世界の「粗鋼生産」、6年ぶり減少(グローバル)
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「粗鋼」は、鋼材の原料となる鋼(はがね)のことです。一般的には高炉に鉄鉱石と原料炭を投入して抽出した銑鉄から、転炉で炭素や不純物を除去したり、鉄の性質を向上させる元素を加えたりして作られます。高炉以外にも主に先進国では、鉄のスクラップを回収し、電気炉で溶解する方法もあります。「粗鋼生産」は、最終的な鋼材生産のバロメーターといえます。 |
【ポイント1】中国は34年ぶりの減少
2015年は主要地域がいずれも減少
■2015年の世界の「粗鋼生産」は、前年比2.8%減の16.2億トンとなりました。減少するのはリーマンショック後の2009年以来6年ぶりです。
■国・地域別では世界生産の約半分を占める中国が2.3%減と、実に34年ぶりの減少となったほか、日本が5.0%減、米国が10.5%減、EUが1.8%減と、主要な生産国・地域がいずれもマイナスとなりました。
【ポイント2】鋼材、原料とも価格下落
中国は輸入国から最大の輸出国へ
■「粗鋼生産」減少の背景には、最大の消費国である中国の需要の落ち込みと、中国からの鋼材輸出増加により各地域の生産を圧迫していることがあります。2015年の中国の鋼材輸出量は、前年比20%程度増加したようです。中国はかつて世界最大の鋼材輸入国でしたが、現在は世界最大の輸出国に転じています。
■この結果、代表的な汎用品種であるホットコイル(熱延鋼板)の中国での価格は、年間約35%下落しました。原料の鉄鉱石や原料炭の国際価格もそれぞれ約39%、約31%下落しています。原料価格と製品価格が下落する悪循環に陥っています。
【今後の展開】中国の過剰設備解消が需給改善のカギ
■中国政府は過剰能力削減を表明
景気減速により、中国の2016年の鋼材消費量は伸び悩む見通しです。中国政府は1月4日、鉄鋼および石炭業界は過剰設備が問題とし、老朽設備や安全に問題のある設備の大幅な廃棄を実行すると表明しました。
■生産能力削減を実際に実行できるかがカギ
設備廃棄の表明は過去に何度も行われましたが、地方政府、企業の反発から十分に実行されませんでした。中国政府は、「粗鋼生産」の12~19%に相当する能力を削減する目標を打ち出しましたが、実際に実行に至るかが需給改善のカギと見られます。
(2016年2月1日)
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