(6071:東証1部) IBJ 積極的な投資で更なる成長を目指す

2019/03/14

IBJ

今回のポイント
・少子化問題解決をミッションとする婚活業界最大手。同社が開発・運営する日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)の登録会員数は約60,000名にのぼる。「システム × ヒト」のビジネスモデルが支える強固なポジション、事業の成功確率を高める圧倒的な会員基盤、加盟相談所への手厚いフォローアップ体制などが特徴・強み。2022年「日本の成婚組数の3%の創出」、「売上高300億円、営業利益50億円達成」を目指し、既存事業の強化に加え、シニアマーケット、国際結婚など新市場創造を進めて行く。・18年12月期の売上高は、前期比24.9%増の118億18百万円。全事業とも増収。コミュニティ事業でM&AしたDiverseが好調で増収に寄与した。粗利額も増収率を上回り、粗利率も3.6ポイント上昇。営業利益は同1.1%減の14億76百万円。人材、出店、広告など成長のための積極的な投資の実施で販管費は同44.0%増加。利益は期初予想に対しては未達だったが、修正予想を上回った。成婚組数は結婚組数約60万組の1%にあたる6,132組。

・19年12月期の売上高は、前期比27.4%増の150億55百万円、営業利益は同21.9%増の18億円と2桁の増収増益を予想。月間平均加盟開業件数は2018年の38.4社から50社に伸長し、成婚組数も6,132組から8,000組へと大きく増加を見込む。また、Diverse、サンマリエ、IBJウエディングなどグループ会社の合計売上高は約45億円に上り、収益に寄与する。

・前回のレポートでは、「投資ステージと位置付ける今期、第4四半期でトップラインをどれだけ上積みすることができるのかを注目したい。」と記したが、売上、利益ともに18年8月公表の修正予想を上回って着地した。
成婚組数、加盟相談所数、イベント動員数を始めとしたKPIは順調な推移であり、再び2桁の増収増益となる今期の進捗が楽しみである。中長期的には引続き「成婚組数3%の創出」、「売上高300億円、営業利益50億円の達成」に向けた、シニアマーケットや国際結婚での新市場創造の進捗をウォッチしたい。

会社概要
少子化問題解決をミッションとする婚活業界最大手。同社が開発・運営する日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)の登録会員数は約60,000名にのぼる。「システム × ヒト」のビジネスモデルが支える強固なポジション、事業の成功確率を高める圧倒的な会員基盤、加盟相談所への手厚いフォローアップ体制などが特徴・強み。2022年「日本の成婚組数の3%の創出」、「売上高300億円、営業利益50億円達成」を目指し、既存事業の強化に加え、シニアマーケット、国際結婚など新市場創造を進めて行く。【1-1 沿革】
少子化の進行が明確でありながらもその対策がなされていない状況に危機感を覚えていた石坂茂氏(現 株式会社IBJ代表取締役社長)は、日本では少子化対策のためには単なる出会いの機会ではなく成婚カップルを生み出さなければ意味がないと考え、いち早く婚活サイトの開発・運営を手掛け実績をあげていった。
2003年にはその実績に関心を持ったヤフー株式会社がブライダルネットの株式を取得したが、成婚カップルを生み出すにはネットのみでなく人手を介したリアルな機会の提供も不可欠と考えていた石坂氏は、よりダイナミックに婚活支援事業を展開するため2006年に現経営陣によるMBOを実施し、ヤフー株式会社グループカンパニーから独立して株式会社IBJを設立した。

既にネット集客の基盤やノウハウを持っていた同社は、ネット婚活を拡大させながら、2007年には銀座と新宿に直営ラウンジを新規出店し、カウンセラーがサポートを提供するラウンジ事業を開始した。
石坂社長の構想通り、マッチングに際し人手によるサポートを付加することで他社よりも多くの成婚カップルを生み出すことに成功した同社は、並行して結婚相談所ネットワークの構築に乗り出す。

