システムのリリース、 新オフィス移転、広告宣伝強化など先行投資を実施する。
配当は現時点では未定だが、上場1年目より2018年3月期、2019年3月期と2期連続で10円/株の配当を実施している。

 

②トピックス
◎東京証券取引所本則市場への変更に向けた作業に着手
2019年8月、東京証券取引所本則市場への変更を目指す方針を決定し、市場変更申請に向けた作業に着手した。
これに併せて、株主数確保および流動性の向上等、市場変更の形式要件充足を目的の一つとした株式分割及び立会外分売を行うこととした。

 

(株式分割)
2019年10月1日を効力発生日として1:2の株式分割を実施予定。

 

(立会外分売)
2019年8月23日、株数11万株、分売値段1,069円で実施した。

 

3.成長戦略

同社は中長期的な視野で「売上高2桁成長、経常利益率15%」の高収益企業への成長を目指している。
そのための施策、取り組みとして「シェア拡大のための顧客満足ホイールの加速」、「AI技術導入によるワンストップソリューションの拡大」、「事業領域の更なる拡大」、「成長領域への参入」などを挙げている。

 

(1)シェア拡大のための顧客満足ホイールの加速

【1-2 市場環境】にあるように、国内の電子回路基板生産金額は約6,500億円。
これに対し同社の売上高は今期予想で22億円であり、シェアは0.3%程度に過ぎない。
この市場シェアを拡大させるため、同社では以下のような「認知」、「育成」、「購入」、「ファン化」から成る顧客満足ホイールを加速させる必要があると考えている。

 

(同社資料より)

 

<各サイクルにおける具体的な施策>

①認知 潜在顧客にP板.comというサービスの存在を知ってもらい、無料会員に登録してもらう。

GoogleやYahoo!などの検索エンジンにおいて、「検索エンジン最適化」、「リスティング広告」への出稿のほか、業界専門誌への定期的な広告出稿、電子機器産業業界の展示会への出展などを行っている。

また、エンジニア向け技術情報サイト「@ele」の運営やエンジニアの登竜門「GUGENコンテスト」の運営も重要な認知度向上のツールである。

②育成 会員登録してくれたリード顧客向けに、「P板.com」を有効活用する為のサービス導入セミナー(無料)や、プリント基板の製造依頼に必要となるデータ作成ソフト「基板設計CA」の無料講習会を実施している。

インターネットでの注文に不安を抱いている顧客に対しては対面の窓口「基板コンシェル」も用意している。

リード顧客の会社に訪問してのサービス導入セミナーも実施している。

2019年3月期のセミナー開催数は約50回。

③購入 基板仕様を汎用標準化し、初心者でも簡単に仕様の選択ができるよう分かりやすく視覚的に表示し、瞬時に見積り回答される「1-Click見積システム」を構築した。見積りから注文、納品までインターネットで完結できる仕組みで、顧客に注文しやすいユーザービリティを追求している。
④ファン化 購入してくれた顧客に対しては、プリント基板に関する専門知識の啓蒙を目的とし、設計・製造・実装のノウハウを解説する技術セミナーの無料開催や、基板のQ&Aを動画で提供する「目からウロコ!のQ&A便」の配信、WEBサイト上での技術コンテンツページの作成などを行っている。

ものづくりにおける現場独自のノウハウは財産であるという考えで外部に公開しないメーカーが多い中、同社は情報をオープンにすることで、顧客との接点拡大、信頼度の向上を図り、ファン化を促進し継続購入に結び付けている。

 

各種セミナー開催といったリアルでのサポートの他、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の継続的な改善、クーポンの発行など、Eコマースにおけるユーザビリティ向上のための定番施策をきめ細かく行って、同社サイトへの誘導・利用を拡大させている。
また、高品質の基板を納期どおりに、確実に届けることで、しっかりしたEコマースだと評価してもらうこともファン化の重要なポイントであると考えている。

 

(2)AI技術導入によるワンストップソリューションの拡大:Swissmic社と革新的システムを共同開発

上記の顧客満足サイクルを加速させるためには各ステップにおけるきめ細かい施策の他、調達プロセスの徹底的な効率化が重要であると考えている同社は、2018年12月、ハードウェア製造のシステム開発企業であるSwissmic SAと業務提携を結びAIを活用した従来にはない革新的システムの共同開発に乗り出した。

