「物価高」は長期化の様相(ブラジル)

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ブラジル中央銀行(以下、中銀)はインフレターゲット制度を採用しています。ターゲット(目標)は消費者物価指数の上昇率で前年比+4.5%を中心とし、上下2.0%(2017年以降は1.5%)を許容範囲としています。実際の物価上昇率は、2010年9月以降目標を上回る「物価高」が続いています。労働者に手厚い雇用政策、物流の未整備、複雑な税制など、いわゆるブラジルコストが「物価高」の主な背景といわれています。

【ポイント1】財政再建が「物価高」の一因に

電気料金などの規制分野の物価が大幅に上昇
■このところ、ブラジルの「物価高」が止まりません。その一因には、家庭向け電気料金の年50%程度の引き上げなどがあります。1年ほど前までは、政府がこうした規制分野の価格を抑えていたこともあり、物価上昇率は目標レンジの上限近辺で比較的安定していました。しかし、政府が財政再建に向け電力会社への補助金を削減し、電気料金の大幅な値上げを認めたことが物価上昇につながりました。財政収支の悪化を受けた政府の政策変更が「物価高」につながっており、ブラジルコストの一例といえます。

■また、規制分野以外でも物価上昇が加速しています。公共料金値上げの価格転嫁、天候不順による野菜など食品の値上がり、ブラジルレアル安による輸入価格の値上がりなどが影響していると見られます。

【ポイント2】物価スライドで賃金上昇

中銀は物価と景気の両方に配慮
■2016年1月から、物価スライド制の最低賃金が従来比+11.6%引き上げられました。一般の賃金も同様に引き上げられる見込みです。これもブラジルコストの一つであり、賃金の増加で消費が支えられる一方、「物価高」が続く要因となります。

■中銀は、「物価高」を警戒する一方、深刻化している景気低迷にも配慮せざえるを得ない状況です。政策金利の引き上げは実施しづらく、金融政策には手詰まり感が強まっています。

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【今後の展開】レアル安を受けた「物価高」の長期化や、景気の下振れに要注意

レアル安などから、「物価高」は当面続く見込み
いわゆるブラジルコストに加え、これまでのレアル安による物価押し上げも懸念されます。利上げによる物価抑制が期待しづらくなったこともあり、「物価高」は当面続きそうです。

景気下振れには引き続き注意が必要
1月の利上げ見送りは景気に配慮したものでしたが、市場では、「物価高」の解消による消費や投資の持ち直し期待は、後退しました。景気の下振れには、引き続き注意が必要な状況です。

(2016年1月29日)

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