ドイツは「難民」対策で財政拡大へ(欧州)
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「難民」は、民族紛争や迫害などで、自らの居住国・地域を離れざるを得ない人々のことを言います。2015年に欧州連合(EU)に「難民」申請した人は約100万人と、前年比約78%増えました。そのうち、30万人強が、内戦が激化したシリアからの「難民」で、また、ドイツへの申請者は約44万人と全体の半数近くを占めました。ドイツは2015年の財政黒字を「難民」対策に使う方針を決めました。 |
【ポイント1】一部の国は、財政負担が重荷
EU各国の受け入れの分担は進まず
■EUは昨年9月の欧州首脳会議で、受け入れる16万人の「難民」の分担を決定しました。しかし12月時点で実際に受け入れ国が決まったのは232人にとどまり、対策の実行が進んでいません。
■「難民」対策が進まない主な理由は、財政負担と見られます。中東欧の一部の国にとっては、「難民」受け入れに伴う、住居、食料、医療、教育などの支援に伴う財政負担が大きく、国民の理解が得られないようです。経済的理由から「難民」を装う経済「難民」との見分けがつきにくいことも背景です。
【ポイント2】「難民」の流入抑制へ
シリアの和平交渉は難航
■EUは受け入れた「難民」の各国への分担を割り当てる一方、「難民」の流入抑制にも動いています。シリアからの「難民」の流入を抑制するため、避難してきた「難民」の出国抑制を隣国トルコに要請しました。また、欧州警備隊を創設し、国境管理を強化することを検討しています。
■シリア「難民」問題の根本的な解決は内戦の停戦です。しかし、国連の仲介による和平交渉が1月29日に開始されたものの、交渉は3日に中断しました。和平交渉の進展には時間を要すると見られます。
【今後の展開】ドイツは財政を拡大し、「難民」支援継続へ
■ドイツは、財政黒字の活用へ
欧州最大の「難民」受け入れ国であるドイツのメルケル首相は、昨年後半に支持率が急落したこともあり、国境管理の強化へ方針を転換しました。しかし、同首相は、「難民」受け入れに寛容な姿勢を継続し、2015年の約121億ユーロ(約1.6兆円)の財政黒字を「難民」対策に使う方針を決めました。
■「難民」受け入れは中期的にはプラス面も
「難民」の受け入れは、財政負担が増すものの、中期的には生産力の増加につながり、経済成長にプラスとなる面もあります。スウェーデンなども「難民」関連の財政支出の拡大を決めており、今後高齢化が進む欧州では、財政に余裕のある国を中心に、「難民」支援の財政拡大の動きが見込まれます。
(2016年2月10日)
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