価格維持政策を連発するサナエノミクス
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◆電気・ガス補助金再開、為替介入、ガソリン価格170円維持
大型連休が終わりました。連休中も金融市場は米国とイランの和平協議の進展度合いに一喜一憂する展開でした。この間、国内での主なニュースには、次のようなものがありました。①4月30日に、今夏から政府が電気・ガス料金の補助を再開する方向で検討しているとロイター通信が報じました。②4月30日以降、政府・日銀がドル売り円買いの為替介入に動いたと、複数の大手メディアが報じています。1ドル=160円台は許容しない姿勢を示したと受け止められています。③5月7日、イラン情勢緊迫化を受けて再開したガソリンなどの燃料油価格引き下げ補助金について、3月の支出額が約1,800億円に上ったと経済産業省が明らかにしました。改めて整理してみると、高市政権が、電気・ガス料金、米ドル/円、燃料油と相次いで価格維持策を繰り出している姿が浮かび上がります。
◆価格メカニズム軽視が招く構造調整の遅れ
政府による価格維持策は、一時的な社会・経済の混乱を回避できるというメリットがある一方で、価格メカニズムが持つ本来の調整・警告機能を弱めるという負の側面もあります。例えば円安は、(1)近年の経常収支の構造変化、(2)政府の財政運営に対する不安、(3)実質金利が相対的に低いこと、が影響していると考えられます。それが最近では、原油価格上昇による輸入価額増加観測により、(1)の一段の進行が警戒され、円安が加速している構図です。為替介入でこれらの問題は解決しません。むしろ、一時的に円安圧力が弱まることによって問題が覆い隠され、必要な構造改革の機運を一段と弱めてしまうかもしれません。ガソリンや電気・ガス料金補助についても、類似のことが言えるでしょう。市場価格が動かない環境では、省エネ技術の開発などのインセンティブが失われがちです。
◆「アベノミクスの教訓」
昨年10月31日発行の本欄(タイトル:「アベノミクスの教訓」)では、安倍晋三元首相の経済政策を改めて取り上げました。いわゆる第一の矢(金融政策)と第二の矢(財政政策)に比べて、最重要の第三の矢(成長戦略)を完遂できなかったという整理です。そのうえで、高市政権が、発足後速やかに「日本成長戦略会議」を立ち上げたり、「日本成長戦略担当大臣」を新設するなど、成長戦略を前面に出した体制を整えていることを紹介しました。「安倍氏でも成し得なかった成長戦略を高市氏が完遂できるかが、経済や市場の長期的・安定的な成長を左右します」と指摘しました。
そこからちょうど半年が経ちました。価格維持政策を連発するサナエノミクスは、成長戦略完遂という難路とは、やや異なる道を歩き始めたように見えます。
◆財政運営や「市場との対話」への不安も
政府による価格維持政策にはほかにも課題があります。例えば財政面です。上記③を踏まえると、ガソリンなどへの補助金の原資は6月にも払底すると試算されます。6月以降も継続するためには補正予算の編成が必要になる可能性があります。また、「市場との対話」にも逆風です。市場価格が動かない環境では、市場が発する警告やシグナルも弱まり、政策当局と市場との対話が細りがちになるからです。
一時的な価格安定と、価格変動が示す現実を直視することとのバランスが、今後のサナエノミクスを評価するうえで、避けて通れない論点になりそうです。
(シニアストラテジスト 稲留 克俊)
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