深まる「政治情勢の混迷」(トルコ)

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公正発展党(AKP)は、6月の総選挙で過半数の議席を維持できず、他党との連立を目指しています。ダウトオール党首(暫定首相)を中心とした連立交渉は難航しており、8月下旬までに新内閣が成立しなければ再選挙となる見込みです。そのようななか、政府は安全保障政策を転換してイスラム国(IS)やクルド労働者党(PKK)の軍事拠点を攻撃し、「政治情勢の混迷」が深まりつつあります。

【ポイント1】トルコ軍は、ISとPKKの軍事拠点攻撃を開始

テロの頻発を受けて、政府は両勢力に対し、強硬姿勢に転換
■トルコ軍は、7月下旬にシリアにあるイスラム過激派組織イスラム国(IS)の軍事拠点を空爆しました。トルコ政府は、これまでシリアのアサド政権と対立する立場が同じISへの攻撃には消極的と見られていました。しかし、ISによるトルコ国内でのテロ事件が頻発したことを受け、強硬姿勢に転じた模様です。
■また、トルコ軍はイラクにあるクルド労働者党(PKK)の軍事拠点への空爆も開始しました。PKKはクルド人の独立国家を目指す非合法の武装組織です。PKKはトルコ政府が進めている融和政策に不信を抱き、再びテロ事件を起こしていました。

【ポイント2】PKKへの攻撃で民族融和が後退

クルド系政党の支持低下狙いとの批判も
■PKKへの軍事行動の背景には、総選挙でAKPが議席数を多く減らした主な要因がクルド系政党(国民民主主義党、HDP)の躍進であったことに対する反発ではとの指摘があります。再選挙が視野に入るなか、AKPがHDPの人気低下を狙った動きとの見方が多く報道されています。
■AKPはそのような意図を否定し、HDPもPKKとの連携を否定しています。しかし、民族融和の動きは大きく後退した形となり、PKKの反撃などからトルコ国内の治安悪化が懸念される状況になりました。

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【今後の展開】「政治情勢の混迷」による通貨安には、中央銀行の安定化策を期待

■連立交渉は一段と難航、再選挙の観測強まる
AKPはダウトオール党首(暫定首相)を中心に新内閣の成立に向けて他党と交渉を続けています。連立の有力候補とされる第2党の共和人民党(CHP)とは、外交、教育、大統領の権限などを巡り、政策の違いを埋め切れていない模様です。CHPがPKK攻撃に批判的なこともあり、「政治情勢の混迷」から新内閣が成立せず、再選挙が行われるとの観測が一段と強まっています。

■トルコ中央銀行の通貨安定化策に期待
8月下旬までに新内閣が成立せず再選挙になった場合、実施時期は11月頃になるとの観測が出ています。治安の悪化や「政治情勢の混迷」により、トルコの株式、債券、通貨は下振れしやすい状況が当面続きそうです。ただし、AKPの退潮により、トルコ中央銀行への政府の圧力は弱まったと見られます。同行は、トルコリラ安には利上げや為替介入などで通貨の安定化を図ると思われます。

(2015年8月7日)

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