宅森昭吉に聞く『2020年の日本経済』

宅森昭吉に聞く『2020年の日本経済』

2019年12月の日銀短観で大企業製造業の景況感が6年9カ月ぶりの低水準に落ち込むなど、足元の国内景気には弱さがみられます。しかし、子どもの歌「パプリカ」が日本レコード大賞を受賞したことや2019年の「今年の漢字」に「令」が選ばれたことは景気の拡張局面が続いていることを示唆しています。『2020年の日本経済』は世界経済の持ち直しや5G関連の投資活発化などから、緩やかながら景気回復が継続するとみています。

【ポイント1】「パプリカ」のレコード大賞受賞は景気回復持続を示唆

■「パプリカ」を歌う小中学生ユニット、“Foorin”が第61回日本レコード大賞を史上最年少で受賞しました。 “Foorin”は、5人組の小中学生ユニットで、幼稚園や小学校では”パプリカ・ダンス“がブームです。子どもの歌の大ヒットは景気と関係があります。親の財布の緩み具合が表れるからです。過去を振り返ると、「黒ネコのタンゴ」、「およげ!たいやきくん」、「おどるポンポコリン」、「だんご3兄弟」、「慎吾ママのおはロック」など、子どもの歌の大ヒットはすべて景気拡張局面でした。「パプリカ」のレコード大賞受賞は景気回復持続を示唆しています。

【ポイント2】「今年の漢字」“令”は景況感悪化を示さず

■2019年の「今年の漢字」は「令」が選ばれました。ランキングをみると、昨年も大きな自然災害が発生したなかで、2018年に1位だった「災」は第5位に後退しました。また、2014年の消費税増税の年に第1位に選ばれた「税」は第10位にとどまりました。消費税増税の影響は2014年よりは軽微である可能性が表れているようです。新元号が「令和」になり、素直に「令」を選んだ人が多かったことからみて、人々の景況感はそれほど悪化していないと思われます。

【今後の展開】『2020年の日本経済』は回復が続く

■エコノミストのコンセンサス調査である「ESPフォーキャスト調査」(12月調査)で2020年度実質GDP成長率見通し・平均値は+0.49%となり、11月調査の平均値+0.39%から上方修正されました。きわめて緩やかながらプラス成長は続く見通しです。予測値が高まったのは、政府が12月5日に国や地方からの財政支出が13.2兆円程度となる「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定したことなどを反映したからだと考えられます。経済対策は民間の支出も加えた事業規模では26兆円程度に上ります。

■『2020年の日本経済』は、外需・製造業の落ち込みや景況感の悪化に歯止めがかかる一方、内需の堅調さを維持することで、緩やかな景気回復が継続する見込みです。その要因としては、(1)世界経済の不透明要因緩和の動きに伴う外需の持ち直し、(2)5G用基地局投資や新型スマートフォンの製品開発活発化などに伴う電子部品・デバイス工業の在庫サイクル底打ち、(3)内需の底堅さの継続、(4)政府の経済対策、(5)東京オリンピック・パラリンピック開催などが挙げられます。

(2020年1月6日)印刷用PDFはこちら↓

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