民間消費を軸に安定成長が見込まれる豪州経済 豪ドルも堅調な展開へ

民間消費を軸に安定成長が見込まれる豪州経済 豪ドルも堅調な展開へ

 

【ポイント1】緩やかな成長見通し

民間消費が成長のけん引役

 

(1)順調に拡大する雇用

■2017年1-3月期の豪州の実質GDP成長率は前期比+0.3%と、前期の同+1.1%から鈍化しました。ハリケーンの影響で輸出が落ち込んだためです。一方、民間消費や在庫投資は堅調を維持しました。

■民間消費が堅調を維持しているのは、雇用が伸びているからです。直近5月について見ると、雇用者数は前月比4.2万人増、豪州準備銀行(RBA)が重視するトレンド値(雇用者数は月ごとの変動が激しいため、豪州統計局は変動を均した値をトレンド値として公表)は同+2.5万人でした。トレンド値は16年8月の同+0.4万人を底に緩やかな改善傾向にあります。一方、失業率は5.5%でした。前月に比べ0.2%ポイントの改善です。

■企業の採用意欲は強く、求人広告件数が増加していることから、今後も雇用は拡大を続ける可能性が高いと考えられます。豪州経済は、民間消費を軸に安定した成長を持続する見通しです。

(2)物価は緩やかな上昇、金融政策は現状維持

■17年1-3月期の消費者物価上昇率は、RBAが重視するトリム平均値で見て、前年同期比+1.9%となりました。ガソリン価格の上昇など一時的な要因の影響もありましたが、ようやくRBAの目標値である+2%~+3%の下限に接近してきました。今後も景気の持続的な拡大、賃金の上昇に伴い緩やかに上昇する見込みです。

■物価はほぼRBAの想定通りの動きとなっています。他方、労働市場では失業率が改善基調にあるものの、需給は引き締まった状態には至っていません。物価と失業率から判断すると、RBAは少なくとも年内、政策金利を現行の1.50%で据え置く見通しです。

 

 

 

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【ポイント2】鉄鉱石価格は安定へ

中国の需要が底入れの見通し

 

■豪州の主力輸出品のひとつである鉄鉱石の価格は、17年2月下旬に1トン当たり90ドル台半ばまで上昇しましたが、これを当面のピークとして下げに転じました。足元では同50ドル台半ばの水準で推移しています。

■石炭は、鉄鋼用原材料としてのコークス製造などに利用される原料炭で見て、17年2月中旬の1トン当たり約150ドルから一時同300ドル台まで上昇したものの下落、直近では急騰前の水準である同150ドル台で推移しています。

■鉄鉱石、石炭とも、中国が増産を進めたこと、それにより在庫が積み上がってきたことが、価格の下落につながりました。しかし、鉄鉱石については、足元の価格が中国鉱山の損益分岐点を下回ってきたと見られることから、今後は減産に向かう公算が大きいと考えられます。都市化政策を推進する中国では、社会資本整備投資の増大が見込まれ、間もなく鉄鉱石の需給、価格は安定に向かう見通しです。

■一方、石炭については、環境規制の強化、特に大気汚染の解消を図る中国での生産規制が当面の焦点となりそうです。

 

 

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【今後の展開】堅調な展開が見込まれる豪ドルの対円相場

 

■豪ドルの対円相場は、16年6月下旬を当面の底に戻り歩調を辿ってきたのち、資源価格の調整を受けて下落しましたが、足元では反発の気配を見せています。

■今後は、①豪州経済の順調な成長が見込まれる、②資源価格の安定が予想される、③経常収支の黒字転換の見通し、④RBAの中立姿勢維持に対して、日銀は緩和姿勢を継続という、金融政策の方向性に違いがある等から判断すると、豪ドルの対円相場は底堅く推移すると予想されます。先進国の中で豪州の利回り水準は高く、豪ドルや豪州債等は投資対象として魅力が大きいと考えられます。

 

 

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(2017年 6月20日)

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