当時日本全国には3,000社以上の結婚相談所があったが、会員とのやり取りやお見合いの日時連絡などを電話・手紙・FAXで行っており、手間の多さや間違いの発生などが結婚相談所運営の大きな課題と見た石坂社長は、IT化によって結婚相談所の事務処理能力を大きく飛躍させるシステムを構築し、日本各地域における仲人のキーパーソンに同システム採用の提案を行った。
当初は理解が進まず苦労を重ねたが、会員集客媒体としての利用に限って提案していくと、毎月コンスタントな会員獲得が進むことから相談所にとっては無くてはならないものになっていった。その後、改めて同システムの利用を提案すると、業務効率を大幅に改善する同システムの有用性も理解され、全国規模で加盟相談所数は増大していった。

加盟相談所および会員数の増大と並行して婚活サイト「ブライダルネット」が日本最大規模のソーシャル婚活メディアへと成長するに伴い業容は急速に拡大し、2012年には大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場。
その後、2014年の東証2部への市場変更を経て、2015年、東証1部へステップアップした。

【1-2 経営理念】
経営理念においては、「すべてのステークホルダーとの縁、つながりを大切にすること」を、クレドにおいては、「顧客満足度の高いサービスを提供すること」を目標として掲げている。

また、「人と人をつなぐのは、人だと思う。」をブランドステートメントとし、理念としての共有を図っている。

【1-3 市場環境】
<未婚者状況>
*上昇続ける未婚率。交際相手のいない未婚者も増加。
総務省の国勢調査によれば、25-34歳の未婚率は男女とも上昇を続けている。

また、「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査) 2015年実施」によれば、18-34歳の未婚者のうち、交際相手のいない未婚者の割合も年を追って上昇している。

*未婚者の結婚の意思 ~「結婚する意思」は引き続き高水準~
一方で、結婚する意思を持つ未婚者の割合は18~34歳の男性で85.7%、女性で89.3%となっており、「結婚したい」と考えている未婚者の数は依然高水準である。

また、「一生結婚するつもりはない」と答えた未婚者の割合が男女とも上昇してはいるが、その中でも今後「いずれ結婚するつもり」に変わる可能性があると回答した割合は、男性44.1%、女性49.8%となっており、今は結婚するつもりの無い層も半数近くは今後結婚に向けて動き出す可能性がある。

*独身でいる理由 ~25歳を過ぎると適当な相手にめぐり会わない~
未婚者に独身でいる理由を尋ねたところ、18~24歳の若い年齢層では、「若すぎる」、「必要性を感じない」など積極的な動機が無いことが多く上げられているが、25~34歳では、「適当な相手にまだ巡り会わない」という理由を挙げる割合が増加しており、出会いやその機会に対するニーズが大きいことが窺える。

以上のことから、未婚率および交際相手のいない未婚者の割合は上昇しているが、未婚者の多くは結婚の希望がないわけではなく、出会いやその機会が少ないというのが現状である。
ただ、こうした市場ニーズに対し、実際に結婚というゴールまで導くには単なる機会提供(マッチング)では不十分で、結婚相談所による仲人のサポートが不可欠であるということがユーザーへの調査で明らかになっている。

こうした市場環境の下、同社は日本最大の会員ネットワーク、専任カウンセラーの手厚いサポートなどの強みを活かして、婚活市場のトップランナーとなっている。

【1-4 事業内容】
報告セグメントは、「コーポレート事業」、「コミュニティ事業」、「ラウンジ事業」、「ライフデザイン事業」の4セグメント。

(1)コーポレート事業
コーポレート事業、連盟事業、FC事業で構成されている。

①コーポレート事業
前述の日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)に加盟している結婚相談所(個人・法人) 約1,700か所へのシステム提供のほか、新規開業支援や加盟営業を行っている。
同社では中期経営計画で日本の成婚組数の3%をIBJから創出する事を目標としているが、その達成のためには加盟相談所の新規獲得、既存加盟相談所の育成が不可欠であり、営業人員を増強するほか、相談所ビジネス成功のためのメソッドの提供にも力を入れている。