 

①Swissmic SA概要
本社はスイス・ローザンヌ。代表者はYujia Zhai氏。
2014年に創業したスタートアップ企業で、中国では北京にシステム開発拠点、深圳に生産拠点を有する。
中国ではプリント基板の製造・実装の需要が年々高まっているが、同社は製造工程の合理化に大きな需要があることに着目し、AIを活用したプリント基板の製造工程や部品実装工程を効率化するシステムの開発を主力事業としている。
インダストリー4.0において、Swissmic SAは製造・実装の発注者側、生産を請け負う受注者側、双方が利用できるプラットフォームの開発を目指してきた。創業以来、技術系人員を強化してシステム構築を進めてきたが、2019年はリリース時期となり、開発体力も一段と強化される見込みである。

 

②開発するシステムの概要とP板.comサービスの改善ステップ
AIを駆使することで、ピーバンドットコムの既存システムの利便性を飛躍的に向上させる。
以下3ステップでサービスをブラッシュアップしていく。

 

「ステップ1:AIによる部品調達回答の自動化で、部品調達サービスが「1-Click見積」に対応」
現状の部品調達サービスは、ユーザーからの依頼内容に基づきスタッフが調達の可否を調査しているため、2~3営業日ほど回答に時間を要している。
AIを駆使した新システムでは、複数の部品商社とシステム連携して、WEBサイト上で調達可否と価格を瞬時に表示することができる。また、現行のシステムでは、ユーザーは用意する部品リストをフォーマットへ入力する必要があるが、新システムでは、基板設計CADから出力可能な設計データをアップロードするだけで、全ての部品を判別してそのまま部品調達の依頼を完了させることができる。
システム稼働は2019年半ばを予定している。

 

(同社資料より)

 

「ステップ2:基板製造データのAI自動解析で、データをアップロードするだけで「1-Click見積」が可能」
「1-Click見積」で価格・納期を確認するためには、製造したい基板の仕様を入力する必要がある。
新システムでは、WEBサイト上で基板製造用データをアップロードするだけで、データをAIで自動解析し基板の仕様情報を読込み、見積りを算出することができる。
基板製造サービスだけでなく、部品実装サービスまで同時に確認が可能。例えば、基板の仕様に知見のない購買部のユーザーでも簡単に見積りを確認することができる。
システム稼働は2019年後半を予定している。

 

(同社資料より)

 

「ステップ3:基板製造データのAI自動チェック機能」
現状は、ユーザーから注文があった基板製造用データは、専門スタッフが製造工程で不都合がないかチェックし、問題点があればユーザーへ修正の連絡を行っている。
新システムの開発により、基板製造用データ確認は、AIを活用した自動チェックシステムとなるため、チェック精度の向上や、ユーザーへのチェック結果回答の大幅な時間短縮を見込んでいる。
システム稼働は2020年後半を予定している。

 

④ピーバンドットコムが享受するメリットと今後の展望
今回の開発により、見積もり作成の時間短縮や設計上の問題点の容易な発見など、P板.comサービスの利便性を飛躍的に高めることを目指している。
「ステップ1」では、設計から部品実装にかかる平均日数をこれまでの13日から10日に短縮させることでユーザーの利便性を高め、設計から部品実装まで全てのサービスを利用するワンストップ利用率を22.5%から50%まで引き上げることを目指している。

 

また、新システムの普及による顧客層の更なる拡大の他、社内業務の簡素化と労務関連費用の抑制により同社が重視している一人当たり営業利益の向上にも繋がる。
今後は、両社の培ってきたプリント基板事業のノウハウをさらに融合発展させ、業務提携による革新的なシステムの構築をさらに進めていく考えだ。

 

(3)事業領域の更なる拡大:ジェネシスホールディングスとの業務提携により一括したEMS事業を展開

更なる成長のためには主力の「P板.com」事業の安定的な拡大と共に、事業領域の拡大も不可欠である。

 

2019年9月、IT 機器開発・製造を手掛ける株式会社ジェネシスホールディングスとの業務提携により、EMS (電子機器製造受託サービス)事業を共同で展開することとした。

 

