揺れる豪金融業界と王立委員会の『中間報告』

揺れる豪金融業界と王立委員会の『中間報告』

豪州では、近年、金利の不正操作や、反資金洗浄(マネーロンダリング)法違反、監督官庁への虚偽報告といった銀行業界の不正が相次ぎました。これを受け、政府は2017年12月に王立委員会を設立し、銀行の不正に対する本格的な調査に乗り出しました。王立委員会は、銀行貸出や金融、保険、年金など様々な公聴会を経て、2018年9月28日に、『中間報告』を公表しました。

【ポイント1】王立委員会が銀行業界の不正に関する『中間報告』を公表

不正の背景は「貪欲さ」

■今回の『中間報告』は、不正行為の背景には「貪欲さ」、つまり「金融機関による、公正さの基本原則を犠牲にした短期的な利益追求」があったと指摘しました。

■規制当局に対しても、不正行為への追及の甘さを批判しました。不正行為が発覚しても、謝罪や改善計画の提出等で済まされることが多く、当該銀行が監督機関から弾劾されたり、処罰が下されることはほとんどなかった模様です。

【ポイント2】金融機関の自助努力で、状況は改善しつつある

監督機関は不正監視を強化

■金融機関は、調査の進行とともに、問題のあった商品や慣行の是正・廃止、事業部門の売却といった改善措置や、規制の厳格な適用等に努めてきました。

■一方、監督機関についても、不正監視の強化を進めています。これらを踏まえ、報告書は、「業界の構造や報酬体系に変化が見られる」と、一定の評価を下しています。

181029MK

【今後の展開】新法制定による規制強化には反対

■『中間報告』は、「豪州には、金融機関に公平、公正、効率的にサービスを提供するために必要なことを全て行うよう義務付けた法律が存在する。新たな法律を制定することは、既に複雑な規制体系が一段と複雑さを増すだけ」と述べ、新たな法律の制定による規制の強化には否定的な姿勢を示しています。

■王立委員会が『中間報告』を公表した9月28日の豪州市場では、銀行株が市場を上回る上昇となりましたが、その後のパフォーマンスは市場を下回っています。豪州の銀行が投資家の信頼を完全に取り戻せるか否かは、2019年2月までに纏められる予定の「最終報告」の内容等にかかっていると見られます。

(2018年10月29日)

印刷用PDFはこちら↓

揺れる豪金融業界と王立委員会の『中間報告』

関連マーケットレポート

2018年10月25日 底堅い展開が見込まれる豪ドル相場(2018年10月)

2018年10月 2日 豪州の金融政策は引き続き中立(2018年10月)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
世界の経済やマーケットの動向や、マーケットで注目される旬なキーワードを運用のプロがわかりやすく、丁寧に説明します。
■当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
■当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
■当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
■当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
■当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
■当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
■当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会