収益モデルは、加入した相談所の開業加盟金150万円およびシステム利用料約2~3万円 × 加盟相談所数。
(法人の場合は開業加盟金300万円から)

②連盟事業
全国の結婚相談所が利用するASP型結婚相談所ネットワーク「IBJシステム」を提供し、結婚相手候補者の検索やお見合いの申込み、お見合いの日時・場所のセッティングや交際の管理に至るまで、全国規模でかつ効率的にお見合いを管理できるサービスを提供している。また、全国の結婚相談所の会員自身が結婚相手を検索できるアプリを開発し、提供している。

③FC事業
結婚インフラを増強させるためのFC加盟店開発を行っている。

(2)コミュニティ事業
実績17年の日本最大級のネット婚活サービスサイト「ブライダルネット」の運営を行っている。
月会費については、男女同額の平均約3,000円である。一般的な婚活アプリやマッチングサービスと比較して男女とも結婚に真剣な人が集まりやすく、それだけ真剣な出会いも多く生まれている。
月間メッセージ交換成立数は58,000件を突破し、月間カップル成立数は約20,000名にのぼる。

加えて、2018年12月期からは、「婚シェル」という担当スタッフによる婚活サポートをスタートさせた。
婚シェルは、プロフィールの書き方、初デート取り付けのためのやりとりなど、ネット婚活ではありながらも、同社の強みである「ヒト」ならではのきめ細かいサポートを提供している。

収益モデルは、月会費課金者数 × 月会費 約3,000円。
・1ヶ月プラン 3,980円
・3ヶ月プラン 8,640円(1ヶ月当たり2,880円)
・6ヶ月プラン 12,960円(1ヶ月当たり2,160円)
・12ヶ月プラン19,800円(1ヶ月当たり1,650円)

(3)ラウンジ事業
イベント事業、ラウンジ事業で構成されている。

①イベント事業
結婚活動を目的に参加するイベントを企画し、WEBサイト「PARTY☆PARTY」を通して集客を図り、直営・FC合わせて全国46か所(2018年12月末現在)の自社ラウンジで開催するとともに、外部開催の企画型イベントの開催も行っている。
毎月約4,000件のパーティーを開催し、約60,000名が参加している。

加えて、東証1部上場企業の同社が運営していることも参加者に安心感を与えている。

収益モデルは、イベント参加費 月平均3,000~3,200円 × イベント動員数。

②ラウンジ事業
同社の全国14か所の結婚相談ラウンジ「婚活ラウンジIBJメンバーズ」で、会員に対する婚活支援を提供している。
会員数は同社が運営する日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)に加盟している結婚相談所(個人・法人) 約2,000か所の登録者も含め60,000名超えと業界最大である。

業界最大の会員ベースに加え厳正な入会審査により上質な出会いを提供しているほか、業界最先端の検索システムによるマッチングを提供している。
加えて、婚活プロフェッショナルの専任カウンセラーによる手厚い成婚サポートが大きな特徴である。
カウンセラーは、会員の人柄や性格など、自分自身では気が付いていない魅力を見つけ出し、カウンセラーとしての経験からマッチする相手を紹介するなど、システムだけに頼るのではなく、人の手によって出会いを創造することで成婚の可能性を高めている。

IBJメンバーズの成婚とは「婚約=会員同士がお互いに結婚すると決めること」を指す。
大手結婚相談所の多くは成婚を、結婚を視野に交際した時点としているところが多いが、会員が結婚相談所で活動する目的は結婚のためであることに加え、同社の社会的意義である少子化問題解決に貢献するためにも、婚約を成婚の定義としている。
このため、カウンセラーは例えば両親へのあいさつの段取りなど、成婚までを手厚くフォローしている。
こうした結果、2017年12月期の成婚者数は前期比18.4%増の1,269名、成婚率(2017年7月~12月の半年間での主要コース実績)は51.5%と、ハイレベルな成婚定義でありながらも業界屈指の成婚率を実現している。
またこうした手厚いサポートの過程で会員とカウンセラーの関係性は深まるのが一般的であるため、新婚旅行、保険といった結婚後の様々なシーンに関連するサービスを提供するライフデザイン事業への誘導にもつながっている。

