大幅に下落する一部新興国通貨(2018年6月)米利上げ期待の高まりと各国の政治リスクが下落要因
大幅に下落する一部新興国通貨(2018年6月)
【ポイント1】投資資金は米国へ回帰
米利上げ期待の高まりが影響
■米国経済は好調で、今後も財政面のサポートにより、更に勢いが増すと見られます。世界第2位の中国経済も安定しています。こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)は緩やかに利上げを進める見込みです。FRBの利上げにより、新興国が資金を引き寄せるハードルは少しずつ高まっています。最近目立つ、新興国の通貨下落の要因は各国固有の問題もありますが、その背景には米国金利の上昇があります。
【ポイント2】一部新興国通貨が下落
アジア通貨は比較的安定
■米国金利の上昇以外の要因を見てみると、各国が抱える政治リスクが影響していると考えられます。
■ブラジルでは、ディーゼル油の値上げに反対するトラック運転手の大規模ストが発生し、経済が混乱したことが嫌気され、レアルは大幅に下落しています。今後も10月の大統領選挙に向けて政局の不透明感が残ると考えられるため、レアルは不透明感の強い展開が見込まれます。
■メキシコでは、米国との貿易交渉に進展が見られず、先々の不透明感を伴ったペソの下落につながっています。今後のペソについては、7月の大統領・議会選挙での左派勝利のリスクや、米国とメキシコの貿易交渉が難航していることがペソの押し下げ圧力になる一方、メキシコ中央銀行の利上げ姿勢は高金利であるメキシコの通貨のプラス材料と言え、上下に振れやすい展開となりそうです。
■トルコでは、大統領の金融政策への介入姿勢が嫌気され、リラが一時大幅に下落しました。その後、トルコ中央銀行による矢継ぎ早の利上げにより、リラ相場は下落に歯止めがかかりました。今後は、対外収支の赤字傾向、高水準のインフレ、米国や欧州連合との関係改善の目途が立たない等の悪材料が続く一方、6月下旬の大統領選挙で政治的な不透明感が一旦は落ち着くことや、利上げによって高まった金利水準への需要がある程度期待できることから、リラの下落傾向はやや落ち着くと考えられます。
■以上の3か国と比べるとアジアの通貨は安定しています。なかでも経常赤字のインドやインドネシアの通貨がやや大きめに下落しましたが、いずれもインフレがそれほど高まっていないことに加え、中央銀行が利上げに踏み切るなど、適切な政策対応を行っていることもあり、足元では両国の通貨は落ち着きを取り戻しています。
(2018年 6月 8日)
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