アベノミクスの教訓

2025/10/31

当社サイトはこちら→三井住友トラスト・アセットマネジメント 投資INSIDE-OUT

◆故安倍晋三元首相に思いを馳せる

10月最後の週(10/27~31)は、故安倍晋三元首相を思い出させてくれる出来事が重なりました。安倍氏と親交の深かったトランプ米大統領が来日し、安倍路線の継承者を自認する高市首相と初の首脳会談を行いました。安倍氏が結節点になり会談は上々の雰囲気だったようです。他方、安倍氏襲撃事件の被告の初公判が始まりました。

マーケットで話題になったのは、トランプ氏と共に来日したベッセント財務長官による発信でした。「アベノミクスが、純粋なリフレ政策※から、日本国民の成長とインフレ懸念のバランスを取るプログラムへと移行したことを、片山財務相が深く理解していることに勇気付けられる」と、アベノミクスに敢えて言及したうえで、日本の経済政策が新たなステージへ移行することを暗に求めました。

※リフレ政策:脱デフレ政策、緩やかな物価上昇を目的とした金融政策や財政政策

◆アベノミクスの教訓

2012年12月に発足した第2次安倍政権でスタートしたアベノミクスは、3本の矢で構成されていました。第1の矢・金融政策と第2の矢・財政政策は、十分すぎるくらいやり切ったと言われる一方、第3の矢・成長戦略が不発だったと評価されています。

下図は、日本経済の真の実力とも言える潜在成長率の推移ですが、第2次安倍政権ではむしろ減速しています。労働力が減少した他、技術革新や業務効率化等を映す全要素生産性も低迷しました。金融政策や財政政策はあくまで一時的な景気刺激策であり、経済の構造的な立て直しには成長戦略が不可欠であるとの見方が、アベノミクスの教訓として認識されました。

◆成長戦略

高市政権は、発足後速やかに、「日本成長戦略会議」を立ち上げたり、「日本成長戦略担当大臣」を新設したりするなど、成長戦略を前面に出した体制を整えています。騰勢が続く今の株式市場は、このようにアベノミクスの教訓をしっかり踏まえて、成長戦略に力を注ぐ高市政権の姿勢を評価しているのでしょう。

あとは、実行力です。人口減少・少子高齢化への対応、労働市場改革、将来不安を緩和する財政・社会保障改革といった成長戦略の具体策にも、多くの市場関係者の間で共通認識はできています。

安倍氏でも成し得なかった成長戦略を高市氏が完遂できるかが、経済や市場の長期的・安定的な成長を左右します。期待したいです。

(シニアストラテジスト 稲留 克俊)

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社
三井住友トラスト・アセットマネジメント「投資INSIDE-OUT」   三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社
三井住友トラスト・アセットマネジメントの金融情報調査室が、投資にまつわるコラムをお届けします。
【ご留意事項】
  • 当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません
  • ご購入のお申込みの際は最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
  • 投資信託は値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクを伴います。)に投資しますので基準価額は変動します。したがって、投資元本や利回りが保証されるものではありません。ファンドの運用による損益は全て投資者の皆様に帰属します。
  • 投資信託は預貯金や保険契約とは異なり預金保険機構および保険契約者保護機構等の保護の対象ではありません。また、証券会社以外でご購入いただいた場合は、投資者保護基金の保護の対象ではありません。
  • 当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また、今後予告なく変更される場合があります。
  • 当資料中の図表、数値、その他データについては、過去のデータに基づき作成したものであり、将来の成果を示唆あるいは保証するものではありません。
  • 当資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれの指数の開発元もしくは公表元に帰属します。

このページのトップへ