収益モデルは、会費(年換算 約22~24万円) × 会員数。成婚時には別途成婚料20万円が発生する。

(4)ライフデザイン事業
婚活事業で構築した会員基盤をベースに、婚活から派生する様々なフィールドにおいてサービスを提供しており、ウエディング事業、旅行事業から構成されている。

①ウエディング事業
2016年に子会社化した(株)ウインドアンドサンが、創刊25年のウエディング情報誌「WIND AND SUN」を発行するほかWEBSITEも運用し、ウエディング関連の法人に対して広告サービスを提供している。
また、WEBSITE「ウエディング navi」やウエディングサロンの運営を通じた提携結婚式場への送客も行っている。

②旅行事業
2016年に子会社化した(株)かもめが、新婚旅行に加え、海外パッケージツアーの企画、および大手旅行代理店へのツアー提供やオーダーメイド旅行のアレンジ等を行っている。

この他、2017年にソニー生命保険株式会社と株式会社IBJライフデザインサポートを設立。婚活中から結婚、新生活、子育てなどのライフステージに合わせたライフプランニングをサポートしている。

主な収益モデルは以下の通り。
*式場送客費
披露宴などの飲料費の10%(平均5~10万円) × 送客件数

*ハネムーン旅行代金
平均50~70万円 × 成約件数
*保険成約手数料
3~20万円 × 成約件数

【1-5 特長と強み】
(1)「システム × ヒト」のビジネスモデルが支える強固なポジション
同社が運営する日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)は加盟相談所数約1,800社、会員数60,000名超えと最大であることに加え、婚活サイト・お見合いパーティー・合コンといった様々なサービスの集客力やサービスレベルは業界トップクラスであり、婚活業界において極めて強力なポジションを構築している。

このポジショニングを可能にしているのが、システムとヒト、それぞれの強みを融合させたビジネスモデルである。
システム面では、高いスキルを持つ自社のWebエンジニアチームが独自のシステムを開発・運用している。
そのため、顧客のニーズに的確に対応して、画面の見やすさ、操作しやすさといったUI(ユーザーインターフェース)の改善や、顧客データベース有効活用によるマッチング精度の向上などUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上を迅速に行うことが可能であり、会員及び加盟相談所の満足度向上に繋がっている。

一方、ブランドステートメント「人と人をつなぐのは、人だと思う。」にあるように、成婚主義の追求には「ヒト」の力が欠かせないと考える同社では、ひとりひとりの会員に寄り添い、成婚にまで導くために必要不可欠なカウンセラーを独自のスキル教育プログラムで育成している。
「成婚=婚約」と定義する同社ガウンセラーのヒューマンサポートは他社にはない大きな強みである。

このような「システム × ヒト」のビジネスモデルをベースに構築した婚活業界における圧倒的なポジションは高い参入障壁となっている。

(2)事業の成功確率を高める圧倒的な会員基盤=顧客資産
IBJお見合いシステムの会員約60,000名を始めとして、婚活パーティー参加者数 月間約60,000名、月間お見合い数 月間29,000件など、その会員基盤は常に約100,000名が稼働している。
同社ではこの「活きた会員基盤」を使ってライフデザイン事業を始めとした様々な新事業の展開を目指しているが、常に稼働しているため、成功確率を高めることが出来る点が大きな差別化要因になると同社では考えている。
規模だけではなく、常に稼働している会員基盤はバランスシートには表れることはないが、他社にはない同社の優れた顧客資産である。