①業務提携締結の背景
ピーバンドットコムは創業時より小ロットのプリント基板製造を得意とし、主に試作開発の用途として 利用実績を積み重ねてきたが、サービスの拡大と品質向上に伴い完成品製造までの依頼も増加中で、製造受託も行ってきた。
そうした実績が拡大する中、ジェネシス社と業務提携し、さらに、同じくIoTデバイスの製造を手掛ける株式会社 Braveridgeの協力により、受託生産体制の強化を図ることとした。

 

②EMS事業展開の狙い
5 万名を超えたユーザー基盤に対し、新しい事業領域を展開することで利用サービスの拡大を目指すとともに、同社サービスをまだ利用していない顧客層の需要取り込みを図る。

 

EMS事業においては、ピーバンドットコムが長年培ってきたオンライン上の受注ノウハウや、ジェネシス社とBraveridge社が持つ深圳および日本国内の製造メリットをはじめとする 3社間のシナジーを最大限に発揮し、各製造案件の最適化や効率的な生産体制を実現する。
また共同で新たな顧客層へのアプローチやニーズの取り込みも目指す。

 

今回の提携によりEMS事業の受託体制を強化し、試作から完成品まで電子機器開発行程のすべてをサポートすることにより、同社のスローガン「開発環境をイノベーションする」の一層の加速を目指していく考えだ。

 

(4)成長領域への参入:5Gで需要拡大する超高多層基板の受付を開始

プリント基板はあらゆる電子機器において使用されており、近年はIoTや宇宙関連開発、EV、ロボット産業等の広がりに伴い、需要は増加傾向にある。
そうした中、2019年9月、「P板.com」において、超高多層基板の受付を開始した。

 

超高多層基板は、主に社会インフラ向け基板として注目されスマートフォンや自動運転などの利用において普及が期待される5G(第5世代移動通信システム)に対応する基地局向けベースバンド基板、IoTの拡大に伴う無線通信とバックプレーン用基板、そしてレーダーなど高速ギガ帯通信用途の基板として用いられる。

 

同社では、ユーザーからの問合わせや市場ニーズのリサーチから、5G普及に伴う今後の需要拡大を見込み、超高多層基板の受付を開始することとした。
6層基板、8層基板を含め、層数、板厚等の高い設計自由度により、最大100層の高多層基板を1枚から、イニシャル費用無料で提供する。

 

今回の超高多層基板の受付開始に先立ち、7月にはメタル放熱基板製造サービスをリリースしている。
今後もこうした高成長領域におけるプリント基板の提供を進めていく。

 

4.田坂社長に聞く

田坂社長に、同社の競争優位性、今後の成長戦略と課題、株主・投資家へのメッセージを伺った。

 

Q:「社長の考える御社の競争優位性、特長・強みはどんな点でしょうか?」
A:「全ての工程をインターネットで完結させることで大きな利便性をお客様に提供できるのは当社のみです。他にも、安定した事業基盤、収益性の高いビジネスモデルなども当社の特徴として是非ご理解いただきたいと思います」

 

プリント基板Eコマースのトップリーダーである当社と後発の他社との最大の違いは、当社はプリント基板の設計から製造、部品実装、周辺部材の購入まで、全ての工程をインターネットで完結できるという点です。
他社は当社サイトの外見や価格などを真似しているにすぎません。本質的な部分、つまりお客様の利便性を高めるための仕組みづくりという点を他社はキャッチアップすることができません。
他には、多くのお客様に支えられた安定した事業基盤、収益性の高いビジネスモデルなども当社の特徴として是非ご理解いただきたいと思います。

 

Q:「今後の成長戦略についてお聞かせください」
A:「主力の「P板.com」サービスをブラッシュアップ。さらに事業領域の拡大、成長領域への参入にも取り組んでいきます」

 

まず主力の「P板.com」サービスをブラッシュアップしていきます。
顧客満足サイクルの各ステップの施策に地道に取り組んで行くと同時に、システムの効率化を究極まで高めていきます。

 

