天気予報と経済予測

2025/08/15

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◆天気予報と経済予測の違い ~ 現状把握の難易度

天気予報と経済予測は、両者ともに常に多くの人が関心を寄せる対象です。そして「どちらが難しい?」もよく話題になります。1つの論点に、「現状把握の難易度」が挙げられます。天気は、現状を概ね正確に把握できます。空を見上げれば雲の動きが目視できますし、気象衛星やレーダーのおかげで、地球全体の雲や風の動きもつかめます。他方、経済は現状把握が意外と困難です。街角で人々の行動を見ていても過去との変化を有意に読み取ることは至難です。また、経済指標は数多くありますが、全て同方向を示すことは稀で、どれが実態を表しているか見極めなければなりません。この他、統計結果が後から修正されることもあります。

8月1日公表の米雇用統計では、5月分と6月分の雇用者数が合計で25万人超も下方修正されました。底堅いと思われていた米国の労働市場が、実は減速していたことが明らかになったわけです(左下図)。経済予測の前提になる現状把握の難しさを再認識させられる出来事でした。

◆コメ価格の先行きを左右しそうな天候要因

日本では今、天候が経済に強い影響をもたらす可能性が出てきています。ポイントはコメ価格です。日銀は最新の展望レポートで、コメをはじめとする食料品価格の動向について紙幅を割いて分析しました。物価や景気に与える影響が大きいためです。レポートは、前年同月比+3.4%だった6月の消費者物価(生鮮食品・エネルギーを除く)のうち、0.7%分がコメなどの食料品価格によるものだと指摘しました。また、「食料品価格上昇の(物価上昇率への)影響は徐々に減衰していく」との見通しも明記されました。実際、コメの平均販売価格は、政府備蓄米を含むブレンド米の流通拡大などにより、6月頃から低下しています(右下図)。

一方、日銀とは異なる見方も出始めています。コメの取引関係者による価格見通しDI(米穀安定供給確保支援機構)は、最新の8月調査分が+46と前月(+35)から急反発しました。これは価格低下を見込む声が急減したことを意味します。背景には、猛暑によるコメの白濁といった高温障害への懸念や、一部地域における渇水による水田のひび割れ等の天候要因があるようです。この予想どおりに、天候不順で作柄が悪化してコメ価格の上振れが続けば、高いインフレが継続する公算が出てきます。その場合には、消費者マインドを下押ししたり、早期利上げ観測を強めたりするなど、実体経済や金融市場にも影響が及ぶ可能性が高まります。

現局面では、天気予報は経済予測の大変重要なファクターとして見ていく必要があるでしょう。

(シニアストラテジスト 稲留 克俊)

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