(3)加盟相談所へのフォローアップ体制
カウンセラーによる会員に対するきめ細かい婚活支援が同社の大きな特徴となっているが、加盟相談所に対しても結婚相談所ビジネス成功のための手厚い支援を行っている。
同社では2007年以来、直営ラウンジにおいて、集客、対面営業(入会)、入会者へのオリエンテーション、お見合いから成婚実現の各局面において様々な手法を実践してきており、その中で効果の高かったもののみをメソッド(方法・方式)として集約し、加盟相談所に提供している。マニュアルではなく成功メソッドであるため、加盟相談所は結婚相談所ビジネスの成功の道を最短で進むことが出来る。

18年12月期はマージンの低下を主要因にROEも前期に比べ低下したが、引き続き高水準のROEを実現している。

【1-7 株主還元】
配当性向は30%超で推移。また下記のような株主優待制度を設け、保有株数に加え、保有期間による優待を実施している。

中期経営計画と成長戦略
2018年12月期を初年度とする5か年の中期経営計画が進行中。
目標達成に向けて意欲的な取り組みを進めて行く考えだ。(1)新中期経営計画(2018年から2022年)について
①概要

以下の目標を掲げている。
日本の成婚組数の3%をIBJから創出する。
売上高300億円、営業利益50億円を達成。
上記目標達成のために、既存事業であるライフデザイン事業の拡大とともに新たに以下の3つのマーケットを創造する。
①AIを活用したマーケット
②シニアマーケット
③国際結婚マーケット

目標達成のための方針としては、
「加速度的な成長に向けて婚活事業や周辺領域へ戦略的にM&Aを実行する」
「成婚組数3%達成に向け、成婚主義を徹底し、ヒトやシステムへ積極的な投資を行う。」
「全国へ拡大する強固なネットワークを構築する。」
の3つを挙げている。

②市場環境
【1-3 市場環境】の項で触れたように、未婚率および交際相手のいない未婚者の割合は上昇しているが、未婚者の多くは結婚の希望がないわけではなく、出会いやその機会が少ないというのが現状である。
婚活業界はそうしたニーズを的確に取り込み、婚活サービスで結婚した人の割合は3年間で2.4倍と、利用者は急増している。
また、大手企業の参入が相次いだことにより、20代を中心とした潜在顧客の開拓が進み、婚活サービスの利用は今後も一段と浸透していくことが予想される。
現在の市場規模は660億円程度に過ぎないが、婚活サービスの利用浸透とともに、約1兆円と推定される潜在市場が顕在化してくるとも予想されている。
こうした成長性に加え、社会的な課題である少子化解消の視点から「ESG投資」として位置づけ婚活業界へ投資する機関投資家や金融ファンドも増加しており、婚活業界を取り巻く市場環境は中長期的に良好であると見られている。

③今後の取り組み
そうした環境の下、同社では「成婚」にこだわったサポートを提供し、顧客満足度の更なる向上を図っている。
大手の結婚相談所などは真剣交際に至った時点を「成婚」と定義しているケースが多いが、実際の婚活は真剣交際後の親の了承やプロポーズなどを経て初めて婚約に至るものであり、様々なハードルを乗り越える必要がある。
同社では、「お見合い → 交際 → プロポーズ → 婚約」までの各段階において適切なヒューマンサポートを提供しており、そうしたハードルを全て乗り越えた後に婚約まで至って初めて「成婚」と定義している。

こうした成婚にこだわったサポートを提供しながら、以下のような取り組みに注力し、更なる成長を追求していく。

≪①強みのブラッシュアップ≫
前述したように婚活業界における同社のポジションを揺るぎないものとしているのは、「システム」と「ヒト」双方によるサポート体制であるが、それぞれの強みをブラッシュアップし、競争優位性を更に強化する。

