当面のマーケット見通し

当面のマーケット見通し

1.足元の金融市場の状況
2.世界経済に対する弊社の見方
3.今後の金融市場の見通し

1.足元の金融市場の状況

■昨年末、中国で発生した新型コロナウイルスは、2月下旬以降、全世界で感染が拡大し、各国・地域が大規模な行動制限を行ったため、世界経済に深刻な影響を与えています。

■金融市場にも影響が波及し、一時は極度にリスクを回避するパニック的な相場展開になりました。各国・地域が積極的な金融・財政政策を展開したため、金融市場は落ち着きを取り戻しつつあります。

■主要金融市場の足元の動きを確認します。まず、株式市場では3月20日前後に直近の安値を付けましたが、各国・地域が積極的な金融・財政政策を打ち出したことと、新規感染者のピークアウト期待が台頭したことから反発し、ここ1カ月では1割程度の上昇になっています。リート指数も同様の展開になっています。

■国債市場は、積極的な金融緩和を受けて概ね金利が低下しています。イタリア国債などは財政負担の急拡大が懸念され、金利は上昇しています。また、クレジット市場の対国債利回り格差は縮小し、投資適格債やハイイールド債市場も反発しています。

■為替市場ではユーロが対ドル、対円で下落基調を続けています。欧州において新型コロナウイルスの新規感染者数の減少ペースが緩やかなことや、景気支援策がユーロ圏内で足並みが揃いにくいことが嫌気されていると見られます。円ドルレートは、「リスク回避による円買い」や「決済通貨確保によるドル買い」で上下に振れることはありましたが、足元は比較的落ち着いた動きになっています。

■ここにきて、原油が大きな波乱要因になっています。WTI先物価格は4月20日、史上初のマイナスになりました。供給過剰状態が続き、原油の貯蔵能力が限界に達しており、清算日を目前に投げ売りが出たことによります。足元ではプラスに転じていますが、一時的とはいえマイナス価格となった異常さから、金融市場では再度リスク回避の動きが強まりました。

2.世界経済に対する弊社の見方

■弊社では、今月、各国・地域が実施している行動制限による実体経済への影響をさらに強く織り込み、世界経済成長率の見通しを下方修正し、2020年▲2.1%、2021年+5.0%としました。欧米のロックダウン(都市封鎖)の消費への影響が従来想定を超えることや、移動制限措置がエマージング諸国にも広がったことなどが要因です。

■弊社は、「中国以外の全世界で感染抑制のための行動制限措置が6月まで継続するものの、7-9月期にはこれらの措置が緩和されて経済活動が緩やかに回復する」ことを前提としていますが、ロックダウンの期間が1ヵ月延長されると世界経済には▲1.5~▲2.0%の影響が出る見込みです。

■来年は今年の反動に加え、各国・地域の経済対策効果も見込まれることから5.0%成長と大きな回復を見込みます。

■米国は、3月中旬以降、ほぼすべての州がロックダウンを発令したため、前期比年率(以下同様)で2四半期連続のマイナス成長となり、4-6月期のGDP成長率はリーマンショック時を上回るマイナスになる見込みです。しかし、足元では新規感染者数に頭打ち感が出始めており、経済再生に向けた出口戦略の策定に取り掛かっています。経済対策効果もあり7-9月期以降はプラス成長に転じるとみています。ユーロ圏もほとんどの国がロックダウンを続けているため、2四半期連続のマイナス成長になりますが、 7-9月期以降はプラス成長を予想します。

■中国では1-3月期のGDP成長率が四半期の発表を始めた1992年以来初めての前年比マイナスになりましたが、生産活動の回復が早いことから、4-6月期からの回復を見込みます。

■日本では海外のようなロックダウンは行われていませんが、全国的な自粛が6月まで続くことを前提に、3四半期連続のマイナス成長を見込んでおり、その後の回復も緩やかなものになると考えています。

3.今後の金融市場の見通し

■以上、見てきたように各国・地域の積極的な金融・財政政策や、新型コロナウイルス感染の抑制と経済再開の期待により、金融市場は落ち着きを取り戻しつつあります。今後は、ロックダウンなどの措置が継続し、生産活動・消費活動ともに制限される中、実体経済がどのように活動再開へ移行するかに注目しつつ、プラスマイナスの材料を織り込みながら推移すると考えられます。

■今後の注目材料としては、まず新型コロナウイルスの感染・収束状況です。世界・日本とも感染拡大のスピードは緩まりつつありますが、中国など収束がみられる国や地域では感染再拡大が懸念されており、日本では検査体制の不備が指摘されています。新型コロナウイルス感染抑制のペースが遅い場合、経済や金融市場へのマイナスの影響が強まります。また、新型コロナの治療薬の臨床治験結果や、ワクチン開発などが注目されます。

■株式市場は3月20日前後に一旦のボトムをつけ反発していますが、主要な株価指数は半値戻し(下落幅の半分戻ること)程度で足踏みしている状態にあり、上昇基調に復帰したとは言い切れません。弊社では、日本株・外国株とも「底割れは回避されたものの自律回復は年後半を想定しており、当面は企業の業績悪化など実体経済の悪さを織り込むことから力強さに欠ける展開」を予想しています。

■一方、債券は新型コロナウイルスの影響による景気悪化と各中央銀行による積極的な金融緩和政策から「当面は金利は低位で推移する」と考えていますが、財政の急拡大が見込まれることから金利上昇圧力もあり、「感染拡大がピークアウトするとともに、徐々に水準を切り上げていく展開」を想定しています。

■リート市場も株式市場と同様に反発しています。今後は、「金利は低位にありサポート要因となりますが、株式市場に影響を受ける展開」を想定します。実際の経済状態を反映し、オンラインショッピングやデータセンターなどの産業用施設・特殊用途は相対的に堅調な一方、商業施設やホテルなどは依然厳しいと考えています。

■弊社では今後のリスク要因として、「感染拡大の長期化と再拡大」と「金融ショックの誘発」を考えていますが、中長期では「経済構造や消費者・企業の行動の変化」にも着目しています。

(2020年4月28日)

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