インフラ投資の拡大で中期的な成長を目指す豪州経済

インフラ投資の拡大で中期的な成長を目指す豪州経済

【ポイント1】消費を支えに緩やかに拡大

 

物価は安定、金融政策は中立維持へ

 

(1)家計消費の伸びが1-3月期に回復

■2016年10-12月期の豪州の実質GDP成長率は、前期比+1.1%になり、前期の同▲0.5%から大幅に改善しました。金利低下や雇用の堅調な拡大を支えに家計消費が回復したうえ、資源価格の持ち直しを受け輸出が上向いてきたためです。

■労働市場について見ると、直近3月の雇用者数は前月比6.1万人増、豪州準備銀行(RBA)が重視するトレンド値(雇用者数は月ごとの変動が激しいため、豪州統計局は変動を均した値をトレンド値として公表)は同+1.6万人でした。トレンド値は16年8月の同+0.2万人を底に緩やかな改善傾向にあります。一方、失業率は5.9%でした。

■企業の採用意欲は高く、求人広告件数が増勢を維持していることから、今後も雇用は増加を続ける可能性が高いと考えられます。豪州経済は、家計消費を軸に拡大基調を継続する見通しです。

 

(2)物価は緩やかな上昇、金融政策は現状維持

■17年1-3月期の消費者物価上昇率は、RBAが重視するトリム平均値で見て、前年同期比+1.9%となりました。ガソリン価格の上昇など一時的な要因の影響もありましたが、ようやくRBAの目標値である+2%~+3%の下限に接近しました。今後も景気の持続的な拡大、賃金の上昇に伴い緩やかに上昇する見込みです。

■物価はほぼRBAの想定通りの動きとなっています。他方、失業率は改善基調にあるものの、雇用の増勢が緩やかなため、依然高い水準にあります。物価と失業率の動きから判断すると、RBAは年内いっぱい政策金利を現行の1.50%で据え置く見通しです。

 

 

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【ポイント2】インフラ投資で景気を支援

 

17/18年度予算案を公表

■5月9日に発表された17/18年度予算案では、17/18年度の財政赤字予測が294億豪ドルとなり、16/17年度の年央時点における見通し▲287億豪ドルに比べ赤字幅が僅かながら拡大しました。

■もっとも、財政健全化の方針は堅持されています。実際、16/17年度の予測値▲376億ドルからは改善すると予想され、最終的には20/21年度の財政黒字化を目指しています。

■今回の予算案で示された経済政策は、法人所得税の減税(26年度までに法人税を現行の30%から25%に引き下げる方針ですが、まずは中小企業の税率を先行して引き下げ)、寡占化が進む大手銀行に対する課税、歳出面では中小企業向け支援策や、主として空港や鉄道網整備のための10年間で750億豪ドル(約6兆2,000億円)規模のインフラ(社会資本)投資が盛り込まれました。社会資本への投資拡大は中期的に豪州経済の下支え役になると予想されます。

 

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【今後の展開】堅調な展開が見込まれる豪ドルの対円相場

 

■豪ドルの対円相場は、資源価格の持ち直しや日豪金利差の拡大を受け、昨年6月下旬を当面の底に戻り歩調を辿ってきましたが、足許では騰勢一服となっています。

■①インフラ投資を支えとする中期的な豪州経済の成長見通し、②経常収支の黒字転換見通し、③RBAの中立姿勢維持に対して、日銀は緩和姿勢を継続という、金融政策の方向性の違い、④資源価格の持ち直し等を踏まえると、今後も豪ドルの対円相場は底堅く推移すると予想されます。先進国の中で豪州の利回り水準は高く、豪ドルや豪州債等は投資対象として魅力が大きいと考えられます。

 

 

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(2017年 5月 16日)

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