(システムの強み)
加盟相談所約2,000社、会員数約60,000名、仲人約3,700名の日本最大のお見合い会員ネットワークは他の追随を許さない。
また、検索、お気に入り登録、お見合い申し込み、担当仲人との連絡ができるシステムは会員、加盟相談所双方にとって極めて有用なシステムである。
今期はPARTY☆PARTYのアプリをリリースし、更に婚活への参加を容易なものとした。また、システムのUI(ユーザーインターフェース)、UX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させ、利用者の満足度を更に高めていく。

(ヒトの強み)
婚活支援17年の中で蓄積された成婚メソッドは、同社独自の成功ノウハウであり、加盟相談所の課題解決に大きな力となっている。
また前述の仲人ネットワークも同社を支える強力な基盤である。
加盟相談所、仲人との関係をより強固なものとするために、成婚メソッドを直営店から加盟相談所に波及させるIBJメソッドスクールを展開するほか、人数集めではなく成婚を目標としたサポート重視の料金体系の徹底、営業・専任カウンセラー・婚シェルの採用・育成強化を目的とした育成専門部署を設置し、ヒトの強みを一段と強化する。

≪②領域の拡大≫
これまでのサービス提供領域である婚活・結婚に加え、その後のライフステージにおける様々なシーン(保険、住まい、出産、育児、旅行、セカンドライフなど)に関するサービスを多面的に提供する。
現在ライフデザイン事業においては、結婚カップル年間6,000組、IBJお見合いシステム登録会員数約60,000名という基盤をベースに結婚式場への送客、保険成約、ハネムーン成約などで実績が出始めているが、更に実績を積み上げていく。

≪③人工知能(AI)を婚活サービスへ導入≫
同社ではAI(人工知能)に活用に積極的に取り組んでいる。
まず、既に大きな実績を有する同社の人材育成手法「IBJメソッド」にAIを取り入れ、カウンセラー一人当たりの成婚創出数向上を図る。2016年には1名であったカウンセラー1名あたりの月間成婚創出数は、2018年は2.1名まで上昇。今後も更なる創出増が期待できる。
AIの導入効果としては、マッチングプロセスの効率化、マッチング精度の向上に加え、婚活パーティーの受付・案内・パーティー説明といった、ルーティーン業務をAIロボットに代替させること等を挙げている。
将来的にはお見合いの立ち合いや契約説明など、AIが幅広い業務を担って行く予定であり、一方で、人的リソースはヒトの手でしかできない会員のケアなどに振り分け、今まで以上の顧客満足度を実現する。

≪④シニアコミュニティへのサービス提供≫
少子化の解決を自社の社会的存在意義と認識し活動してきた同社だが、高齢者の孤立化も日本が解決しなければならない重要な課題と考えている。

そこで、シニアの趣味として人気のある旅行などを切り口としたパートナーとの出会いを提供する新サービス「サードプレイスコミュニティサービス」をスタートさせる。
これは40歳以上の男女限定のメンバーシップ制度の下、旅、ワイン、ゴルフといった共通の趣味をベースにした部会を設けてパーティーや旅行などのイベントを企画・開催するとともに、メンバー同士1対1の会食もセッティングするというもの。
結婚相談所ではなく、楽しく充実した人生を送るための新たなコミュニティを提供する。

≪⑤国際結婚の推進≫
日本の総結婚組数に占める国際結婚の割合は5%台で推移しており、今後も一定のニーズが見込まれる。
国際結婚における日本人女性の国別結婚相手の割合のトップは25.4%で韓国人男性となっており、日本人男性の国別結婚相手の割合でも韓国人女性は第3位となっている。
地理的条件に加え日本におけるK-POPや韓流スター人気がその背景にあると思われるが、同社では人種や国籍を超えた出会いの機会を提供し、日本の結婚組数増加を図ることも意義の大きいことであると考えており、後述のようにまず「日本人 × 韓国人」を対象とした国際結婚サービスの提供に向け、日本最大級の韓国語教室を経営するK Village Tokyoを子会社化した。