試作用プリント基板の受注からスタートした当社はサービス拡大と品質向上でご評価いただき、お客様の数も受注量も拡大してきましたが、数千台規模の小ロット量産には対応しきれないこともあり、残念ながら取りこぼすケースもありました。
業容をもう一段スケールアップするにはこうした需要を着実に取り込むことが必要でした。
そこでこの課題を克服するためにSwissmic社と業務提携を行い、革新的システムを共同開発することとしました。
両社のノウハウや知見を融合し、AIを駆使することで、既存システムの利便性を飛躍的に向上させて小ロット量産需要も取り込んでいきます。

 

また、更なる成長のため事業領域の拡大にも取り組んでいます。
このたびジェネシス社およびBraveridge社とのアライアンスにより、EMS事業を共同で展開することといたしましたが、今後もアライアンスやM&Aなど様々な手法を活用しながらドメインを広げ、開発環境をイノベーションしていきます。
加えて、5G向けで需要が拡大する超高多層基板のような成長領域へも積極的に参入していきます。

 

Q:「では最後に株主や投資家へのメッセージをお願いいたします」
A:「安定した事業基盤の上で「売上2桁成長、経常利益率15%」の高収益企業を目指してまいりますので、是非株主や投資家の皆様には中長期の視点で当社を応援していただきたいと思います」

 

当社は日本の根幹の産業であるけれども全体としての急成長は望みにくいプリント基板マーケットで、Eコマースという新しいツールを導入して成長してきた会社です。
IT産業というと、直近の様々な事例もあるように、大きく成長もするがダウンサイドリスクも大きいと思われるかもしれませんが、当社の場合は安定した事業基盤を持っている点が大きな特長です。
アクティブユーザーは2万社を超え、業種も分散しています。また一度でも当社のサービスをご利用いただいた多くのお客様はその利便性にご満足いただいており、そのための結果リピート率は7割を超えています。

 

私は、株式取引の主役が対面取引からネット取引に完全に移行したように、プリント基板のマーケットがEコマース中心となる可能性は極めて大きいと見ています。
その起爆剤、トリガーとなるような革新的なサービスを提供することで日本の著名な大企業までが利用するようになれば、この巨大なマーケットでオンリーワンのポジションを築くことができる、そこを目指してAIを利用した新システムの開発に着手したり、新たな事業領域に進出したりと挑戦を続けています。

 

まだまだ事業規模は小さく、プリント基板におけるシェアも0.3%程度と低い当社ですが、逆に大きな成長余地を残していると考えています。
当社ならではの競争優位性を活かし、安定した事業基盤の上で「売上2桁成長、経常利益率15%」の高収益企業を目指してまいりますので、是非株主や投資家の皆様には中長期の視点で当社を応援していただきたいと思います。

 

5.今後の注目点

田坂社長が指摘しているように、株取引の世界ではインターネット取引が圧倒的な主役となったように、現在はまだまだ小規模なプリント基板のEコマースであるが、電気・情報関連機器製造業のEC化率は53.5%と既に5割を超えていることからも、今後のメインストリームとなる可能性は大きいと思われる。

 

一方、その実現には大企業にとってもインセンティブのある起爆剤、トリガーとなる革新的なサービスが必要だ。Swissmic社とのアライアンスに基づくAI技術導入はその第一歩となるのだろう。
また試作から完成品まで電子機器開発行程のすべてをサポートするEMS事業への参入も、従来にはない同社ならではの付加価値を提供して大企業の利用に繋がる可能性もあろう。今期は投資フェーズのため減益予想であるが、中長期の視点で前期、今期に打ち出した施策の進捗およびこれからの新たな打ち手を注目していきたい。

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成>

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 6名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
更新日: 2019年7月10日

 

<基本的な考え方>
当社は、「開発環境をイノベーションする」という経営スローガンのもと、株主、取引先、従業員等のステークホルダーの期待と信頼に応え、企業価値を向上させていくためには、コーポレート・ガバナンスの構築が必要不可欠であり、経営の最重要課題のひとつと位置づけております。
コーポレート・ガバナンスの実践によって、経営の健全性・効率性および透明性の維持・向上を図り、必要な施策を講じるとともに説明責任を果たしていくことが、株主をはじめとするすべてのステークホルダーに対する責任であると考えております。また、2018年6月に監査等委員会設置会社へ移行し、各監査等委員が取締役の業務執行の適法性を監査しております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則について全て実施しております。」と記載している。

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