アジア諸国の対外債務と米国の利上げ

アジア諸国の対外債務と米国の利上げ

【ポイント1】アジアの主要通貨、米利上げを前に通貨安が進む

中国の景気減速も影響
■12月の米国の利上げ決定を前に、アジアの主要通貨は下落傾向にありました。米国の金利上昇に伴い、アジア諸国から米国への資金回帰が発生するとの懸念が背景にあります。また、中国の景気減速がこの懸念を強めた面もあります。

■ただし、対米ドルでの通貨安は、97年~98年のアジア通貨危機当時と比べて、総じて緩やかとなっています。急激な為替変動が避けられている背景には、経常収支が黒字化し短期対外債務の外貨準備に対する比率が低下している国が多いこと、米ドルペッグ制から管理フロート制への移行が進んだことなどがあります。

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【ポイント2】対外債務は大きく改善

リーマン・ショック前からは悪化も水準は低く、悪化傾向は一服
■報道によると、アジア諸国の企業債務などは08年のリーマン・ショック前に比べて倍増しており、景気減速下で債務への不安が高まっていることを指摘する見方もあります。確かに、短期対外債務の外貨準備に対する比率も13年まで上昇傾向にありましたが、水準はアジア通貨危機当時に比べて大きく改善しています。経常収支の改善なども踏まえると、危機的な状況に発展する可能性は低いと考えられます。

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【今後の展開】米利上げは極めて緩やかに行われ、米ドル高の進行も緩やか

■米国では、インフレが上向くペースが緩慢なため、利上げは年2回程度の極めて緩やかなペースとなる見込みです。米ドル高圧力も緩やかになると考えられます。

■アジア地域の経済は、中国の景気減速が落ち着くにつれ、徐々に増勢を取り戻す見込みです。対外収支・債務の改善、緩やかな米国の利上げを踏まえると、アジア通貨安圧力は限定的と考えられます。

 

(2015年12月25日) 

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