2018年12月期決算概要
増収も成長のための積極的な投資で減益
売上高は、前期比24.9%増の118億18百万円。全事業とも増収。コミュニティ事業でM&AしたDiverseが好調で増収に寄与した。粗利増加率は増収率を上回り、粗利率も3.6ポイント上昇。
営業利益は同1.1%減の14億76百万円。人材、出店、広告など成長のための積極的な投資の実施で販管費は同44.0%増加。利益は期初予想に対しては未達だったが、18年8月公表の修正予想を上回った。
成婚組数は日本の総結婚組数約60万組の1%にあたる6,132組。

①コーポレート事業
増収増益。
コーポレート事業における結婚相談事業者の新規開業支援の強化、連盟事業における日本結婚相談所連盟の会員向けアプリ「IBJお見合いシステム(お見合い管理システム)」の機能増強、連盟本部事務局機能の増強によるお見合い数の増加など、加盟相談所数・登録会員数の順調な増加により収益力が向上し、FC事業においても加盟店開拓が進んだ。
加盟相談所数は前年同期比269社増の1,898社と堅調な伸びが続いている。
会員数は6万名を、月間お見合い件数は29,000件を超え、加盟店成婚者数は12月単月で1,006名と初めて1,000名台に乗った。

②コミュニティ事業
増収減益。
婚活色を強めた婚活サイトのリニューアルによる機能拡充に伴う新規会員獲得強化、また、Diverse社の子会社化により会員数は大幅に増加し収益力が向上した。
コスト面では、提供サービスのクオリティ向上に伴う費用や、新規連結に伴うのれんの償却費が増加した。

③ラウンジ事業
増収減益。
イベント事業におけるアプリのダウンロード数増加促進、自社会場企画と開催数の拡充、自社会場企画に加え外部会場開催の企画型イベント等、クオリティ強化への取り組みを通じた動員数増加による収益力の向上に努めた。
また、ラウンジ事業においては上野マルイ店、大名古屋ビルヂング店、なんば店、京都店を新規オープンしたほか、婚活アドバイザー及びカウンセラースタッフの拡充とスキルアップ(成婚の育み方)研修の計画的実施など、定員制ラウンジのクオリティ強化による入会数及び成婚数の増加に継続的に取り組んだ。
コスト面では、新店舗のオープンに伴う費用や人員増強による費用が増加した。
イベント動員数、ラウンジ成婚者数ともに過去最多を更新した。「PARTY☆PARTY」アプリのダウンロード数は10万件を突破。カウンセラー1名あたり月間成婚創出数は前年の1.7名から2.1名にアップした。

④ライフデザイン事業
増収増益。
ウエディング事業における提携式場数の拡充及び式場送客の増強、旅行事業における中南米、北米、北欧、フィリピン、パプアニューギニアなどのパッケージツアーを企画し、大手旅行代理店へのツアー提供やオーダーメイド旅行をアレンジした。成婚者数増に伴い成約件数は順調に増加しており、ハネムーン旅行は200件を上回り、ウエディング送客件数は982件と1,000件に迫る勢いである。

現預金、売上債権の増加等で流動資産は前期末に比べ6億88百万円増加。のれん、投資有価証券の増加等で固定資産は同6億53百万円の増加。資産合計は同13億42百万円増の75億62百万円となった。
一方、前受金、長期借入金の増加等で負債合計は同9億57百万円増加し、40億6百万円となった。
自己株式が増加した一方、新株予約権の行使、利益剰余金の増加で純資産は同3億85百万円増の35億56百万円。この結果、自己資本比率は前期末より4.3ポイント低下し46.6%となった。

有形固定資産の取得による支出が増加し、投資CFのマイナス幅は拡大。
新株予約権の行使による株式の発行による収入が減少し財務CFはマイナスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。

(4)トピックス
◎日本最大級の韓国語教室を経営するK Village Tokyoを子会社化

2019年1月、日本最大級の韓国語教室を経営するほか韓国語留学手続き代行を手掛ける株式会社K Village Tokyoの第三者割当増資を引受け、子会社化した。議決権所有割合は55.1%。

