2016年の振り返りと2017年の見通し(インド)引き続き好調なマクロ経済により、金融市場も堅調に

2016年の振り返りと2017年の見通し(インド)

 

【ポイント1】改革は進展、マクロ経済は好調

インフレは3%台に低下、経常赤字はほぼ解消

■モディノミクス:
2016年にモディノミクス改革のうち、重要法案が2件成立しました。1件は、破産法(5月28日成立)で、もう1件がGST(物品・サービス税)導入の前提となる憲法改正案(9月8日成立)です。これらは、中長期的にインドの持続的な経済成長を後押しする構造改革です。モディノミクス改革は着実に進みました。

■金融政策:
2016年に政策金利(レポ金利)は、2回の利下げで0.50%引き下げられました(2015年:1.25%引下げ)。ラジャン前準備銀行総裁(中央銀行総裁)の任期満了(9月4日)後も混乱はなく、パテル新準備銀行総裁のもと10月3~4日に第一回金融政策委員会が開催され、0.25%の利下げが実施されました。これにより新たな枠組みで始まった準備銀行の金融政策が引き続き緩和的であることが確認されました。

■経済成長:
2016年4-9月期の実質GDP成長率は、+7.2%(2016年3月に終わる年度:+7.2%)と消費増大により依然好調を維持しています。しかし、足元では、高額紙幣廃止・入れ換えに伴う交換新紙幣の不足などによる消費の減退が懸念されています。

■為替:
インドルピーの対米ドル為替レートは、2016年を通じて安定していましたが、米ドル高の進行などにより10月末から12月22日までで約1.8%弱含みました。しかし、対米ドルでのインドルピーの下落率は他のアジア諸国と同程度です。また、対GDP比での経常赤字は、直近▲0.3%とここ数年着実に改善しており、インドルピーの安定を下支えしていると思われます。

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【ポイント2】インド金融市場は堅調

特に債券市場は急騰

■インド株式市場:
2016年のインド株式市場(ニフティ指数)は、中国経済減速や原油価格急落を背景に年明けから弱含んで始まり、2月末には年初から▲20%(円ベース)下落しました。その後、①経済見通し改善、②第7回給与委員会勧告による公務員給与値上げ実施、③モンスーン期間の十分な降雨による地方経済回復、④流動性改善と調達資金コスト低下などから徐々に上昇トレンド入りしました。ただ、足元は高額紙幣廃止による消費低迷不安から調整しています。年初から2016年12月22日現在まで、ニフティ指数は▲4.5%、ニフティ中型株指数は▲0.5%下落しました(円ベース)。

■インド債券市場:
インド債券市場は、2016年も2015年に続き好調です。インフレは抑制され、金利は低下(債券価格は上昇)しました。2016年12月の消費者物価指数の前年同期比は、2015年平均の+5.61%に対し、+3.63%に低下しました。政策金利引下げと流動性供給施策などにより、指標銘柄である10年国債利回りは年初の7.76%から6.50%に低下(債券価格は上昇)しました。

 

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【今後の展開】2017年も好調なマクロ経済は続き、金融市場も堅調さを維持

■2017年前半に①新年度予算発表(2月)、②ウッタルプラデッシュ州(インド最大人口の州)選挙(2月か3月)、③GST法案成立(4月見込)と注目イベントが続きます。ただ、インドのマクロ経済は、2016年同様インフレの低位安定と経常赤字並びに財政赤字の抑制的な傾向が続くと見込まれます。これらによるインドルピーの下支えが期待できます。

■債券市場は、①預金増加による銀行の国債購入、②インフレ低下の継続が追い風になると思われます。株式市場は、高額紙幣廃止による消費低迷を嫌気した短期的な調整が予想されますが、政府によるインフラ投資継続見込みや企業の資金調達コスト低下により企業業績の回復が予想され、上昇に転じると見込まれます。

(2016年12月26日)

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