コロナ禍を契機に製紙業界の『ビジネスモデル』の転換が加速

 

コロナ禍を契機に製紙業界の『ビジネスモデル』の転換が加速

新型コロナの感染拡大に伴い、マスク、除菌ウエットティッシュ、ペーパータオルなど衛生用品やインターネット通販向け段ボールの需要は急増しています。一方で在宅勤務の増加などから印刷、情報用紙を使う機会は急減するなど需要は劇的に変化しています。これを受け、製紙各社は生産設備の改造や増産、新製品投入によって、印刷用紙などの汎用品から衛生用品など高付加価値品へ『ビジネスモデル』の転換を加速させています。

【ポイント1】コロナ禍で製紙業界の需要が激変

■新型コロナの感染拡大が製紙業界の需要構造に劇的な変化をもたらしました。日本製紙連合会の統計によると、紙・板紙の6月の国内出荷(速報値)は前年同月比14.5%減、11カ月連続の減少となりました。下落率はリーマンショック時にせまる減少となっています。一方、マスクや除菌ペーパーなどの需要が大幅に増加しており、こうした状況を受け製紙業界各社は、印刷、情報用紙などの汎用品から、衛生用品などの高付加価値品中心に『ビジネスモデル』の転換を加速させています。

【ポイント2】各社は『ビジネスモデル』の転換を加速

■大王製紙はコロナ禍の構造変化に対応するため、『ビジネスモデル』の転換を加速しています。医療用や商業施設向けに需要が拡大しているペーパータオルや家庭向けにもティッシュペーパーなど衛生用紙の生産体制増強を進めています。衛生用紙や加工品を合わせた「ホーム&パーソナルケア」事業の売上高は21年3月期に2,450億円と前期比20%弱の伸びを見込んでいます。

■王子ホールディングス(HD)は衛生関連の生産強化を決定しました。6月にグループ会社の工場で不織布マスクの生産を始めました。また材料の調達から縫製まで日本製にこだわった医療用ガウンの生産にも乗り出し、名古屋にある紙おむつ向け不織布の生産設備を増強して、医療、福祉施設向けにガウンの出荷を始めます。

【今後の展開】『ビジネスモデル』の転換は踏み込んだものとなろう

■デジタル化に伴うペーパーレス化の動きなどを受け、製紙需要は漸減傾向にありましたが、輸入品との競合が少なく、一定の利益を確保できるため、製紙業界は、『ビジネスモデル』の転換が遅れていました。汎用品から、高機能化学品へシフトが進んだ化学業界とは対照的な動きとなりました。ただし製紙業界においてもコロナ禍による業界を取り巻く環境の激変により、『ビジネスモデル』の転換は踏み込んだものとなりそうです。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

(2020年7月22日)

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