(子会社化の背景)
現在進行中の中期経営計画(2018年から2022年)において「2022年 売上高300億円、営業利益50億円」の達成を目指す同社は成長戦略の一つとして、国際結婚マーケットの創出を挙げている。
その中でも国際結婚における日本人女性の国別結婚相手の割合のトップは25.4%で韓国人男性、日本人男性の国別結婚相手の割合でも韓国人女性は第3位となっている点を踏まえ、まず「日本人 × 韓国人」の国際結婚の機会提供から着手することとしている。
今回の子会社化を機に包括的な提携を行い、ライフデザイン事業を拡充するとともに、国際結婚への足がかりを強化。来期以降の収益への寄与およびグループの成長への貢献を見込んでいる。

2019年12月期業績予想
2桁の増収減益。
売上高は、前期比27.4%増の150億55百万円、営業利益は同21.9%増の18億円と2桁の増収増益を予想。
月間平均加盟開業件数は2018年の38.4社から50社に伸長し、成婚組数も6,132組から8,000組へと大きく増加を見込む。
また、Diverse、サンマリエ、IBJウエディングなどグループ会社の合計売上高は約45億円に上り、収益に寄与する。

(2)各セグメントの取り組み

①コーポレート事業
強化を進めているAI技術を駆使したマッチング率向上により、お見合い数の増加→成婚者数の増加を見込んでいる。

②コミュニティ事業
ブライダルネットにおけるお相手紹介機能・加盟店制度導入により差別化を図る。

③ラウンジ事業
「PARTY☆PARTY」のUIを向上させるとともに、メディア露出強化によりイベント動員数の増大を図る。
ラウンジにおいては入会導線の開拓やサービスブランドの強化を進める。

④ライフデザイン事業
新婚旅行においては自社キャラクターをブランド化するほか、新たな集客チャネルの開拓に挑戦する。
ウエディングにおいては婚活事業とのシナジーを高め、更なる顧客獲得を目指す。

⑤子会社
(株)ウインドアンドサンは2019年1月、(株)IBJウエディングに社名変更した。ウエディング業界と婚活業界との連携に向けIBJ婚活とウエディングとの結びつきを更に強化する。
(株)かもめはIBJウエディングとの一体運営により更なる顧客獲得を目指す。
(株)Diverseは本社を溜池山王に移転し、オフィス環境を変化させ収益拡大を目指す。
ハピライズ(株)は2019年1月、創業37年の老舗サービスブランドを冠した(株)サンマリエに社名を変更した。ブランド力強化による会員数増大を見込んでいる。
株式会社K Village Tokyoは韓国語学校に加え、外国人材事業(韓国人男性の日本での就労支援など)、K POPファンサイト事業を立ち上げる。

今後の注目点
前回のレポートでは、「投資ステージと位置付ける今期、第4四半期でトップラインをどれだけ上積みすることができるのかを注目したい。」と記したが、売上、利益ともに18年8月公表の修正予想を上回って着地した。
成婚組数、加盟相談所数、イベント動員数を始めとしたKPIは順調な推移であり、再び2桁の増収増益となる今期の進捗が楽しみである。
中長期的には引続き「成婚組数3%の創出」、「売上高300億円、営業利益50億円の達成」に向けた、シニアマーケットや国際結婚での新市場創造の進捗をウォッチしたい。
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年12月27日

<基本的な考え方>
当社は、機動的かつ弾力的な経営を行いつつ、経営監視機能を充実させ、経営の健全性、透明性を確保することによって、利害関係者と長期的かつ安定、継続した良好な関係を築くことが、企業経営において必要不可欠であると認識しております。そのために、組織体制の整備だけでなく、全社一丸となってコンプライアンス意識を向上させ、また、リスク管理を強化した経営にあたることを基本方針としております。

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