4-6月期の日米企業業績は前年同期比大幅減益 米国は業績回復に弾み、日本はタイミングを探る展開
4-6月期の日米企業業績は前年同期比大幅減益
【ポイント1】米国の当期純利益は前年同期比▲33.2%
「情報技術」は同+1.8%、業績発表企業の95%が予想を上回る
■現在、米国や日本で2020年4-6月期の企業業績発表が進んでいますので、その状況を整理します。
■米国はS&P500採用企業のうち70%の企業が決算を発表しました(8月4日現在)。
■調査会社リフィニティブによると、4-6月期の決算(当期純利益)は前年同期比▲33.2%となる見通しです。新型コロナウイルスの感染拡大や、ロックダウン(都市封鎖)による移動制限などの影響で、米国の主要企業の業績は大幅な落ち込みとなっています。
■セクター別にみると、ロックダウンの影響から、外出を伴う消費行動が制約されたことで、「一般消費財」が前年同期比▲76.8%と大幅な減益になる見込みです。また、原油価格の下落を反映して、「エネルギー」も同▲167.9%と大幅な減益となっています。一方、株式市場のけん引役となっている「情報技術」は同+1.8%、「ヘルスケア」は同+1.9%の増益となる見込みです。
■これまで業績を発表した企業の80%以上が予想を上回る結果となっています。最も上振れが大きいセクターは「情報技術」で95%、次いで「ヘルスケア」が91%です。こうした上振れは年後半以降の業績を見通す上で、投資家の信頼を高める効果があり、株式市場には大きなプラス要因となっています。
【ポイント2】日本は大幅な減収減益
「医薬品」が大幅増益
■日本は東証1部(除く金融)の時価総額ベースで50%弱の企業が決算を発表しました。4-6月期決算は売上高が前年同期比▲19.9%、営業利益が同▲59.1%、経常利益は同▲50.4%、当期純利益が同▲76.3%と大幅な減収減益となる見込みです(2020年8月3日現在、QUICK集計ベース)。新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、世界中で人・モノの移動が大幅に制限され、生産や消費など経済活動が大きく停滞したことが背景です。
■製造業、非製造業(除く金融)別にみると、ともに大幅な落ち込みですが、製造業は売上高で同▲25.1%、営業利益で同▲79.7%と非製造業の同▲9.9%、同▲32.8%に比べてより大きな減収減益となる見込みです。
■業種別にみると、営業利益ベースで8セクターが赤字、9セクターが大幅減益です。増益となるセクターは「鉱業」、「食料品」、「パルプ・紙」、「医薬品」、「情報・通信業」など9セクターです。「医薬品」は売上高が同▲3.2%と小幅な減収となったものの、営業利益が同+93.2%、経常利益が同+137.0%、当期純利益が同+216.0%と大幅な増益となる見通しです。新型コロナウイルスによる医療品の需要拡大が背景です。
■規模別には、大型株(TOPIX100)が大きな減収となる見込みです。中型株(TOPIX Mid 400)は当期純利益は赤字に転落する見通しです。小型株(TOPIX Small)も30%を超える減益となる見通しです。
■なお、2020年度の経常利益の伸び率予想は前年度比▲15.4%(QUICKコンセンサス)ですので、年度後半は緩やかな回復が期待できそうです。さらに、21年度の伸び率は同+35.4%と製造業中心に大幅な業績改善が予想されています。
【今後の展開】米国の企業業績は改善傾向を強めよう。日本はタイミングを探る展開
■今後の業績を見通すために、12カ月先予想1株当たり純利益(EPS)を見ました。
■米国(S&P500種)の予想EPSは回復傾向を鮮明にしています。米国の企業業績は20年4-6月期に大底を付けたと考えられ、20年7-9月期以降は改善傾向が強まると期待されます。
■米国の企業業績の回復が鮮明化している背景は、「情報技術」、「ヘルスケア」という主力産業がけん引していることに加え、21年にかけて景気回復が期待されるためです。特に、21年1-3月期は「一般消費財」や「金融」の業績回復が予想されます。
■一方、日本(TOPIX)の予想EPSは6月下旬以降、悪化に歯止めがかかる兆しを見せています。ただ、日本経済の回復は米国よりも遅行すると予想され、業績が底打ちするタイミングも遅れる可能性があります。
■もっとも、21年にかけて世界経済の回復が予想されることから、時間がかかるものの日本の企業業績もいずれ好転すると考えられます。業績の底入れのタイミングは日米で異なるものの、年ベースで22年までのEPS予想を見ると、20年を底に日本も増益基調が回復すると予想されています(MSCIベース)。20年から22年までの予想EPSの伸び率は米国が年率+19.1%であるのに対して、日本は同+24.0%と、日本の伸び率が米国を上回ります。日本企業の業績に改善の兆しが確認できれば、日本株式市場にとって大きなプラス材料になると期待されます。
(2020年8月6日)
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