動き出すEUからの「離脱交渉」(英国)
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昨年6月、英国は国民投票により、欧州連合(EU)からの離脱を選択しました。また今年1月には、EU単一市場から完全離脱する政府方針として交渉上の12の優先項目を示しました。そして、今月29日には英国はEUに離脱の通告を行う予定です。今後は2019年3月まで2年間、英国とEUとの「離脱交渉」が行われます。今年、主要各国で重要な選挙が目白押しとなっている欧州でポピュリズムの台頭が注目されるきっかけとなった英国の行方は? |
【ポイント1】29日、英国は離脱通告を行う予定
離脱通告から2年間が「離脱交渉」の期間
■英国では、3月13日にEUに正式に離脱通告を行う権限をメイ首相に与える法案が議会で可決、16日にエリザベス女王の承認を得て、成立しました。そして29日には、メイ首相はEUに対して離脱を正式に通知(リスボン条約第50条の行使)する予定です。英国がリスボン条約第50条を行使すると、2日後の31日までに、EUが英国の離脱のためのガイドラインを発表する予定となっています。また、リスボン条約第50条が行使されてから2年間が「離脱交渉」の期間となります。
【ポイント2】「離脱交渉」で注目される争点
英国が掲げる12の優先項目と、EUが求める負担金
■英国が今年1月に発表したEU単一市場からの「離脱交渉」上の12の優先項目では、移民の規制やEU市場との自由貿易、EU域外国との新たな貿易協定など、やや英国にとって都合の良い内容が提示されており、こうした点が今後の交渉において注目されます。
■このほかEUの高官は、英国がEU加盟国であった間に約束された拠出金など、600億ユーロともいわれる金額を英国に支払うよう求めると発言している一方、英国はこれに反発しており、この点も交渉上の大きな争点となります。
【今後の展開】非公式EU首脳会談の後、1~2カ月後に「離脱交渉」スタートか
■31日までにEUが発表する英国の離脱のためのガイドラインは概要にとどまるため、さらに詳しい方針を協議するために、4月29日に非公式のEU首脳会談が開催される予定です。またその詳細な方針に対するEU加盟27カ国全ての合意を取るためには1~2カ月かかると見られ、その合意を持ってようやく正式な「離脱交渉」がスタートすることになります。ただし4月下旬はフランス大統領選挙の期間にあたり、延期も考えられます。
■3月25日、EUの基本条約となるローマ条約の調印から60年を迎えました。発足以降、拡大を続けてきたEUは英国の離脱により、初めて縮小することになります。今年は欧州主要各国で選挙が予定され、先日のオランダ総選挙では極右政権誕生とはならなったものの、引き続きポピュリズムの躍進が注目されます。ポピュリズム台頭の代表例となった英国のEU離脱選択と欧州はどのような過程をたどるのか、今後も注目です。
(2017年 3月 29日)
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