『米中摩擦』4:米中両国の対立点を探る
『米中摩擦』4:米中両国の対立点を探る
中国の2001年の世界貿易機関(WTO)加盟、資本と技術の海外からの導入、国力の隆盛と米国との差の縮小等、米中対立の要素が年を追うごとに揃ってきていました。そういった中、貿易赤字を問題視し、事態の改善を公約に掲げたトランプ氏が大統領となったため、両国間の貿易摩擦に至るのは避けられなかったと思われます。今回は、米中交渉の現状を確認し、問題や折り合いが難しい点を確認します。 |
【ポイント1】貿易赤字とITを中心とした覇権争いが争点
■昨年3月の米国による対中制裁措置の決定以来、米中間の協議が続いていますが、争点を改めて確認すると、「米国の対中貿易赤字」と「情報技術(IT)を中心とした米中の覇権争い」の二つにまとめることができます。
■「米国の対中貿易赤字」は約4,000億ドル弱と貿易赤字全体の46%程度となっています(2017年)。貿易収支が必ずしも国と国との損得関係を示す訳ではありませんが、米国政府は貿易不均衡の是正を狙っています。
■「ITを中心とした米中の覇権争い」については、米国は中国に、技術の強制移転の抑制、知的財産権の保護、地方政府による産業支援の禁止等を求めています。米国側からは、中国企業が不当に技術の習得を行っていたり、金融・税制・規制面で不平等な優遇を受けていると映っていると見られます。具体的には5G、電気自動車、人工知能(AI)や自動運転などの分野で、中国の優位性が指摘されるようになってきており、米国にとっては中国企業の優遇措置の早期解消が必要と考えていると見られます。
■米国の要求に対して、中国国内でも経済改革への活用を志向する声もある模様ですが、以下の点で妥協できないとしています。「これまでの追加関税の撤廃」、「中国の輸入拡大に過大な金額を要求しない」、「合意文書は主権と尊厳を尊重する」ことです。一点目は、中国への牽制を残したい米政権には受け入れにくいものです。三点目の例として中国地方政府の産業支援政策がありますが、産業振興が中国共産党の重要政策のため、撤廃は中国側にとって受け入れ難いと言えます。
【今後の展開】両国は折り合えるのか
■このように、米国にとっても中国にとっても現状では直ぐに合意できる状況とは言えません。特に、ここもとの米国の中国IT企業に対する取引規制の後は、中国側が態度を硬化させている模様です。両国は、それぞれの景気や株式市場がしっかりしている事が背景になっているため、互いに強硬な姿勢を続けられていると考えられます。お互いに国内の不満を抑え、合意形成に至るには、これまでとは異なる材料が必要だと思われます。追加関税等による金融市場の動揺や景気の冷え込みが懸念されますが、それをきっかけとして宥和が進む可能性があります。
(2019年5月31日)
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