ワクチン接種の加速が年後半の景気・業績回復を後押し 日米株価の乖離は年後半に縮小しよう

ワクチン接種の加速が年後半の景気・業績回復を後押し

【ポイント1】緊急事態宣言は短期集中型

4-6月期のマイナス成長は回避

■今週の日本株式市場は、日経平均株価で29,000円を挟み小動きで推移しています。一方、米国株式市場は、NASDAQ総合指数が26日、S&P500種指数は29日にそれぞれ最高値を更新しており、日米両市場の値動きに乖離が生じています。日経平均株価が小動きで推移しているのは、大型連休を控え、緊急事態宣言が発令されたことに背景があります。また、米国では連邦公開市場委員会(FOMC)の開催やバイデン米大統領の就任後初の施政方針演説、1-3月期GDPの発表などを受けた金融市場の動向を見極めようとしたためと考えられます。加えて両国では、ワクチン接種の進展度合いに大きな差があり、年後半の景気回復に対する期待度が異なっていることも影響していると思われます。

■政府は、4月25日に、東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県に対して、3回目の緊急事態宣言を発令しました。今回は、広範な施設が対象となった1回目ほど厳格ではないものの、2回目に比べると、百貨店・ショッピングモール等の大型商業施設や酒類・カラオケ設備を提供する飲食店などに対して休業を求めるなど、感染対策を強化する内容となりました。一方、期間は17日間と過去2回に比べて短く、対象地域のGDP割合も32%にとどまっています。政府は、「短期集中型」の措置で感染抑制に臨む構えで、経済への影響を極力抑えようとしています。弊社の推計では、21年4-6月期のGDPに対して▲0.5%(年率▲1.8%)の下押し圧力になると予想しています。対象地域が限られる現状の措置であれば、悪影響は一定程度及ぶものの、4-6月期のマイナス成長への転換は回避できる見通しです。

【ポイント2】FOMCは無風

バイデン大統領の施政方針演説を好感

■米国では4月27-28日にFOMCが開催され、金融緩和政策が維持されました。大方の予想通りの内容であり、米国株式市場も小幅な下落にとどまるなど、マーケットの反応も限定的でした。声明文では、景気判断がやや上方修正され、「ワクチン接種や力強い政策サポートにより、経済指標は強含んだ」、「パンデミックの影響を受けたセクターには弱さが残るものの、改善がみられる」と評価されました。一方、物価判断に関しては「上昇したものの、大半が一時的な要因を反映したもの」とされ、予想通り慎重な姿勢が維持されました。

■一方、28日夜に、バイデン大統領の今後1年間の施政方針を示す初めての議会演説が行われました。新型コロナ対策としてワクチン接種の進展と成果を強調した上で、1.8兆ドルの大型景気対策第2弾(ファミリープラン)を公表しました。併せて高額所得者向けの税率やキャピタルゲイン税の税率の引き上げにも言及しました。演説中、先物市場で好感される場面もありました。

【今後の展開】ワクチン接種の加速で日米株価の乖離は年後半に縮小しよう

■日本株式市場は、国内要因では引き続き新型コロナウイルスの感染状況とワクチンの接種状況に注目する必要があります。米国では新規感染者が増加しても、ワクチン接種の広がりが加速したことで景気の回復期待が後押しされ、株式市場にプラスの影響を与えました。日本も、ワクチン接種が本格化することで、景気回復への期待が高まると考えられます。政府によれば、ファイザー社のワクチンが連休明けから毎週約1,000万回分ずつ日本に供給される見通しです。さらに、9月末までにファイザーから8,700万人分、モデルナから2,500万人分のワクチンが供給される予定とみられ、16歳以上の接種対象者をすべてまかなえる見通しです。ワクチン接種は7-8月頃から加速すると思われ、同時に新規感染者数の抑制が確認されれば、年後半以降の景気・業績の回復に対する期待は大幅に改善されると思われます。

■米国では、ワクチン接種の浸透はほぼ峠を越え、景気は内需を中心に急速に回復しつつあります。4月29日に発表された1-3月期のGDP速報によれば、前期比年率で+6.4%と、10-12月期(同+4.3%)より加速しました。個人消費が同+10.7%と大きく伸びたことが寄与しました。今後も、個人消費の改善を軸に経済の正常化が進むと思われ、長期金利も緩やかに上昇する見通しです。こうした中、追加経済対策(1.9兆ドルの新型コロナ対策レスキュープラン)の効果や大型景気対策(第1弾ジョブズプラン(2.25兆ドル)、第2弾ファミリープラン(1.8兆ドル))に対する期待が引き続き米国株式市場を支えると考えられます。

■日本株式市場は、米国株式市場との間に乖離が生じていますが、ワクチン接種の加速と新規感染者の抑制が確認できれば、年後半は来年度に向けて景気・業績回復期待が高まり、米国株式市場との乖離が縮小する展開が期待できそうです。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

(2021年4月30日)

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