ギリシャが銀行の「ベイルイン」を法制化(欧州)

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「ベイルイン」は、銀行などの金融機関が破たんした場合に、その損失を株主に加えて預金者や社債保有者も負担して資本などを増強し、金融機関を再生する救済方法を指します。以前は、「ベイルアウト」と呼ばれる、金融機関に税金を投入する救済方法が一般的でした。ギリシャはこの7月に、欧州連合(EU)などの第3次金融支援協議開始の条件とされた、「ベイルイン」を法制化しました。

【ポイント1】法制化はギリシャ支援協議開始の条件

10万ユーロ超の大口預金者も損失負担
■欧州連合(EU)は金融機関破たん時の手続きを「金融機関の再生及び破たん処理に関する指令(BRRD)」としてまとめており、2016年1月までの導入を加盟各国に求めています。「ベイルイン」はそのうちの破たん処理手続きの一つとして挙げられています。BRRDの導入はギリシャの第3次金融支援協議開始の条件とされ、ギリシャ政府は7月に法制化しました。
■ギリシャが法制化した「ベイルイン」手続きでは、金融機関の破たん時に、株主に加えて10万ユーロ超の大口預金者も損失を負担し、資本増強などにより再生を目指すことが定められています。

【ポイント2】損失の巨額化と公平性の確保が背景

預金者などはリスクに応じて行動へ
■破たん処理の主流が「ベイルアウト」から「ベイルイン」に変わった背景は、破たん時の損失額の巨額化と公平性の観点です。破たんの連鎖回避にはスムーズな破たん処理が求められ、そのためには、広範囲で損失を分担する公平な仕組みが必要とされます。
■「ベイルイン」の法制化により、預金者や社債保有者などはリスクに応じて行動することが求められ、金融機関のガバナンス強化につながることが期待されています。

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【今後の展開】第3次金融支援協議はスムーズに進展、ギリシャ不安は後退へ

■第3次金融支援協議はスムーズに進展
第3次金融支援協議は、8月20日のギリシャの国債償還期限前の合意を目指して、比較的スムーズに進んでいると報道されています。最大860億ユーロのうち、金融機関の資本増強などに約100億ユーロが用いられる見込みで、これまでのような金融市場の不透明感が高まる状況は当面回避されると見込まれます。

■安全網の整備が進む
欧州では、前回2012年のギリシャ危機以降、今回の第3次金融支援の窓口となっている欧州安定メカニズム(ESM)がスタートし、金融システムが強化されました。また、単一監督メカニズム(SSM)や単一破綻処理メカニズム(SRM)などの整備も進み、ギリシャの金融機関の破たんが他の国に波及するリスクは今後さらに薄らぐと見込まれます。

(2015年8月12日)

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