英国のEU離脱問題は議会採決が焦点に

市川レポート(No.599)英国のEU離脱問題は議会採決が焦点に

  • EUは離脱協定案と政治宣言案を正式決定、ただ12月の英議会で否決なら合意なしの離脱も。
  • 保守党315人のうち強硬離脱派40~50人と、DUP10人の反対で、12月の可決は難しい状況。
  • 最終的には採決され合意ありの離脱を予想するが、内閣不信任案の流れとなった場合は要注意。

EUは離脱協定案と政治宣言案を正式決定、ただ12月の英議会で否決なら合意なしの離脱も

英国では11月14日、欧州連合(EU)からの離脱に関する協定案が臨時閣議で了承されました。しかしながら閣議の翌日、協定案に反対する政権幹部が相次いで辞任したため、与党保守党内では強硬離脱派を中心に、メイ首相の不信任投票を求める動きが強まりました。ただ、強硬離脱派の実力者であるゴーブ環境相は11月16日、政権にとどまる意向を表明し、メイ政権の崩壊はひとまず回避されています。

こうしたなか、EUは11月25日に臨時EU首脳会議を開催し、離脱条件などを定める離脱協定案と、将来関係の大枠を示す政治宣言案を正式に決定しました。これにより、英国のEU離脱は、「合意あり」の方向で進むことになりましたが、次の焦点は英国議会です。英国議会では、12月11日に離脱協定案と政治宣言案の審議と採決が行われます。否決の場合、「合意なし」の離脱という可能性が残ることになります。

保守党315人のうち強硬離脱派40~50人と、DUP10人の反対で、12月の可決は難しい状況

離脱協定案には、英国の実質的な離脱を先送りする内容が盛り込まれており、強硬離脱派は反発しています。また、アイルランド国境問題も未解決のままとなっており、保守党に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は反対の姿勢を示しています。なお、保守党の強硬離脱派は40~50人程度とみられ、DUPの下院議員は現状10人です。

英国の下院定数は650人ですが、議長、副議長や採決に加わらない議員を除くと、639人になります。そのため、離脱協定案と政治宣言案の可決には、その過半数の320人の賛成が必要です。保守党の全下院議員は315人で、DUPの10人とあわせて与党は325人ですが、前述の通り、保守党内の強硬離脱派40~50人とDUPの10人は現行案に強く反対しているため、可決は難しい状況です。

最終的には採決され合意ありの離脱を予想するが、内閣不信任案の流れとなった場合は要注意

市場でも、12月11日に離脱協定案と政治宣言案が可決されることは難しいとの見方が優勢です。仮に否決となった場合、英国政府は21日以内に新提案を提出しなければなりません。ただ、離脱協定案には法的拘束力があるため、修正は困難です。しかしながら、政治宣言案には法的拘束力がないため、こちらにどの程度、強硬離脱派やDUPの要求を反映させられるかが、ポイントになります。

弊社では、離脱協定案と政治宣言案は最終的に採決され、英国とEUは合意ありの離脱に向かうとみています。しかしながら、図表1の通り、内閣不信任投票の流れとなった場合は注意が必要です。可決されれば総選挙となり、否決されても再国民投票やEUとの再交渉、合意なしの離脱という展開が想定されます。いずれにせよ、英国の政局不安が強まるため、欧州中心に金融市場が大きくリスクオフに傾く恐れがあります。

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(2018年11月27日)

 

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